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第1章
久しぶりに夢を見た。
嫌味なくらい青い空、焼け野原となった街。
俺は酷く傷だらけで、気を抜くと眠ってしまいそうで、眠ったらもう二度と起きれないということは、もうなんとなく感じ取っていた。
頭が痛い、腕も、足も、腹も、すべてが痛い。
ぬたぬたとした血が気持ち悪かった。
行き交う人は皆、俺を見て見ぬふりをする。
別にそのことに対しての怒りはなかった。
俺がそっちの立場なら同じことをするだろう。
「ようやく、しねるなあ」
ポソリと呟いた。
声は出ず、かわりに空気がほんの少し口から漏れた。
死の恐怖はなかった。
むしろ安堵感のほうが強かった。
おわり、おわり、これでおわり。
俺はゆっくり目を閉じ
…ようとしたその時
目の前に真っ白な手が見えた。
「まだ死ぬな」
大人なのか子供なのか
男なのか女なのか
分からない不思議な声だった。
残り少ない体力を振り絞って顔をあげると、そこには一人の女の子が俺に向かって手を差し出していた。
「ねえ、僕と一緒に世界を壊そう」
僕が返事をするより前に、彼女は僕の手を掴んだ。
今日はどうしたことだろう。
昔の夢を見るなんて俺らしくないじゃないか。