内部交渉
それなりに進んだ……はず
「あー、また歩くのか面倒くさいなあ」
『私は楽しいよ?』
ブラックウーズのベッドの上で横となり透輝とパトラは目指す瘴気溢れる地について話す、透輝の『凶神』としての本能ともいえる感覚で目指している訳だが透輝の体感では目的地は遥か彼方だろうことはなんとなくわかる。昨日と同じ進行速度ではいつ到着できるか……ということもあるが単に楽して移動したいというのが透輝の本音である。
『歩くのが飽きたなら、あの子達の誰かに乗せてもらうとか?』
「あの子?乗せてもらうとか?どうゆうことだ?」
パトラの唐突なその言葉に透輝は困惑する、パトラと行動を共にしたのはダンジョンからだし彼女が誰かと知り合っていたとは考えずらかった。
「すまんパトラいったい誰のことだ?」
『だったら、話し合いしてくるね』
「話し合いは先に俺として……って」
透輝が喋り終わる前にパトラは突然糸が切れたかのようにパタリと倒れてしまう。
「ええッ!?パトラッ?パトラァッ、い、息は……馬鹿なしていない……だと?」
揺すったり、頬をこねたりするがパトラが目を覚ますことはなかった、そのまま数分は経過した頃に透輝は諦めてパトラを観察する。
「へへっ、信じられないだろこれ息してないんだぜ……」
そのまま穏やかな表情で眠ったようにいるパトラを見て一言。
「とりあえず、ぶち込んでみるか……やっちゃうよ(→)やっちゃうよ(↑)」
そのパトラは透輝の精神世界ともゆうべきスキル<三重之穢>の内部にきていた。パトラと透輝は実のところ精神面でも肉体面でも強い結びつきをもっているのでパトラは透輝に干渉してそのスキルを扱うことも精神世界に入り込むことすら可能だった。
もっとも最近は透輝の『凶神』として不安定だった存在も安定してきていたので干渉するために一時的に現実世界で使っている依代の制御は後回しになってしまったのだが。
「トウキ驚いてるかな」
精神世界だけあってかこの場所ではパトラも不自由なく喋ることができた。そもそもパトラが現実世界で喋ることなく念話だけで済ませているのは依代で喋るのが面倒なのである。
そもそも、スライムとして構成されているパトラの依代では呼吸というものは必要がなくものを食べることもないため消化器官も必要がない。
もしパトラが会話をしたいなら発声の為にわざわざ呼吸器と発声器官を創り、その上で細かい作業が必要となってくるのだが、それは肉体を得てから日数もそんなに経過していないパトラに容易にできることでもなかった。パトラにとって必要なのは透輝と自分、それを確かめ合う為の器官があればそれで充分なものだったのだ。
「貴女との交渉も上手くいったしね♪」
パトラは透輝に感謝している、元々は実験体として生み出されたパトラは粘魔とエルフの融合体として作り出され成功した後に屠殺され肉体を細切れにされ残った体液がアンデット化し粘魔として活動していた。粘魔化の影響かアンデット化のせいなのか混濁し薄れゆく己の自我が薄れていく恐怖から解放してくれたのは透輝だ。
もっとも、パトラが依代を手に入れることができたのは透輝が<吸魔外殻>で父親の成れの果てを取り込むことができたからなのだが……それによってパトラは失っていた肉体の情報をスライムで依代として構成することができたのだ。
「こーゆうのって、運命の出会いってやつなのかな……」
照れくさそうにパトラが身体を揺さぶっていると、パトラの後ろからズルズルと何かを引きずる音が聞こえてくる、パトラは振り返ると「別にせかさなくてもいいでしょ?」と声をかけたが今度は『カチカチ』と音が変化しただけだった。
「わかりましたッ戻ってトウキに伝えておくから準備して待っていて」
パトラがそう告げると音が止んだ、それにパトラは大きく息を吹きと意識を再び透輝の隣にいるであろう依代に意識を注いだのだった。
パトラは依代に意識を戻して透輝の顔が近くにあることに驚く、透輝も急に意識が戻ったパトラに驚いた。
「よかった。パトラ目を覚まして……」
透輝は…パトラの鼻に指を突っ込みながら安心した表情をみせた。
『……』
とりあえずパトラは透輝の股の間に自身の脚があったので、その脚をおもいっきり振り上げ透輝の大事な大事なタマタマを砕いた。
「アッ、アアアア!?!?」
パトラの鼻から透輝の指が『スポン☆』と抜け、透輝はパトラに覆い被さるようにして倒れたのだった。




