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第12話 一部だけならセーフと思いたい

予告でアキラは変身しないと言っていたが、あれは半分嘘になった。許して。

「アクア、詳しく話してくれ」

アクアをせかすサニー。

「まさか、あそこが突破されたのか。いったいどれほどの攻時空兵器をだしてきたんだ?」

興奮しているフレイム。

「いえ、あそこは突破されていません。敵は中に居たのです」

「「ええっ?!」」



ミラクリーナの魔法少女たちはあちこちの世界を助けていた。

そのため、助けた世界の人々から感謝され、協力関係も築いていた。

だから、ミラクリーナを助けると言う言葉を信じて、中に招き入れてしまったと。


「なんて軽率な!」

「でもミラクリーナでは、魔法少女以外の能力はかなり減衰する。いったいどんな恐ろしい奴が来たんだ?」

「フリルルタイガーだ」

「?!」

「外の世界の魔法少女である彼女が、私たちを助けると言っていながら裏切ったのよ」



アクアの話によればこうだ。


魔法少女は外の世界に行く時に、予備の変身アイテムを持っていく。

そして、信頼できる仲間と認めた人物にそれを託し、共に戦うのだ。


フリルルタイガーもそういった外の世界だ誕生した魔法少女だった。

そしてミラクリーナの魔法少女と協力して、その世界に平和をもたらした。


「我々は知りませんでした。タイガーの世界が平和になった後に、魔法少女の力を使って次々と他の国を攻め滅ぼし、その世界での覇者になっていたなんて」

「しかし!悪の心に染まった時、魔法少女の力は永遠に失われるはず!」

サニーの言葉にフレイムもうなずく。


「いや、それが悪とは限らないぞ」

「なんですって?」

アキラの言葉に睨むような目を向けてくるサニー。


「あちこちの国を侵略したとして、それが悪かどうかはわからない。国が国を攻め滅ぼすことが必ずしも悪ではないのだからな」

「そんなの、強者の言い訳です!」

「例えば自分の国を豊かにするために、他国を攻め取るのであれば、それはその国にとっての正義の行いじゃないのか?」

「しかし、虐殺をして征服するなんて正義じゃありません!」

「殺さなくても征服は出来るだろう。実際、ミラクリーナの住人はどうなっているんだ?」

「そ、それは、全員タイガーに倒されましたが…」

「誰も死んではいないのだな?」

「はい」


自分の国の為に戦っていたフリルルタイガー。

それが今度は世界を背負ったがために、新たな世界に向けて戦う必要が出てきた。

そのためにミラクリーナを征服したのだ。


「戦い続けなければならない民族性なのか、あまりにも貧しくて食べ物とかが手に入らない世界なのかはわからないが、タイガーたちにとっての正義はあるから、魔法少女の力を失うことはなかったのだろう」

