放たれし凶神
─透輝─
「世界よッ私は帰ってきたッ!」
股を肩幅に開き勝利のポーズを透輝は決める、ダンジョンの秘密通路を通ること一日、ようやく外にでることができた。洞窟特有のじっとりとした空気から解放され、どこぞともわからぬ森の中だがそれゆえに清涼な空気が肺腑を満たす。
『ここが……外の世界?空気中の魔力濃度が薄いけど、生体の種類は多いみたい?』
パトラはといえば親指と人差し指を擦り合わせていた、それで魔力でも計測ができているのか……。
パトラは不思議そうに辺りを見ていた、彼女はダンジョン生まれ育ちついでに死亡の後にアンデット化し透輝に吸収されるという複雑な経緯を辿っているが、ダンジョンの世界しか知らないのは間違いはない。
もっとも、ダンジョン内には森などもあったわけで実際にはもっと疑似的は知っているわけだが。
「で、どうすっかね?」
霹靂神時雨にダンジョンの底に突き落とされ、紆余曲折ありパトラという伴侶と神格『小凶神』を得て、こうしてダンジョンから抜け出した。透輝自身には特に目的としたものはなかったが、パトラは透輝に神格をあげて欲しいとの願いを叶えるべく再び世界に這い出した。
パトラは父親である『大賢者』の外法によって知識を植え付けられている。その知識をもって透輝とパトラが望むものを手にするためには神格をあげねばならないのだ。
『……まずは瘴気を増やすことじゃない』
パトラは透輝のことを見ながら不機嫌そうだった、どころではなく不機嫌なのだが……。
「確かにな、で、そろそろ許してください」
実はダンジョン脱出路で透輝はパトラの怒りをかってしまい、大事なタマタマを両方とも潰されるということがあったのだ。
ダンジョンの脱出路には幾つか小部屋があり、そのうちの一つは『大賢者が賢者になる部屋』というのがあり、有り体に言えばエロ部屋で、その部屋に入ったとき透輝は「これがこの世界のエロ……。」と日本の無駄に洗礼された無駄な働きに感動を禁じえなかったが、その中には裸体画などもあったのだが……。
あろうことか透輝はその裸体画のふくよかな胸とパトラの胸を交互に見やり、その後に慈しむようにパトラを抱きしめたのだが……膝頭で思いっ切りタマタマが撃ち抜かれた。
その時、透輝は<高速再生>ってタマタマにも有効なことを天に感謝することになった。
以上閑話休題
「あの時は悪かった。でもな……男の本能なんだよアレ。」
『…………』
焦ったような透輝に真顔のパトラ、これが痴話喧嘩というものか(悟り)
『……おっきい方がいいの?』
パトラは囁くような弱い思念を透輝に伝える。
「……胸よか脚派ですんで。」
パトラになぜか、納得の表情が浮ぶ透輝の性癖など筒抜けらしい。
今度は透輝がそんな自分の性癖がバレテーラしていることを知って顔をあかくしていた。
「ま、まあ『小凶神』の影響か何となく行きたい方角があるんだよな……多分、そこには瘴気があるんだと思う」
『本当にぃ?』
一転攻勢のパトラははにかむような声音で透輝をからかう、透輝もそれがわかっているのでパトラの鼻を摘まみ「本当だよ」と笑った。
パトラはそんな透輝の頬をお返しだというように両手で包みブニュッと透輝の顔を潰した。
暫くそうしていたが、透輝が降参とでもいうよう苦笑交じりに両手をあげるとパトラもはにかみながらその両手を離した。
『距離はどのくらい?』
「2つあるんだよ大きな気配と小さな気配がな、個人的には大きな気配の方は身に余りそうなんだけど経験としては大きな気配の方が気になるところではあるんだよな……」
小さな気配の方が安全性が高く、わざわざ危険な方に行く必要もないかもしれない。ただ、透輝は興味があった一体自分が……『凶神』となった自分が否定的になる程のモノがあるとは……瘴気の危険性というもの自分はよく分かっていないが、その場所に行くことでその答えが得られるような気がするのだ。
次回『光るチノコ』




