第23話 第2層のボスvsレッカイオー。必殺の!って殺したらダメだよ!
戦いのシーンよりギャグ(少しエッチぃ?)シーンが多い。
そういう仕様です。ご容赦ください。
2層に上がると熱男筋肉列車で疾走する。
列車の調子は上々で、悪路も無い。
そして魔物が寄り付かないのは『魔よけの警笛』の効果だった。
「これって、魔道具とかじゃなくて、物理攻撃じゃないの?」
アキラが常識外のことをすると、いつもこんなあきれたような反応で返すマーシャ。
「2層は誰も居ないし、大きな音を出しても問題ないからな。おっ!レーダーに敵影多数!もう一度やるぞ!」
アキラは運転室の横にある通信機の『外部出力・警笛』のスイッチを押し、マイクに向かって、
「フオオオオオオオオオッ!!!」
と、雄たけびを上げた。
もちろん、お得意のダブルバイセップスのポーズ付きである。
その声は、熱男筋肉列車の警笛から発せられ、半径10キロメートルの魔物を畏れさせ、追い払った。
「レベル999の強さを知らしめて、魔物を追い払うための魔道具なのはいいのじゃが、もっとスマートにはできんのかの?」
「まあ、アキラ様ですから」
慣れた様子でお茶会をしているシュリナとカナデ。
「ボスには効かないんだよね」
「ボスはその場所に縛られているから、逃げたくても逃げられないのじゃな」
「気の毒だね」
いつの間にかマーシャも席についてお菓子を食べ始めていた。
「ねえ、シュリナさん」
「なんじゃ、マーシャ」
「えっとね、あんな野獣みたいな人、本当に好き?筋肉で話をしたり、色々嫌な事あるでしょ?」
うっと言葉に詰まるシュリナ。
「そうなのじゃ。やめてほしいと言っても、聞いてくれないのじゃ」
「そっか。じゃあ、嫌い?」
「そんなわけないのじゃ。大好きなのじゃ」
「へえ。アキラさんが後ろに居るのに大胆だなあ」
「にゃなんきょっ?!」
シュリナは慌てて振り向くが、誰も居ない。
「マーシャっ!あっ?!わらわのクッキーが?」
「ごちそうさまでした」
「マーシャよ。わらわを怒らせると、怖いのじゃよ」
「ふーん。ボクも結構怖いよ」
そんな二人の様子を見て身震いするカナデ。
カナデは二人の「怖さ」を良く知っているからだ。
「私もちょっと対抗策を考えませんと。マーシャさんの真似ではキャラ的に弱いですし」
「何の事じゃ?」
「いえ、こちらの話ですわ、奥様」
シュリナの闇魔法、マーシャの触手に対抗できる、自分の個性を出せるものが無いと、アキラをめぐる争いに参戦できない気がする。
え?マーシャの触手って何かって?
レッカイオー製造中に、カナデが調教、もとい、レッカイオーの操作を強制的にマスターさせられた時に、マーシャが使ったものだ。
「もう、これ以上はやらんのじゃ!」
と、マーシャはクッキーの入れ物をテーブルの下に隠すが、
「それじゃあ、駄目なんだよなあ」
テーブルに頬杖をついているはずのマーシャの横から、ひょっこりとクッキーが出てきた。
「なんじゃと?!」
「サンキュー」
ぱくりとそれを食べるマーシャ。
「いやあ、そろそろお披露目しておかないと、いざという時に混乱されても困るなって。それでね、カナデさんには教えておいたんだけど、そろそろ」
うねうね
うねうね
マーシャの背後から8本もの触手のようなものが現れた。
「シュリナさんにも、ボクの本当の姿を見てもらおうかなって」
「な、な、な、な」
顔面蒼白になるシュリナ。
「大丈夫。アキラさんが居るから、変なことはしないよ」
「ローパーなのじゃ!ヒノをいじめたローパーなのじゃ!」
「ローパーじゃないっ!『手長足長神』って言う、神様だからな!」
8本のさらに背後から数十本もの形の違う触手が出てくる。
「ボクの世界では、たまに『神憑き』って言われる、神様の力が宿った人間が生まれるんだ。その多くは天界を追い出されたり、居場所のなくなった土着神なんだよ」
「神様の力と言うよりは、神の力そのものってわけですね?」
「カナデさんの言うとおりだよ。この力のせいで、前の世界では『神殺し』って呼ばれる奴らに襲われたんだけどね」
「すごいのじゃ、うねうねなのじゃー」
シュリナは触手をつんつんして遊んでいる。
「ちょっと!少しは怖がってよ!さっきの顔面蒼白だったのはどこいったの?」
「ローパーじゃないならいいのじゃ」
「ふうん。『手長足長神』は触手を司る神様なんだよ。だから、ローパーの触手だって、ほら」
にょろんと、ローパータイプの触手を出現させる。
「ヒノの敵なのじゃ!」
「ちょっ!怖いんじゃないの?!」
「怖いなどとは言ってないのじゃ。さっきは急に現れてびっくりしただけなのじゃ」
あわてて全ての触手を仕舞うシュリナ。
