魔蟲招来
淫夢タグを入れた方がいいのかが最近の悩み
『トウキ……反省した?』
「あ”-」
慈しむかのようにしてパトラが透輝のことを腕の中で抱きしめる中で透輝は股間を手で押さえてプルプルと震えていた。パトラの蹴り上げで大事なタマタマは重大な損傷を負ったが<高速再生>のおかげで機能を失うことなく再生できそうだったが丹田に響くかのような鈍痛には<高速再生>でも無力であった。
とはいえ、パトラの胸に顔をうずめてながらも微笑みながら頭を撫でられるとタマタマの痛みが気にならないから不思議だった。透輝としては自分は異世界に来てから新しい扉を開きすぎなんじゃなかろうかと思ったりもする。
……が、実際には従姉が同じ家に暮らし透輝をモデルのBL同人を描き、校内美少女の一人の同級生はそのアシスタント更には友人に男の娘がいるという『なんだこれは…たまげたなあ』と言いたくなるような場所に今までいたのだから今更だとしかいえないだろう、むしろ変な性癖を発症しなかった透輝のことは褒められるべきだ。
それから太陽が天蓋の真上に昇ったころ、透輝はおじいちゃんみたいな小さな歩幅でプルプル歩くことができるくらいには回復した。無論、既にダメージ自体は回復はしているので後遺症は気分的なものだ。
『トウキも一応回復したし、そろそろ出発しよ?』
「え、マジすかッまだ歩くのつらいんですケド?」
透輝がパトラにお慈悲ョ~と懇願する視線を向けたが、パトラはそれを意に介さずにいた。
『……私がなんで意識がなくなったと思ってるの?』
「それは……」
透輝は『え、パトラの鼻に指突っ込むためじゃないんですか?』と即答したかったが後が怖いのでやめた、しかしマジメ君が真っ青になるくらい考えたがその答えは浮かんでこない。
「わっかりませ^~ん」
『ホントに真面目に考えたの?』
パトラの疑うような目に心外だというように透輝はパトラに視線を交差させる。
ジーッと見つめ合う二人、透輝の赤と青のオッドアイにパトラの碧眼が合わさること数十秒、視線を逸らしたのはパトラの方だった。
『……もういいからッわかった。とりあえずトウキは<凶神化>して!』
パトラは少し頬を染めながら拗ねるように怒り透輝に<凶神化>するように言った。(念話だけど)
そして、透輝の背中を手で掴みながら揺さぶるので透輝も「わかったわかったわかったよもう」と背中を大きく揺さぶりパトラの手を離すようにすると<凶神化>の為に意識を集中させる。
透輝の身体から血煙のようなどす黒いものが噴き出してくる──瘴気だ、この世界においては生ける者全てに嫌われるものであったがそばにいるパトラはむしろ瘴気を浴びながらも森林浴をしているかのように表情を緩ませる。
そして、透輝を中心にして瘴気は渦を巻く、すると透輝の黒髪から徐々に色が抜け落ち白髪になり初めて脱皮してから変化した赤と青のオッドアイが紫紺へと瞳の色を変えた。
「──ふうッこれでいいのかパトラ?しっかし久しぶりのせいか随分<凶神化>に時間がかかったな、パトラ?」
パトラは<凶神化>した透輝のことを恍惚とした表情で見ており、それは透輝の劣情を誘うものだったが流石に股間蹴りをくらった後なので冷静でいられた。
「おーい、パトラ?」
『ファ!?なに?」
「なにってなあ」
パトラは透輝の発する瘴気に当てられたらしい、一応パトラも依代はスライムだとはいえ元がアンデットだったために透輝の莫大な瘴気に恍惚としていたとのことだった。
『えっと、じゃあ外に出てみよ?そこですることがあるから……』
「へーい」
一夜を過ごした洞窟から出てみるとその景色は一変していた、透輝の記憶の通りならば活力ある森だったはずなのだが透輝の視線をあるのは朽木、それも森全体が朽ち果てたかのようになっていた。
「どうなんてんだよ、これ」
『ん、こうなっちゃうよね不思議そうにしてるけど透輝のせいだよ?』
「マジで!?」
瘴気とは生ける者の生命力を奪うもの、それは植物とて例外ではない多少の瘴気ならば植物の成長が抑制される程度ですんでいただろうが<凶神化>した透輝の発する瘴気は常軌を逸するものであり更には洞窟というのはその土地に縦横無尽に巡っているものでもある結果として瘴気は洞窟から瘴気はいきわたり森は死んだ。
「あー、そういえばダンジョンでも同じことしてたな」
透輝はそれで1フロア壊滅にした。
「……まあ、いいだろ。パトラはこの光景みてなにか思うところはあるか?」
パトラは元というべきか一応はエルフの要素もあるのでとうきとしては『森を破壊するなんて』とか言われるとつらいものがある。
『別に?むしろ、今は瘴気が満ちていていい気分』
「それなら……いいのか」
エルフのパトラが朽ち果てた森であってむしろいい気分と言われるのは何か夢が壊れるような思いだったが、パトラが気持ちいいというように目を細めているだけでも凶神となった価値はあるかもしれないか、と透輝は自分を納得させた。
「で?これからどうするんだ?」
『うん、交渉に応じてくれた子を呼び出すから驚かないでね?』
パトラは透輝の背中に手をつける。
『さあ、お待たせしたけど、ようやくそれが報われる時だよ』
「なんのこっ……がっ!?あぁぁぁぁ!!?」
突如として透輝の右目に激痛が走る、まるで焼けた鉄を流されたような痛みと共に右目は光を放った。
その光の中からありえない程の巨蟲がズルリズルリと姿を表す、それは全長が30mを優に越えており、体節を幾つももつ深緋色のムカデだった。
それは、かつて透輝がダンジョンでトイレに流したムカデが再び透輝の眼前にでたのだった。