表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不浄者は凶神になり斜めな成長する  作者: ジャック・レイ・パール
蠢動(仮題
92/112

閑話:~ストワール王国~

 迷宮都市フノールから王城の帰りの馬車は誰一人として喋る者はいなかった。

 『大賢者のダンジョン』は封鎖され、探していたクラスメイトは無残な死体となり発見された。最悪の結果といっても差し支えはないだろう……。

 そして『大賢者のダンジョン』が実質封鎖されたことは転移してきた生徒にとっては元居た世界に帰る方法がなくなったことを意味していた。

 行方不明の透輝を探していた者、日本に帰る為にダンジョンの奥にあるという魔石を探そうとしていた者、両方にとって残酷な結果だった。もっとも透輝の死については元々予見されていて尚且つ復活の可能性すらあるのだが、それでもクラスメイトの死が軽くなるというわけではない。


 透輝の遺体は発見されてすぐに回収されたが左腕のスライムを取り除くことはできないどころか透輝の皮までもがスライムに取り込まれてしまっていた。





 最初に麗菜は透輝の左腕を覆っていたスライムから透輝の左腕を取り出そうとしたのだが、それはできなかった剝ぎ取った端から再生しすぐに右腕を覆ってしまう。

 当然だ、<凶神化>していた透輝が魔力の加減も分からず最初に生み出したスライムである。戦闘能力こそ与えられなかったものの<凶神化>していた時に生み出した影響からか透輝の<三重之穢>にアクセスすることができ無尽蔵の魔力を持っているといっても過言ではない。

 もし、自爆などのスキルがあれば大国を吹き飛ばすことなど余裕だったろう。


 もっともこのスライムに付与されていた能力は<保持>……。取り込んだものをそのままの形で保存して変化させないことだった。


 いくら適正職が上位職の<勇者><聖女><賢者>であろうとも無尽蔵に近い魔力をもち再生力も高いとなればどうしようもなかったのだが、麗菜は狂気を感じさせるくらいにスライムをズタズタにした。


 無論すぐに再生するのだが、飛沫として飛び散るものもあるわけで……そういったスライムは仕事がないので命令にはなかったものの透輝の抜け殻を<保存>すべく生徒達からすると透輝の遺体を取り込んでしまった。


 さらに激昂した麗菜だったが涼香や憂そしてビュウメスに動きを止められた。

 ビュウメスいわく……


「このスライムは普通ではないでしょう、再生力もそうですがその中にあった右腕が一切傷もなければ腐っている様子もないです。体をの方は少し腐りはじめていました……このスライムは保存状態をよくするのに役立つでしょう復活のためにはなるべく損傷がないほうがいいのでは?」

「──それでなにかあったらどうするんですか?」

「どのみち彼の遺体をそのままにしておけば腐り蘇生も無理になりますよ」


 冷蔵技術などもない世界だ、透輝の抜け殻には養分などもあり、とても腐敗しやすい。


「麗菜……」

「三月さん、ビュウメスさんの言う通りだよ。無力だよね……」

「涼香……保梨奈」

 

 涼香は麗菜を心配して憂は友達だった透輝を失い、蘇生という夢物語にも等しい賭けに透輝がベットされる虚しさとそれでも透輝が生き返る可能性が上がる様に損傷がないようにしたいという願いから麗菜を止めた。


 その後臨時の話し合いで透輝の遺骸はスライムの中に保存された。スライムには知恵はあったので自身の体内でなるべく美しい形で創造主のことを保とうと透輝の抜け殻に入り込み生徒達からすれば生前の姿をみせていた。


 そうすることで抜け殻に中身ができ、まるで寝ているようにしか見えないきれいな状態になったことで生徒達の心をさらに抉ることになった。


 それでもその姿しか見なかった生徒は幸運かもしれない身体中の肉(体内)がなくなったモノを見るよりはマシだろうから……。




 それから三日後、筆者も忘れていたケルシュと別れ一行はフノールを立った。

 急いでいたので道中、ゴブリナの巣に置いていった騎士達をまたもや回収し忘れた。

(後日帰ってきた彼等はゴブリナと結婚式を挙げる)


 


 王都に辿り着いた時、多くの生徒達が安堵とこれからのことを考えて不安になった。

 元々といえば『大賢者のダンジョン』から出てくる魔物を倒す為に召喚されたが『大賢者のダンジョン』は封鎖された……となれば自分達は用済みなのではないかと。




 しかし、それは杞憂だった。ストワール王国の国王であるトルクは生徒達が暮らしていけるよう手配することを約束した。

 ストワール王国は肥沃な土地に淫夢族との契りによって国としても栄えている、そんな中で自分たちのエゴの為に召喚した者達に何もしないほど外道でもなかった。


「それに……君たちが元居た世界に帰れないわけではない」


 国王として謁見の間に生徒達を集めてトルクはそう言った。


「以前にも言ったが、君たちが帰る為に必要な魔石は『大賢者のダンジョン』で採掘が可能だった。しかしだ、他のダンジョンでも同じ魔石を採ることはできる……かなり時間がかかるが。正直言って今回と同じだ……ストワール王国として魔石を集めれば騎士達の安全なども考えればいつ君たちが帰れるか分からない。しかし、自分達で集めるならば……。」


