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11話 闇の時間に生まれた光

 アメーナが、偽人間とペアを作ってからしばらく時間が経った。10分くらいだろうか。俺は、ポケットの銃に手をつけて、他の偽人間の襲撃に警戒するが、偽人間の仲間がやってくる様子はない。そうこうしている内に、アメーナは偽人間と打ち解けたのか、互いに抱き合いハグを始める。そして、2人は別れて、アメーナはこっちにやってくる。……ちなみに、向こうのほうでは、別れた偽人間とカップルだった女性が、偽人間の肩を揺らして何かを問い詰めている。アメーナは、背後の偽人間たちの揉めごとに気づく様子もなく

、俺のペア範囲に入り、話し始めた。


「ただいま戻りました。シブイさん、色々なお話を聞けましたよー。やはり、偽人間さんたちも人間だったんですよ。生まれは違えど、彼女は絶対にいい人です」

「おー、やつは女なのか」

「あ、いえ。彼女って言うのは女性っぽい口調だからでして、偽人間さんたちには性別というものはないらしいですよ」

「え?……それは、もはや人間なのか……?」

「人間です!……でも、どうしましょう?偽人間さんのルーツなども教えてもらいましたが、今は、泥棒の偽人間さんについてだけ話しましょうか?」

「……うーん。いや、お前が聞いたという偽人間の話を、全部知りたい。これから敵対する相手について、情報は多いほどいい、と思う。種族的な情報も役に立つだろう」


 俺は、アメーナに情報共有を促す。本当は、銃で撃退するだけならば、敵の特徴などを調べることはしない。目で見て、銃で撃てばいいだけなのだから。だが、アメーナが、偽人間を殺すことを止めてくる可能性がある。その場合に備えて、偽人間に対する安全性を高めておきたい。……あと、今は偽人間のルーツなどについて話さなくても、後で話を聞かされるかもしれないから、情報が必要な今のうちに話を聞きたい、というのもある。情報が必要であれば、話を聞くときの心の負担が減るのさ。アメーナは、1度シティ天井を見上げ、消灯した太陽電気を指差したあと、顔だけこちらに向けて話し始める。


「偽人間さんたちはですね、なんと、天からやってきた来客だったのです……!」

「……なに?……待て。偽人間は、人工的に作られた生物のはずだ。シティ中心部の研究でもそういう結果が出ている。……だが、偽人間が天から、シティの天井からくるなんて話は、初耳だ」


 偽人間が、人工生物だという話はわりと有名だ。シティ中から、アンドロイドの次に、偽人間らしき人工生物が研究され始めた、という記述のされている本が見つかっている。技術書のようなものは見たことないが、すでに技術は完成し、地上のどこかで作られているという話も多い。空からやってくるなんて、まさか、天井裏のようなものがあり、そこに住んでいる種族がいるとでもいうのか?俺は、わかりやすい説明を、アメーナに求める。


「話が見えないな。……偽人間に性別はない。やつらが増えるためには、人工的にやつらを作る設備が必要になる。地上ならともかく、天井にそんなものはない。……一体、偽人間はどうやって増えている?分身の術か?」

「人工的に作られたそうですよ。天井にある秘密施設、……太陽電気によって」

「た、太陽電気、だと?」

「そうです。シティ中央の天井にある、シティ全体を照らす光源、太陽電気こそが、偽人間さんが生まれた故郷なのです。……さっきの偽人間さんによると、現在生まれている偽人間さんたちは、生まれたときの記憶がなく、人の集まりへの執着が異様みたいだとか」

「古い偽人間は違うのか?」

「らしいですね。数は、今どきの偽人間さんが圧倒的に多くて、偽人間でひとくくりにされているそうですが。昔からいる偽人間さんは、人前には出て行かなかったり、仲間同士で隠れて生活していたり、人間と結婚して匿ってもらう場合が多いそうです。……ちなみにこの町は、デートスポット化したときに、大人しい偽人間さんとのペアも、受け入れる方針になったそうです。ほら、そこにも注意書きが」


 アメーナは、壁に貼られているポスターを指差す。暗くてよく見えなかったが、近づいて確認すると、確かに『ペアの町 恋人との恋愛風が吹き荒れる、その風には、人間も偽人間もそれ以外も区別なし 敵対行為のないものは殺しちゃダメ!』と、ポスター中央にでかでかと書かれている。文字は、濃いピンク色のようで、なんとも破壊力を感じられる字体をしている。……今は暗くてわかりにくいが、昼間見つけたら絶対につい見てしまうような、メルヘンでカラフルな化け物もたくさん描かれている。巨大天道虫の体から、動物の足と、幽霊の顔が飛び出ているような……。そういったキメラが盛りだくさんだ。これは、……目立つ。逆らったら八つ裂きにする、という意気込みが、ひしひしと伝わってくるポスターだ。


「うわ……」

「文章は、可愛らしいですよね。文字もピンク色ですし」

「いや、あのフォントは、どうかと思う」

「そうですか?まあ、とにかくですよ。偽人間さんたちは、太陽電気から生まれているらしいです。生まれた後は、みんな一緒に太陽電気から落とされて、そのときは、まだまだ体がすかすからしくて、無事に着地できるようです」

「軽いのか。俺の会った偽人間は、人並みに体重があった。徐々に増えていくということか」

「そのあたりは、詳しく聞きませんでした。……うふふ、でも、ここからですよ。あの偽人間さんが、過酷なシティ生活を歩み、ペアとなる女性に出会い、この町にたどり着くまでの壮大な物語は……!」

「ああいや、……個人的な話はいいや」

「ええー」 


 アメーナが不満げな声を漏らす。どうやら、アメーナは、その壮大な物語とやらをメインに話をするつもりだったようだ。……正直、このペースで話を聞いていたのでは、消灯時間が終わってしまう。俺はちょっと眠いのだ。早く、泥棒の偽人間とやらを倒さなければ。俺は、聞き忘れがないかだけ、確認しておく。


「今は時間がない。……偽人間全般に関する話は、もうないな?」

「んー。あ、もう1つだけ。太陽電気の中は、ほとんど真っ暗だったそうです。太陽電気から落とされたときも、町の光がたくさん見えたと。……もしかして、消灯時間に偽人間さんたちは、地上に来てるのかもしれませんね」

「この暗闇の中、偽人間が?」


 俺は、ふと天井を見上げる。特に、偽人間らしき発光体が落ちてくる様子はない。……やはり、あまりあてになる情報じゃなかったというのか?あるいは、生まれてからしばらくの間、偽人間は発光していないとか……。その可能性もあるな。確か、生まれた直後は、偽人間の中身はすかすかだという話だった。その状態が、発光になにか関係しているのかもしれない。アメーナは、俺の両肩を掴んで言う。


「シブイさん。あの偽人間さんは、私の新しい友人です。……信じてください」

「……ふん、まあいいだろう。残るは、泥棒の偽人間についてだな」

「はい。その後には壮大な物語も」

「それはいいや」


 見えない偽人間が、このシティ中に降り注いでいるかもしれない中、俺たちは話を続ける。ペアの町の、泥棒の正体に近づくために。






@キャラ情報@

(★=現能力、☆=能力成長性)


名前「ペアの町での初遭遇偽人間」

戦闘力:

体力 :★★☆

精神力:★★★


名前「一般的な偽人間(比較対象)」

戦闘力:   (対ペアは★★★相当)

体力 :★☆☆

精神力:★★★


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