「そんなことがあるなんて…」

絶望した顔をするサニー。



「それで、元々の攻めてきていたほうの国はどうなった?」

「守っていた魔法少女たちが撤退した為、空間を繋ぐことには成功したようですが、タイガーの部下が逆にそこから打って出て、その国に攻め込んでいます」

「タイガーの部下も魔法少女なのか?」

「はい、ミラクリーナの全ての変身アイテムがタイガーの世界の軍に渡され、適合者が変身をして、新たな侵略とミラクリーナの防衛をしています」

「適合者じゃと?」

「はい、基本的に清らかな乙女でなければ、変身は出来ないと言われています。また、邪悪な心を持っていてもだめなのです」


「き、き、清らかな乙女と言うと」

「遠まわしに言えば、ユニコーンが好みそうな女性です」

「やっぱりかの」


ヒノも居るので、直接的に言われなくて良かったと思うシュリナであった。


「お願いします!力を貸してください!」

アクアはアキラとシュリナに頭を下げる。


「ミラクリーナでは変身できないと力が弱くなります。ここにわずかですが、変身アイテムを持ってきました」


と、変身用のステッキやリング、コンパクトなどを取り出した。


「武器は持てないから、このコンパクトにするのじゃ」

「カナデはステッキにします」

「男性用はないのだな」

「魔法少女だから当たり前ですっ!」

「変身するにはどうするのじゃ?」

「コンパクトを開いて、こう唱えて下さい。『フリルル・メタモルフォーゼ!』」


シュリナはコンパクトを開き、カナデはステッキをかかげて唱える。



「フリルル・メタモルフォーゼ!」

「フリルル・メタモルフォーゼ!」

『フリルル・メタモルフォーゼ!』


「「「?!」」」


いつの間にか、ヒノが変身ステッキを手にして、変身の呪文を唱えていた。


そしてシュリナとカナデとヒノはお約束の変身シーンののち、魔法少女の服を纏って立っていた。


「おお、ヒノ、可愛いのじゃ」

「はい、とても素敵です」

『まあまとカナデも、かっこいいのー』


「あの、アキラさん。ヒノちゃんって、女の子だったんですか?」

「いや、男の子のはずだが」

『ヒノはおとこのこだよー』

「じゃあどうして変身できるんですかっ?!」

「多少の事では魔法少女が剥奪されないのと同じで、実は結構ルールが緩いんじゃないのか?」

「もしどの男性ができるとしても、アキラさんは絶対に禁止です!ビジュアル的にっ!」

「じゃあ、俺はどうやって手助けすればいいんだ?」

「魔法少女から渡された武器で戦えます。だから」

「俺、訳あって武器は持てないんだが」

「「「……」」」

絶句するサニー、フレイム、アクア。


「しかし、シュリナはヒノをオネエにさせるのは嫌なくせに、女装はいいのか」

「きっと似合っているからいいのでしょう」

「私の弟も、女の子の服着せられていたことがあったな。あれ、大きくなってから結構トラウマになるんだが」

「まあ、楽しそうだからいいけどな」


アキラの言うとおり、シュリナたちは完全に楽しんでいる様子だ。


「わらわは、フリルルブラックじゃの」

「わたしは、フリルルルビーにします」

『ぼくは、どうしよう?』

「フリルルキューティはどうじゃ?」

『わかったのー』


わいわいと盛り上がっている3人。


「それにしてもこの筋肉、武器を持てないなんて、魔法の国では役立たずじゃないですかっ!」

「サニー!せっかく助けに来てくれた人になんてこと言うんですかっ!」

「アクア、事実だから仕方ないじゃないでしょっ!」


「仕方ない。借りるぞ」


そう言って、アキラは残っていたリングを手に取り、念入りにこねるようにして大きさを変えて、右手の指にはめた。


「頼むぞ、変身リングよ」

『任せろ、友よ』


「それ、話さないタイプの変身アイテムをのはずです!」

「どうしてそうなっちゃうんですか!」

「だめです!変身しないでください!」

「ビジュアルが!」

「版権が!」


「きゅーてぃーめたもるっふぉーぜっー!」

勇ましい声と共にアキラは変身の魔法を唱え、光に包まれた。


「ふう」

「あ、あ、あ、あれ?変身してない?」

「本当だわ」

「ああ、世界は救われたのね」


「よし、これで俺も戦えるな」

アキラは右腕にグッと力を込め、新たな姿を披露する。

良く見ると、右腕のひじから先だけ、魔法少女の衣装になっている。


「変身したらまずいというから、変身魔法を肘でさえぎってみた。これでいいだろう?」

「なんでそんなことできるんですかっ!」

「鍛え抜かれた筋肉に不可能は無い」

「絶対に違うと思いますっ!」

もうツッコミ要員のようになっているサニー。



「そういえば、大人になれるのを忘れておったのじゃ」

「変身時に念じていれば大人っぽい少女の姿になれますよ」

「それなら、やりなおすのじゃ」

「その変身アイテムはレベルが低いものなので、魔法少女の変身は30分で解けて、解けると1時間は再変身できません」

「不便すぎるのじゃ!」

「未使用品のランクは基本的に低いのです。それで戦って、戦い抜いて、アイテムがレベルアップするのです」

「するとどうなるのじゃ?」

「今私たちが使っているものなら1年くらいでも変身していられます」

「それならさっそく、敵を倒しに行くのじゃ」

「そうだな」

「おお、アキラ。どうじゃ?わらわの魔法少女ぶりは?」

「おう、可愛いぞ」

「格好いいと言ってほしかったのじゃ」

「わるいわるい。だが、似合ってるぞ」

「アキラ様、私はどうでしょうか?」

「うん、カナデも似合っているぞ」

「ありがとうございます」

『ヒノもー』

「ヒノも格好いいな」

『わーいなのー。ぱあぱも、かっこいいのー』

「なんじゃと?わっ!」

「アキラ様、その腕はっ?!」


右手のひじから先だけヒラヒラした服のアキラを見てたじろぐシュリナとカナデ。


ちゅどーん!!!