「ローパーの触手はシュリナさんの前では出さないようにするよ」
「あんまり区別はつかんのじゃ。だから、わらわの前では触手自体を出すでないぞ」
「ええーっ。これ、困った時に使おうと思っていたのに」
「いったい何に使うつもりだったのじゃ」
「えっとね」
マーシャは触手を一本出す。
「それで、ふん!」
力を込めると、その触手がパンプアップして、マッチョな触手になる。
「アキラ様の腕みたいです」
「ど、どうなっておるのじゃ?」
「触手って、筋肉の塊みたいなものもあるからね。それで、筋肉ギルドに行った時に、鍛えてもらっていたんだ」
さらに1本出てくる筋肉触手。
「ちなみに、これはシュリナさんの翼と一緒で、体に直結していない格納型だよ」
高位の魔族においては、普段使用しない翼や角などは体内の異空間に格納されており、必要な時に服の外側に出現させることができる。
魂的につながっているが、肉体的につながっているわけではないので、疑似的な痛みを感じるが、一定以上のダメージを受けると消せたり、切り離したりできる。
マーシャの触手も実際に体から生えているものではない。
ただ、魔族の角や翼は特定の位置からしか出せないが、マーシャの触手は体の周囲の何処からでも出せる。
これは『手長足長神』が触手的な生物全ての神であるためだ。
「こんなふうにポージングもできるよ」
筋肉触手だけで、アキラっぽいポーズを決めてみるマーシャ。
「それでいったい何がしたいのじゃ?」
「んと、こういうこととか?」
ガチャ
操縦室のドアが開いて、アキラが来た。
「今、筋肉通話で呼ばれた気がしたが?誰か来ているのか?」
「うん、ボクが呼んだよ」
すでにマーシャは筋肉触手を格納している。
「マーシャの体は確かに引き締まってはいるが…」
「やだあ、アキラ。ボクの体をそんなふうに見てたわけ?」
ちょっと赤くなってもじもじするマーシャ。
あざといのがシュリナとカナデにはまるわかりである。
「アキラ、こんな幼い子に手を出す気なのじゃな!」
「シュリナ様、それを言っては自爆です」
それでもじっとマーシャを見るアキラ。
「おかしいな、あれほどの筋肉の鼓動を感じなくなるはずがないのだが?」
「ふふっ。そのうち教えてあげるね」
「そうか。マーシャが…楽しみにしている」
そう言って、操縦室に戻っていくアキラ。
「マーシャよ」
「なに、シュリナさん?」
「ずるいのじゃ!どうしてマーシャがアキラと筋肉会話とか通話とかできるのじゃ!」
「まあ、頑張ったからね。マーシャさんもやってみたら?」
「わらわがそれをやったら、筋肉女になってしまうのじゃ!胸がただでさえないのに、筋肉を付けたりしたら、ますます女らしくなくなってしまうのじゃ!」
全国のマッスル女性の方々ごめんなさい。
「奥様の胸もそのうち大きくなりますわ」
「慰めはいらんのじゃ。この前、魔法で大人の姿になった時、とてもつつましかったのじゃ」
大人の一歩手前くらいの姿とは言え、あのサイズでは大人になっても期待薄である。
「マーシャの大人の姿のほうが胸が大きかったのじゃ!」
「そりゃあ、ボクのお母さんは巨乳だったからね」
「わらわの母もそうなのに、どうしてなのじゃー!」
ガクン
「わっ」
「わわっ」
「きゃあっ」
列車が急に方向転換をして転がっていきそうになる三人。
「すまん!探知圏外から超遠距離攻撃を受けてとっさにかわしてしまった!3人とも操縦席に移動して、シートベルトをかけてくれ!」
「アキラ!もしかして?」
「ああ、レッカイオーになる」
「やったあ!」
はしゃぐマーシャはまっさきに上の操縦席に移動する。
「ま、待つのじゃ」
「奥様、早く」
「くっ!なんて速さだ!すまん!合体する!」
「「ちょ、まっ!」」
シュリナとカナデが席に着く前に列車の周囲に後続車両と重機群が現れ、合体シークエンスに入る。
車体が傾いていき、転がり落ちそうになる2人。
「アキラ、シュリナさんとカナデさんはまかせて!」
マーシャは触手を伸ばして、二人を掴むと、操縦席にそのまま固定した。
「なんで触手で席に縛るのじゃ!」
「これでは動けません」
「操縦の補助はボクがするから、二人はそこでおとなしくしていて」
「それにしても、この縛り方は悪意しか感じないのじゃ!」
シュリナとカナデは触手でぐるぐると席に縛られていたが、胸の上下と両側で締め付けていたため、カナデの胸はより大きく見えて、シュリナの『つつましさ』が際立ってしまうのだ。
「仕方ないなあ。じゃあ、寄せてー上げてー」
「や、やめるのじゃあー」
「ふふっ、意外とやわらかいじゃーん!」
触手がきゅっと締め付けて、少しマシな胸の大きさになったシュリナ。
「ん、まあ、これならいいのじゃ」
さて、ここからは漢の戦いだ!
