亡骸を抱えて少女は決意するⅡ
キリがいいので投稿、次回で麗菜達から透輝の方に移ることができるハズ
麗菜の取り出した水晶、それは麗菜が透輝のことを探すためにヨヨムンド王女から借り受けたものだった。
水晶は透輝がダンジョンに向かうことを心配してヨヨムンド王女が透輝に渡したブレスレットに反応して、その装着者の生存やその方角などを教えてくれる。既にブレスレットからは装着者の生存は確認できてはいないが少なくとも水晶の指し示す方向にいけば透輝のことを知ることができる手がかりがあるはずだった。
「それが……?」
「そうだよ、峯島君はダンジョンに向かう前にヨヨムンド王女から魔道具のブレスレットを貰っていてね、この水晶でそのブレスレットのある方角が分かるはず」
ダンジョンで使わなかったのは単純にダンジョン内が複雑に入り組んだ地形をしており愚直に進んでもあてにならないという理由からだったが、現在はダンジョン内の生存者および死者は全てダンジョン外に出されたはずで水晶をあてにしても問題はない麗菜は判断したわけなのだが。
内心は麗菜としても頼りたくはないものだった、透輝のことを知りたくないわけではない……恐ろしいのだ現実が透輝の死に直面することが。
それでも、麗菜は水晶に魔力を微量注ぎ、魔道具としての機能を起動する。水晶はぼんやりと光を放ち角のある一角だけが鈍く光る、その方角に透輝の痕跡が……もしかしたら……。
最悪の結果しか頭にはよぎることしかないが、麗菜は頭を振り、その方角を指し示す水晶を憂と涼香の二人に見せる。
「その方角に?」
涼香の確かめるような視線に麗菜は頷く。
「峯島君が身につけていたブレスレットがあるはず……。」
それは麗菜が自分自身に言い聞かせるようだった。水晶を持つ手が震える……探していた透輝を見つけることができる、早鐘のように脈打つ胸に麗菜は自分がかなり緊張しているのだなと自嘲気味になる。透輝のことが少しでも早く知りたい、でも、透輝の身になにか重大なことが起こっていたのは間違いがなく、もし透輝になにかあったらと思うと知りたくないと胸中に抱える矛盾……。
竦む足を一歩踏み出そうとした時だった。
「三月さん……。ちょっと落ちつこう?こんな状態になっているのに行こうとするのは……。」
呼び止めたのは憂だった。
「ダンジョンを出てからまだ時間もそう経っていないし、僕達だけでその水晶を頼って透輝のことを探しに行くことは危ないよ。せめて誰かに言伝しないと──」
「そうだよ」
涼香も憂に便乗もとい、同調する。
麗菜はそんな二人に失望したかのように下を向いて俯いていたが自分の方が無理を言っていることに気が付いたようで再び顔をあげた時、二人に「そうだよね、ごめん」と謝った。
「仕方ないよ……私だって憂が峯島と同じことになっていたら麗菜以上に取り乱していたと思う」
涼香はそう言うと憂を抱きしめる、憂はそんな涼香に「はわわッ」と声を出したが嫌なわけではなく驚いたのは明白でそのまま二人は見つめ合い始めたところで麗菜は二人を止めた。その時に一瞬、二人は幸せなキスをして終了というのが思い浮かんだが、何だったか思い出せなかった。
しかし、付き合ってからずっと幸せオーラを振りまいている涼香に憂を見ていると麗菜もこんなことになるなら日本にいた時から透輝に告白すべきだったかなぁと思わざるを得なかった。……まあ、日本にいた頃ならとっくに外堀はほぼ埋まっていたのだけれど。
ともあれ、三人は透輝を探すことを伝える為に一行の責任者であるビュウメスを探すことにした。とはいっても人だかりがある場所にビュウメスはいたわけなので探すというのは語弊かもしれないが。
「──はのようにして、あっちは後で私が向かいます。ん?レイナ殿?」
麗菜達がビュウメスを見つけた時、彼女は部下に忙しく命令していた。麗菜達はビュウメスにヨヨムンド王女から預かっている水晶を使って透輝のことを探したいと伝えると彼女は……。
「もう少しだけ待ってもらえませんか?私も同行したいので……主だった指示だけさせて頂きたいのですが─」
そう言うとビュウメスはテキパキと指示をだしていた。それを待っている間にノブキや玖甜などの生徒達も集まってきたので、そうした者達のうちで透輝と仲が良かった者も麗菜達と同行したいということで同行することとなった。
ビュウメスも指示が済み、麗菜達は水晶を使い透輝の身につけていたブレスレットを探すために出発したのだが……。
(なんで霹靂神がついてくるんだろ……?)
霹靂神と透輝の接点は麗菜が知る限りなかったはずだし、ついて来るなとも言えない……霹靂神はいつの間にか混ざっていたのだ。霹靂神には麗菜はいい印象はないので睨みつけることくらいしかできなかったが霹靂神はどこ吹く風と言わんばかりに気にもとめない。
「水晶の光り方が強くなってきたわね」
涼香が麗菜の持っている水晶を覗き込む、確かに最初は水晶の一角だけが光っていたが光っている方角に進むにつれて光る面積が増え尚且つ光量も強くなっているようだった。麗菜としては走りだしてしまいたいところだが、それを必死に抑えていたが早足になろことまでは抑えきれなかった。
水晶の指し示すのは麗菜達がいる草原の少し先の小高い丘を指し示しており、ビュウメスの話ではその先もまた平坦な草原が広がるためすぐにでもダンジョンから出てきている透輝の何かしらは見つけられるのではないかという話に皆が駆け足気味に丘を駆け上る。
──駆け上がった先にあったのは切断された左腕がスライムに取り込まれ、その横に干からびたように平坦になった峯島透輝の姿だった。
第二ヒロインをどうするか悩み中、和風ロリか狐娘どっちがいいですかね?こっちがいいって方は感想とか下さい。ルートとしては和風ロリ透輝女体化アリ、狐娘は透輝女体化ナシですけど……。