そこにどこからか飛んできた光線が地面に命中し、爆発する。


「何だ?」

「何なのじゃ?」

「フフフ」


アキラとシュリナの目の前に現れたのは、新たな魔法少女。

服は派手な蝶柄だ。


「フリルルパピヨン参上!フリルルタイガー様の命により、貴様らを捕らえに来た!」

「魔法少女同士で戦っても変身能力が無くならないとか、この件が片付いたら、きちんと改良しておけよ」

「あなたのような変態に言われるまでもありませんっ!」

そう言って、サニーは駆け出し、パピヨンに蹴りを見舞った。


「おっとぉ」

さっとかわすパピヨン。その動きには無駄がない。


ガシッ!


「なっ?!」


さらにその蹴った足を掴まれ、投げ飛ばされる。

サニーは空中で回転して着地を決める。


「では、俺が相手だ」

「男か。ならば、こうしてやるわ」

パピヨンは辺りに蝶の幻影を生み出し、それが辺りを高速で回転し始めると、景色が変わった。


「い、いつの間にミラクリーナの中に?」

「転移魔法か!」

サニーとフレイムは背中合わせとなり新たな敵を警戒する。

予想通り、そこに新たな敵が現れた。



サニーたちと別の場所でアキラはパピヨンと対峙していた。

どうやら離ればなれにされたらしい。

「さて、あなたは私が倒してさしあげますわ」

「いいだろう。パピヨン、勝負だ」

「変身できない男が、この国で戦えると思っているの?」

「できるさ、見ろっ!」


アキラは魔法少女の服をまとった右腕を見せつける。


「な、なんなのよそれ!どうしてそんな腕になってるのよ!」

「これが正義の力だ」

「なわけないでしょうっ!」

「くらえ!」

「腕一本でなにができるのよ!」

「いや、指一本だ。フリルル・デコピン!」

「遅いわよ!え?」

ドゴーン!


パピヨンがかわしたあとの、背後にあった木が地響きをたてて倒れる。


「ちょ、ちょっとなによそれ、どうなってるのよ?」

「さすが魔法少女の力だ。俺の力を50倍には引き上げているな」

「5倍じゃなくて?!なに、それ、いったいなんてモンスターなのよ?!」

「元プロレスラーで、元パイロットで、元陰陽師で、元デュエリストで、元勇者で、今は冒険者。その実態は妻子持ちのボディビルダーだ!」

「わけわかんないわよっ!」


パピヨンは蝶の羽を作り出し宙に舞いあがった。


「ここから攻撃すればどうしようもないでしょ!」

「魔法少女っていうからには、みんな飛び道具を持っているものじゃないのか?」

「まさか出せるの?」

「試してみる価値はあるな」

「やらなくていいわよっ!フリルル・ダンサブル・パピヨン!」


パピヨンの周りに光る蝶が無数に現れ、それが奔流となってアキラに襲い掛かる。


「フリルル・マッスル・ビイイイイム!!!」

「バ、バリアーっ!」


アキラの手の平から無数の細い閃光が走り、慌てて防ぐパピヨン。

レーザーが吹き荒れた後に、光る蝶は全て消し去られていた。


「なんて奴…え?どこに?」

「ここだ」


ガシッ!


背後から両腕をホールドされ、足も極められる。


「魔法少女である俺が飛べないとでも思ったのか?」

「くっ、離しなさいよっ!」

「三択だ」

「な、なにがよ?」

「ひとつ、このまま両手足をへし折られる。ひとつ、このまま頭から落下して地面に突き刺される。ひとつ、マッスルブラスターで吹き飛ばされる」

「最後のなにっ?!なんなのっ!」

「知りたいなら、それを選べ」

「降伏します!降参します!」

「それは選択肢にない」

「なんでよーっ!」

「では、マッスルスクリュークラッシャーだな」

「そんなのなかったわよね、ね?しかも名前が一番ヤバくない?」


まっするーーーー

すくりゅううううーーー

くらっしゃーーーーーーっ!!!



腕を組んで地に立つアキラの後ろに、泡を吹いて倒れているパピヨン。


「きんにくが…きんにくのあくまが…」


パピヨンはうわごとのようにつぶやき、がくりと頭を垂れた。


「シュリナ、ヒノ、カナデ、今行くぞ」


アキラは駆け出していった。



次回予告!(今度こそ大丈夫か?)


双子の魔法少女に翻弄されるシュリナ。

そこに駆けつけたアキラだったが、30分経って変身が解けてしまう。


「30分経過。最低レベルの魔法少女はこれで1時間は変身できない」

「そうでなくても、お姉さまと私に勝てるわけがないのよ」


ピンチに陥ったシュリナとアキラ。

しかしアキラが取った起死回生の一手とは?!


次回「魔法が無ければ筋肉を使えばいいじゃない」

請うご期待!


(注:この予告の内容はかなり変更されることが有ります)。

お読みいただきありがとうございました。

次回は10月25日18時更新です。

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