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タマネギ男  作者: gojo
プロローグ
1/29

東京 ⇔ タジキスタン


 一年前、古代遺跡。


――助けてください! 隊長!


――隊長! 隊長、どこにいるのですか!


――め、目が、目が痛いです!


――私はここだ! みんな落ち着くんだ!


――隊長! 涙が止まらないです!


――もうダメです! このままでは!


――うっ! 乾く。乾いていく!


――落ち着け! 冷静になるんだ!





 現在、東京。


 ああ、腹減った。腹が減って眠れねえよ。いま何時だ? チッ。午前二時かよ。中途半端な時間に目が覚めちまったなあ。こんな時間にコンビニなんて行きたくないし、かといって、このまま眠れぬ夜を過ごしたくもない。どうしたもんかなあ。あれ? オヤジ、帰ってんのか? ハハ。意外とお土産に食い物を買ってきてくれてたりして。まさかな。そんな都合の良い話はないよな。でも、淡い期待を胸にキッチンを覗いてみるか。うん。俺とオヤジの絆を信じてみよう。遠くからでもオヤジは俺の腹の減り具合を察したに違いない。さて、くだらないことを考えていないで、キッチンを覗きに行くとするか。





 一年前、古代遺跡。


――隊長! どうにかしてください!


――涙の出過ぎで脱水症状になってしまいます!


――この臭いを止められないのですか!


――騒ぐな! いま考えている!


――ああ、目眩がしてきた。


――アレです。アレが臭いの原因です!


――隊長が怪しい箱を開けたから!


――だから、解決方法を考えているだろ!





 現在、東京。


 当然オヤジが俺の腹具合を察するわけもなく、キッチンにそれらしい物はなく、テーブルに突っ伏して俺は泣く。腹が、腹が減った。どうしてこんなに腹が減っているんだ。晩飯はちゃんと食べたはずなんだが、あれは夢だったのか? いや、ひょっとしたらいま現在のほうが夢なのかもしれない。うむ。どっちでもいいな。いずれにしろ、いますぐ何かを食べたいということに変わりはない。いいや、待てよ。仮にここが夢の世界なのだとしたら、食べ物以外の物も食べられるのではないか? 例えば、そう、このテーブルはチョコレートかもしれない、って、俺は何を考えているんだ。深夜にテーブルに噛り付こうとするなんて、どうかしている。永久歯は大切にしなければならない。とりあえず、冷蔵庫の中を物色しよう。





 一年前、古代遺跡。


――箱を閉めてください!


――土で出来た箱は隊長が崩しちまったよ!


――じゃあ、どうするんだ!


――私がどうにかアレを封印する!


――早くしてください! 干乾びてしまいます!


――臭いが目に沁みる! 死んでしまう!


――入れ物もないのに封印できるのですか!


――わ、私が食う。私が、このタマネギを胃袋に封印する!





 現在、東京。


 なんだよこれ? タマネギ? にしては随分と派手な紫色をしているなあ。それに、なんで厳重にガラスケースに入ってるんだ? あ。はいはい、なるほど。分かった、分かっちゃったよ。これはタマネギの形をしているが、ケーキだな。表面の紫色はキャンディコーティングか何かだろ。だから綺麗なケースに入っているわけだ。オヤジが誰かから貰ったとか、そんなところだろうな。あのオヤジが甘い物を好むとは思えないし、俺が食ってやろうじゃないか。よし。いただきまぁす。





 一年前、古代遺跡。


――う、うまい! このタマネギ、うまいぞ!





 現在、東京。


 う、うまい! このタマネギ、うまいぞ!



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