「「レッカイオー推参!」」
練習したわけでもないのにハモるアキラとマーシャ。
敵は身長30mもの巨人だった。
「タイタン?」
「こんなのが2層のボスってすごくない?」
実際は大きさだけで、そこまで無茶苦茶な強さではない。
しかし、ここで倒してイベントの邪魔をしてしまうわけにはいかない。
「まずは様子見だ!レッカイオーキック!」
レッカイオーは巨大ロボらしからぬ見事な回し蹴りを決める。
「レッカイオーパンチ!レッカイオースクリュークラッシュ!」
「す、すごく動くのじゃ。景色がー!体がー!のじゃー!」
「シュリナ様、大丈夫ですか?」
「二人とも大げさだよ。操縦席は『重力慣性制御装置があるから、景色は回っても、自分が振り回される感覚は無いよ」
「景色が回るだけでも酔うのじゃ!」
「じゃあ、目をつぶっていればいいよ。終わったら呼ぶね」
仕方なく目をつぶるシュリナ。
カナデは何とか景色の動きになれようとしている。
もっとも、ここはレッカイオーの胸の部分。
本来ならあまり動かない部分なのだ。
なのだが、アキラが初運転で色々テストしようとしたことが仇になった。
「レッカイオーサマーソルト!」
「わあああっ、逆さまですっ!」
「わ、わらわは絶対に見ないのじゃ!」
「でも、でも、アキラ様の勇姿が!」
「そんなもの、いつでも見られるのじゃー!」
「そ、それもそうですねっ!」
カナデもあきらめて目をつぶった。
「アキラ、そろそろとどめ刺さない?」
「そうだな、マーシャ」
ふわふわ
「ん?」
マーシャの目の前に得体のしれない物体が浮かんでいた。
「これ何?」
「どうした、マーシャ?」
「うーん、なんとも形容しがたい物が目の前に浮いている」
「何だと?!」
「いや、たぶん大丈夫。今の敵とは関係なさそう。こっちで対応しておくから」
「わかった!」
アキラは必殺技の体勢に入る。
「必殺の!」
「だめだって!」
「あ、そうだったな。では行くぞ!『非炎麗刃剣』!」
レーザーコーティングのない炎麗刃剣で巨人の後頭部をぶっ叩く。
「アゲッ!」
へんなうめき声をあげて、轟沈する巨人。
「よし、合体解除するぞ」
「はーい。そうだ、さっきの浮いていたモヤモヤしたもの。あ、あるある。えっと『看破』!」
【Sの『E』】
「は?」
【Sの『E』】
Sの持つ一部が時空を超えたもの。
これを手に入れると『E』となる。
「なにこれ?」
それはふよふよと、マーシャに近づいてきた。
「えっ?!来るな!」
マーシャは手で弾き飛ばそうとしたが、手にくっついてしまう。
その途端。
マーシャの胸が腫れ上がった。
いや、巨乳になった。
「な、なんでっ?!」
すり抜けてきたことから、これは霊体の一種じゃないかとと考えたマーシャは、霊体に触れることが出来る触手を出して、『E』を引っこ抜くと、胸が元に戻った。
「『E』ってまさか…」
試しにカナデにくっつけてみる。
「ん?」
カナデは声を上げた。
その胸は明らかに小さくなっていた。
「なんだか、胸が軽くなった気がします」
「あ、今合体解除中だからね。目は開けない方がいいよ」
それをひっこぬいて、今度はシュリナにくっつけてみる。
ぼんっ!
