第一部 春の夜風より速く、高く‐1
その不思議な、年の離れた友人たちと出会ったのは生まれ故郷である夢見町に引っ越して少し経った、春も始まったばかりの頃だった。
子供たちはすでに各家庭を持ち、蓄えも多少あり何よりもひとりぼっちでいる時間に色々なこと…亡き夫のことを考えていると出会いの場所であり共に生まれ育った故郷のことが無性に懐かしくなり思い切って戻ることを決意したのだ。
子供たちはわたしのことを心配して反対したけれど、今度ばかりはわがままを貫かせてもらった。それに田舎とはいっても今は整備されてそこまで不便ではなくなっていた。
なによりも歳をとったせいか、全体的にのんびりとした性格になり速さを求めることもなくなってきていた。病気などの場合は例外だけれども、時間に追われる生活から離れた今となってはある程度は待つことに苦痛を感じなくなっていた。
ただひとりぼっちでいることは辛かった。
生家は両親が亡くなってすぐに売りに出したため数十年にわたって故郷に戻らなかったわたしはすでにその土地からしたら見知らぬ他人になっていたのだ。
もちろん幼い頃からの知り合いはいたのだけれど…大部分の人間はこの町を離れているか永遠の眠りについているかで、知り合いに関しても長年離れていた影響は強く気軽に会いに行くのはとがめられた。
そういったわけでわたしはほとんど家…夫はわたしと違って彼の両親が亡くなった後も生家を売り払うことはなく、定期的に戻っては整頓したりとずっと管理していたため、わたしはそこを人生の最期を過ごす場所として選んだ。
彼が亡くなった後、何度か売りに出そうかとも思ったのだけれど彼との繋がりから何となく維持をしつづけていた。ただ彼とは違ってわたしはきちんと管理などをしていなかったから、戻るに当たって最初にしたことは大掛かりな改装だった。
建物自体は古くともしっかりしていたけれど、長年ほったらかしにされていたためあちらこちらに、雨漏りこそなかったものの老朽化の様子が見て取れた。
改装はそれこそ家自体がしっかりしていたこともありすぐに終わった。
そしてわたしは移り住んできた。
べつに何かが起こるとは思っていなかった…ただ彼との思い出から移り住んできたに過ぎなかった。
でも、夢見町という名前が示すようにそこは夢のような場所だった。それこそ昔のテレビドラマのナレーションから借りると不思議なことが、決して不思議でない場所。
そう歳の離れたふたりの友人が人間ではなく、妖怪側に近い存在だったようにどんなことでも起こりうるところだった。
ゆったりとしたペースながらもまずは第一章の投稿です。
この文章を書くだけでもかなり時間が掛かっているだけに完成はまだまだ先になりますが、少しずつ進めていく予定です。
まだまだあと少しはのんびりした展開になりますが、物語が動き出すとアクションが増えていく予定です。とりあえず予告として第一部の終盤は車を使ったちょっとしたアクションの予定です。
のんびりとなりますが、少しでも楽しんでもらい、お付き合いいただければ幸いです。