 それはダンジョン攻略に失敗した生徒達には酷な話であった。



 大部分の生徒達は他のダンジョンに行く気概など持てなかった。

 今回のダンジョン遠征に参加しただけでもファンタジー小説のように無双できたとしてもそれ以外の移動や逐一水の残量を気にしたりと地味なことが多くストレスとなり当分の間はそうした思いをしたくないと考えたのだ。


 トルクとしてもそれは都合がよかった、もし再度生徒達がやる気に燃えてダンジョンに行くとしても受け入れ体制ができていなければどうしようもない。元々ダンジョンから魔物が出てくるのも『大賢者のダンジョン』くらいで他のダンジョン都市では王家が所有するような建物などはない。


 トルクは彼等が自力で魔石を集めると宣言した時にすぐにでもサポートできるようにしておくつもりだった……それで彼等が死ぬことになろうとも。


~~~~~~~


 『大賢者のダンジョン』の研究区画にあったようなガラス管に似たものが王城の地下にあった。

 その中身は透輝の抜け殻だ、もっともストワール王国にいるものからすれば透輝の遺体ということになっているが、ソレは保存技能を持つスライムに満たされながら浮かんでいた。


「こうして見ると寝ているダケにみえますね~、ま背中を見れば一目瞭然なんデスけど」

「真理……不謹慎だゾ」


 透輝のガラス菅に入った脱け殻を見ている男女、透輝のクラスメイトで死者蘇生に必要になっている二人だ。



樫古 真理(かしこ まり) 上級職<錬金術師>

黄泉浦 宗陀(よみうら そうだ) 上級職<降霊神呪術師>


 透輝を蘇らせるために必要な技能を持つ適正職(クラス)を持っている二人だ。

 透輝の肉体破損と蘇生術実行する際に必要な技能をもっていた、元々はダンジョンなどにいかない待機組と呼ばれた人員だったが戦闘能力がないわけでもなかった……潜在能力としてはだが。


「でも、私が肉体を再構築する時に脳とか身体を弄ったりすれば峯島君にどんな変化が起こるカナ?」

「まともな思考じゃないゾ~それ……」



~~~~~~~~

ヨヨムンド王女の部屋


 ヨヨムンドは自らの私室に麗菜を招き入れていた。

 夕食が終わり、食後のティータイムの話し相手として……というのが表向きだが他に部屋にいるのは騎士の姿からメイド姿になったビュウメスだけ、実質ヨヨムンドと麗菜の密会だった。


「レイナさんには辛いことをさせてしまったと思っています。」

「そう言わなくても……待つことしかできなかったヨヨより自分で探すことができた私の方が──。」


 互いに辛かっただろうと理解できるまで少し時間がかかったが透輝が行方不明になる前からこうして茶を楽しむことがあった二人は不毛なことだったと理解すると顔を見合わせて苦笑交じりに紅茶をたのしんだ。


 緊張がほぐれてくれば話は次第に楽し気なものに変わっていく、いつしか透輝を蘇らせた後の話題となり本当に実現できるのかという不安からなのかぶっ飛んだ話になっていた。


「どうせなら、生き返った初日に二人で告白でもしてみよっか?」


 キョトンとしたヨヨムンドはフフッと笑った。


「面白そうですね、そのまま三人で結婚式でもしますか?」

「悪くないかも……ヨヨとなら上手くやっていけそうだし。きっと峯島……いや透輝君は慌てふためくだろうな」


 二人の脳裏に教会でウエディングドレスの自分達二人に挟まれ顔面蒼白になって首を振っている透輝の姿が思い浮かんだ。


「どういった反応をしてくださるでしょう?」

「そう言ったことに無駄に(さと)い彼のことだから土下座して『すいません許してください、なんでも……出来る事ならしますからッ』とでもいいそうだな」

「そんなことをするんですか?」


 不思議そうにするヨヨムンド王女だったが、彼女は麗菜と違い過ごした日々が違う。



「彼ならきっとそうするよ?私達が告白をして周りからどんな目で見られるか考えないほど馬鹿じゃないし私達の尻に敷かれることしか想像しないだろうからな……素直に受け止めてくれないだろうな」

「それなら任せて下さい、従順になるまでヤりますから!淫紋刻んででも!」

「淫紋って……できるの?」


 普通は淫紋といえば男女逆じゃないのかとかどうしてそんなことをヨヨムンド王女ができるのかなど麗菜は疑問に思ったが、ヨヨムンド王女は淫夢族の血を濃く受け継ぐ存在であり潜在的な力や能力は純血種の淫夢族と変わらず尚且つ最上位でもあった。


「やったことはありますよ……」


 ヨヨムンド王女は視線をメイド姿のビュウメスに向けたがビュウメスは顔を赤くしてヨヨムンド王女の視線から目を背けた。


「……まさか?」

「小さい頃の過ちです、湯浴みをビュウと一緒にしていた時にお腹に触ったら浮き上がってしまって」


 戦慄した麗菜にヨヨムンド王女は困った様に笑うしかなかった。




今月は忙しく更新はどうなるかわからないです

エタらないようにはしたいですが……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