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不浄者は凶神になり斜めな成長する  作者: ジャック・レイ・パール
『彼』を失って
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亡骸を抱えて少女は決意するⅢ

「──────────えっ?」


 その光景を見た時の麗菜の口から漏れた第一声だ。水晶が手のひらから零れる……理解ができない、頭が考えようしない思考が停止する。麗菜の周りにいる者達の反応も似たようなものだ。


 透輝は既に死んでいるだろう──それは暗黙の了解だったが、それでも残酷だった。

 死体がバラバラになっていたというなら理解ができた、原型を留めているならいいとは思っていた。


──しかし、現実はそれよりも怪奇だった。


無造作に転がる左腕は透明なスライムの中にあり、まるで氷の中に閉じ込められたかのようで博物館などで『実寸の人間の腕』などと銘打ってあれば興味深く見てしまいそうだ。

 そして、その横にあるのは平らな人型、頭部には黒髪があり俯けになっている、目を引くのは背部にある頸部から肩甲骨辺りまで大きな裂け目があること……いったいどんな目にあえばこんな奇怪なものが出来上がるのか不思議でたまらない。


 ソレが切り離された左腕にブレスレットを……平らになっている人型が麗菜達が探していた少年のものだと認識してしまった時。


 麗菜は膝から崩れ堕ちた。胸に風穴ができたかのような喪失感に虚しさ、自分自身が認識したものを脳が否定する。


 周りにいた者達も麗菜の反応から『ソレ』が透輝だと……クラスメイトだったモノだと理解ができたのだろう──。


「お、おええええぇぇッ」


 クラスメイトの一人はその元透輝だったモノの姿に耐え切れなかったのか胃の中身をぶちまけた、それを咎める者はいない。


 これ以上にない結果が峯島透輝が死んだということを訴える。


 麗菜は力の入らない脚を動かして、震える両手でソレを抱き上げる。中身がなくなっているその身体は確かに透輝の面影を残している。


「ごめんね──」


 擦れたような小さな声で謝る。いったい彼がどんな目にあってこうなってしまったのか、どんな思いだったか麗菜は知ることはできない、しかし透輝を見つけたことで麗菜の中の決意は固まる。


「……君に想いを伝えて、一緒に帰るんだッ!」





 そんな少し前、ビュウメスと霹靂神は透輝だったソレを見ながら表情を崩すことはなかった。ビュウメスにとっては透輝という異世界人はどうでもいい存在だったし、むしろヨヨムンド王女に近づく害虫でもあった。


「ビュウメスさんはどうしてああなったと思いますか?」


 しかし、ビュウメスには分からなかった……なぜ、霹靂神は同じ異世界からきた者が死んだというのに平然といられるのだろうかと。普通ならば、他の生徒達のような反応をするのが一般的だろう、というのに霹靂神にはそうしたものは一切見られない、そのことを不気味にビュウメスは思いながらそのことを悟られぬよう返答をする。


「断言できる訳ではないけれど、恐らく()()()()()ことの見当はつく」

「それは?」

「スライム……だろうね、その中でも消化能力が低いものは死体などの体内に入り込んで内側から消化していくのだけれど、アレはそれにそっくりだ。左腕もスライムに取り込まれているし、『親』が切り飛ばした腕を幼体に残していったとも考えられる。……戦闘能力がありながら消化能力が低いとは考えずらいけどね」


 ビュウメスがそう言うと霹靂神は「なるほど」と一言漏らすとその視線を透輝だったソレに向けた後、麗菜を見た。

 そこにはビュウメスが今まで見たこともない程に隠し切れない昏い喜びの感情をみせている霹靂神がいた、何物にも代えがたいものを手に入れて胸中が満たされているといったように……。


 しかし、麗菜が透輝だったソレを抱きかかえるようにした時、霹靂神の感情は抜け落ち隣にいるビュウメスに怖気が走った、霹靂神は透輝だったソレを抱える麗菜を睨みつけその拳を強く握り、その視線を離すことはしなかった。


 ビュウメスはそんな霹靂神に強い不安を感じつつも声をかけることはできないのだった。










ビュウメス「お前……あいつ(麗菜)のことが好きなのか(青春)」

霹靂神「それより、お前さっきからチラチラ見てただろォ?」

ビュウメス「な……なんで見る必要なんてあるんですか」

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