異常
その後は一行は障害などもなく、警戒していたのが馬鹿らしくなるほどにあっさりと本隊に戻ることができた。
戻ってきた一行に最初は本隊の者達は警戒をしていたが、それがビュウメスに斥候部隊の面々だと分かると安堵の表情をみせた。生徒達はノブキが無事に戻ってきたことに笑顔でいた、ノブキがどんな目にあっていたかまでは想像もできはしなかったが無事にしていることが透輝という前例があったために安堵も大きかった。
「死に晒せ、馬鹿野郎ぅ!」
そんな中で麻枝玖甜は帰ってきたノブキに渾身の右ストレートを喰らわせた。「ぐふォ!?」と吹き飛んだ。周りの者達でも玖甜の行動に驚いたが玖甜は更にノブキの胸元を掴んだ。
「心配かけるな、バーカ!バーカ!」
「……悪かったとは思うがオレのせいじゃないだろォ!?」
「うるさいっ、お前が悪いの!そうなのッ!」
理不尽な言いがかりにノブキはどうすればいいのか分かららず玖甜のされるがままだった。ノブキとしては申し訳ないという思いはあったが玖甜になぜ、そこまでそこまでされなければならないのかという思いのがおおきかった。
「二人共、落ち着いて……周囲のことも考えてね?」
霹靂神はヒートアップしていた二人に忠告する。ノブキと玖甜は互いに周囲を見渡した後、見つめあった後居心地悪そうに離れた。
「霹靂神さん、この無能忍者を助けてくれてありがとうございました。」
「いや、私一人の功績でもないし、やったことは褒められたことじゃないからね。そこまでしなくてもいいですよ」
玖甜が改めて霹靂神にノブキを救ってくれたことに感謝するが、霹靂神はノブキを救助にいったことに対して、謙虚に驕ることはなく平然とした様子を見せていた。
その後は、ビュウメスにより『大賢者のダンジョン』が現在不安定な状態のため今回の探索は中止し地上に撤退することをもう一度説明した後に地上を目指すことになった。
──────────その判断は遅いものとなっていたが
地上へ向かうことは行きの何十倍もの苦労に変っていた。原因は無限とも思える程に蟲系も魔物が湧きだしていたからだ。1Mを超えるものから30㎝程のものまでの巨大蟲たち空を飛び、数の暴力で一行を苦しませた。その種類も規則性がなくムカデ、蜘蛛、アリ、カマキリにサソリなど数多の種類が襲いかかってきていた。
「ありえない、蟲系も魔物が出てくるのは、もっと下層の森林のエリアのハズ……!」
ビュウメスもこの異常事態にもっと早く行動をすべきだったかと後悔するが、この異常が起こるまでの時間は数時間程と対処できるだけの時間もなかったことなどは知りもしない。それでもなんとか騎士と生徒達で協力し蟲を振り払い活路を切り拓いていたのだが……。
「ありえない……。」
「なんなんだよッ……これ、切っても切っても死なない!?」
ある時から蟲を倒しても、頭を吹き飛ばそうとも、その体を両断しようととも蟲はその動きが止まらず遺骸と化した体で『キチキチキチ』と不気味な音を奏でながら襲いかかってきたのだ。
「アンデット化!?それも蟲の魔物だというのにこの短時間で!?」
普通ならば、高知能の存在程アンデット化は早く逆に低知能程アンデット化の時間や発声は少ないはずなのだ、低知能の蟲系の魔物がアンデット化するにはアンデット化の呪魔法か既に瘴気溢れる土地にいたものではないと蟲系のアンデット化など起こりはしない、しかもそれには少なくはない時間がかかるはずだというのに、ここでは命絶えたその瞬間からアンデットと化し再び騎士や生徒達に襲いかかってきていたのだ。
さらに、悪いことにダンジョンの奥からは新たな蟲がウゾウゾと這い上がってきている。既に負傷者は多数だったが『聖女』の憂の回復によって死者は出ておらず負傷したものから回復していくというローテーションもできてはいた。更には突出した実力をもつ霹靂神を筆頭とした戦力も戦線を保つことの要員の一つだった。
「邪剣『夜』いきましょうね~」
「墨瑛ッあんまり前に出しゃばり過ぎんじゃねえぞ!」
「そう言う笠松さんが下がったら?へなちょこ忍者?」
「うるせえ!肉盾!」
詩衣音、玖甜、ノブキの三人は軽自動車ほどの甲虫を相手に立ち回っていた。とはいえ半ば乱戦に近い形でだが……甲虫ということもあってか比較的に関節の可動域などから行動を予測していたが甲虫の厚い外骨格に阻まれて有効打を与えることもできなかった。とはいえ有効打がないだけで甲虫をズタズタにして行動不能にするということは可能だったしアンデット化の際に行動ができなくするということができるため、そうした戦法をとっていた。
「──ッ!」
「やあッ」
「──炎よ!」
霹靂神、麗菜、涼香は押し寄せる蟲の魔物の中でも特に強力な個体を相手にしていた。中途半端なまま息の根を止めると即アンデット化をしていたが霹靂神、麗菜の持つ武具は聖具のためかアンデット化せずさらには蟲達にも素で簡単にダメージを与えることができた。涼香はそんな二人のサポートとして二人に迫る他の蟲達を魔法で焼いてゆく。
「い、いでえ」
「少し待ってて、もうすぐだから」
その間にも怪我人は増える、憂は重症者から回復魔法を発動させ怪我を癒していく『聖女』の適正職補正に称号<男の娘>の効果が合わさり他の回復職とは比べものにならない治癒スピードだったが戦場は徐々に追い詰められ怪我人が増えていることを憂は感じていた。
「─オラァ!」
勝俣健司はその拳に聖具と同じ聖気を纏わせ、アンデット化させることなく前方を……地上への道を切り拓いていく強力な個体がくるのはダンジョンの奥からなので霹靂神、麗菜に任せているが健司も生徒達の中では実力者の一人だ、今も拳を傷だらけにしながらも蟲達の頭を潰し体を壊し踏み潰し活路を地上を目指していた。
「健司、一度下がって治療を……」
「黙ってろ!俺がここの適任なんだッだから俺が止まってられっかよォ!」
蟲達はアンデット化するとしぶとさが増す、体をいくら壊そうとも動き続ける。しかし、蟲がアンデット化せずに倒せるならそれが一番倒し易く地上を目指すことについては聖気を扱える健司が一番だった。健司は透輝のことそしてノブキのことでも何もすることも出来ていなかった、それがここでも何もできないままではいたくはないといくら傷つこうとも怯むことなく進んでいた。健司に恐れはない死ぬ気はない日本に戻りもう一度会いたい相手がいるにだから……。
そうして善戦していたもの、一人また一人と戦線に立てる者が少なくなり戦線が危なくなった時だった。
『初めましてこんにちは!私こそがこのダンジョンの管理者『大賢者』です。今回は皆さっまにご報告がございま~す!』
『大賢者』を名乗る声がダンジョンに響いた。
余裕がある投稿を目指したい……。
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