「む、胸が苦しいのじゃ!」
シュリナの胸が『E』になっていた。
「まあ、これでいいかな。みんなの反応が楽しみだな」
マーシャはニヤニヤとして、二人に声をかける。
「合体解除したから、目を開けていいよ」
「おお、終わったのじゃな」
「マーシャさん、触手、はずしてください」
しゅるりと触手をはずす。
「マーシャ、わらわのもはずすのじゃ」
「え?はずしてるよ」
「だって、わらわの胸がこんなに」
ふに
「ん?」
ふにふに、もにゅもにゅ
「わ、わらわの胸が大きくなっているのじゃ!」
「あー、たぶん、ボクの触手が締め付けた状態で振り回されたからかなー」
とぼけるマーシャ。
そもそも慣性が無いのに振り回すも何もない。
「そんなことで大きくなるわけがありません」
真顔で反論するカナデ。
「(まさか気づかれた?)」
「おそらく、触手のマッサージ効果によるものと思われます。昔から『揉むと大きくなる』と言いますので」
「そうじゃったのか!」
「(二人とも馬鹿でよかった)」
「お疲れ」
マーシャたちが休憩しているところにアキラが戻ってきた。
汗をかいたから、体を清潔にしたうえでだ。
「アキラよ」
「ん?どうしたシュリ…おい、どうした?!」
これはさすがに気づく。
AA→Eはさすがに気づく。
71から85になったら、いくら鈍感でも気づく。
「わらわの胸が本気を出してしまったようなのじゃ」
静かに、それでいて自慢げに言うシュリナ。
必死に笑いをこらえているマーシャ。
ちなみに自分の触手で自分のお尻をつねっている。
「お、おう、そうなのか」
何かの事故に違いないと思ったが、魔族の体のこととか詳しくは無いし、実年齢20歳のシュリナなら問題ないだろうと思った。
「これで、いつでもヒノを産め…」
「ん?」
「ななななな、なんでもないのじゃ!(もぐもぐ)んぐっ」
照れ隠しに目の前のクッキーを口に詰め込んで、のどに詰まらせるシュリナ。
「しっかりしろ」
トントンと背を叩くと、胸がゆっさゆっさと揺れる。
「うっ」
赤面するアキラ。
いや、今までアキラの周りに胸の大きな女性は居るし、実際カナデなんかは巨乳を超えた爆乳だ。
しかし、好きな相手が急に胸が大きくなったのだから、意識しないわけがない。
「かなりエネルギーを使ったから、充電してくる!」
走り去るアキラ。
「さてと、一応見ておくかな」
こっそりとシュリナに看破をかけるマーシャ。
シュリナ
種族 純魔族
レベル 112
…
状態:魂牢(不在)。Sの『E』(憑依)。
「やっぱりなあ。これ、別に実害ないよね?むしろ変身しなくても良くなったから、いいことしたよな。うん、そう思っておこう」
「マーシャはなにを言っておるのじゃ?」
「何でもないよ」
「ところで、マーシャよ。頼みがあるのじゃが」
「何?」
もじもじしているシュリナは、思い切ってこう言った。
「わらわの胸を触手でマッサージしてほしいのじゃ!ほうっておいたら、小さくなるかもしれないのじゃ!」
「え?いや、それは大丈夫…だと思うよ」
「心配なのじゃ!」
「じゃあ、小さくなってきたらね」
必死に抵抗するマーシャ。
正直、いたずらでやるのなら楽しいだろうけど、揉んでほしい相手の胸を揉んでも面白くない。
「手遅れになってからでは遅いのじゃ!わらわはヒノを産んで、このおっぱいで育てるのじゃ!」
「そうだ!カナデができるから、カナデに頼むといいよ!」
マーシャがとっさに言った逃げ口上。
しかしそれが裏目に出た。
「わかりました。奥様のため、私が、粉骨砕身、やってみせましょう」
カナデの体から触手がゆっくりと生えてくる。
「え?ちょっと、本気?」
「はい。奥様のため、アキラ様のため、ヒノ様のためですから」
「ボ、ボクの見ていないところでしてもらえるかな?」
「それなら、このクッキーでも食べて待っているのじゃ」
「ん、もぐ、うん、おいしい…んっ?!」
「マーシャさん、どうしました?」
「あ、あががが」
体がマヒして、うまく動けない。しゃべれない。
そう、シュリナが食べさせたのは、本来の闇のお菓子。
相手を痺れさせて動けなくするものだ。
「せっかくだから、マーシャにもマッサージをしてやるといいのじゃ」
「それは良い考えですわ。私も、マーシャさんにお礼をしないといけないと思っていましたから」
「わらわも手伝おうかの。色々と世話になっておるからのう」
「んー、んんーっ!」
あーーーーーーーーーーーーーっ!
その後、息も絶え絶えになったマーシャが全てを白状したのだった。
「それでもこの『E』は手放さないのじゃーっ!」
お読みいただきありがとうございました。
ブックマークとか感想とかいただけると嬉しいです(^ー^)
次回は12月13日金曜日18時更新です。




