無力
お待たせいたしました。リアルがマジで生命線かかってまして中途半端なまま終わらせることは無いとおもいますので頑張ります。
最初にその異変に気が付いたのはビュウメスだった。斥候部隊が先行してから戻ってくるまでの時間があまりにもかかり過ぎていたのだ、恐らく何らかの問題が先行している斥候部隊にあったのだとビュウメスは考えた。今の所は斥候部隊の情報により恙なく探索ができているが今は警戒を強めてここに留まるべきだろうと考える。
そもそも彼女は生徒達が考えているような一度の探索では透輝のことを見つけることなど不可能だと思っていた。
強行すればなんとか見つけ出すことくらいは異世界より招いた者達の実力を鑑みれば可能かもしれない。 だが、それには多くの犠牲を払うことになるだろう……故に安全策として何度か探索を続けてダンジョンの知識や安定した実力を獲得したのちに本格的な捜索をすべきだろうと思っており今回はその第一回だ。生徒達は一刻も早く見つけ出すことができれば生きているかもしれないと思っているようだったが、それは有り得ないことだろう行方不明になった者が奇跡でも起こさない限り。
ビュウメスとしては透輝のことについては生存などありはしないことのために無理などはせず、死んでいるものとして割り切って慎重に捜索をすべきことだと考えていた。そのため、斥候部隊が戻ってこない現状を踏まえたビュウメスは待機をし、安全策をとることにした。
「斥候部隊からの連絡が途絶えた、これ以上は探索範囲を広げることは止めて一時的にここで待機とする。」
ビュウメスがそう生徒達や部下に宣告すると一部の生徒達、主に帰還を望む者や透輝のことを捜索するために来ていた者達は当然ビュウメスがした判断に不満を持ったが、ビュウメスが斥候部隊が戻っていないこと現状では動くことの方が危険なことを説明し納得させた。正直、ビュウメスは自分の敬愛するヨヨムンド王女に纏わりつく害虫に人望があったことに苛立ちをおぼえたが、それでも他の生徒達は特に罪も何もないので素直に従ってくれたのはビュウメスにとって僥倖だった。
ストワール王国の者達にとっては『待つ』ということは苦ではなかった彼等は過酷な環境、厳しい状況というものを知り、その重要性を理解しているからだ。しかし、生徒達には『待つ』ということは難しいことだった、平和な日本で一般人として暮らしてきた者達にとって救助とは自らの身を顧みず率先して動くことを指す、そこに自らが犠牲になるかもしれないということを考えるということは大多数にはないのだ。
とはいえ、生徒達もビュウメスの判断が間違っていないだろうことは理解していたが、当然不満まで隠せるほど大人ではなかった。ビュウメスにはそんな生徒達の不満を感じ取りつつも出来得る限りの生存率をあげることについて考えねばならなかった。
(なまじ、力があるということが厄介です、突然力を得たものだから制御もできていないのに慢心などはしてほしくはないのですけれど……)
ビュウメスが不満げな生徒達を見渡しながらそんなことを考えた時だった。
「------!------------------------!?--------------------------___。」
どこからともなく、必死になって何かを伝えようとする声が響いてきていた。声はダンジョンの壁に幾度も反響したためか意味を聞き取ることはできなかったが、ビュウメスはその声が斥候部隊についていった生徒の一人の者だということに気が付き、即座に斥候部隊が何らかの事情で甚大な被害を受けたことを悟った。
生徒達もノブキが危険な状態なのを感じたのか幾人かの生徒達が浮足立ち声が聞こえた方角に足を向けていく。生徒達からしてもクラスメイトが危険な状態なら救助に向かいたい……そう思う者達にしてみればノブキの安否が気になるのは当然のことだった。
「今回の探索はここまでだ、総員帰還の為に反転せよ!」
しかし、ビュウメスはそう思う事は無い、彼女の優先すべきことは生徒達の安全だ。斥候部隊と生徒を一人を失うことにはなるが他の生徒を守るためならば一旦ダンジョンの外へと向かうべきだろう。当然というべきかビュウメスに生徒達は『なぜ、助けにいかないのか』といったことを追求するがビュウメスからすれば失笑ものだ。元々、力こそあれど制御もできず知識もない生徒達を引き連れていること自体がお荷物だというのにその上で危機的な状況だろう斥候部隊の救助などできようはずがないのだ。
無論、ビュウメスとて助けにいくことが最善策ならば迷わずにそれを実行しているだろうが、現在のすべきことは安全なうちに生徒達を守ることだ。もっとも、ビュウメスも正直に『お前らが邪魔だから助けにいけないんだよ』などと言えよう筈もないので、救助の為にはリスクが大きすぎること生徒逹を護ることが最優先のことを伝えた。
「腑抜けたことぬかすな!斥候部隊にはノブキいた、それを助かるかもしれねぇのに見殺しにするってのか!」
そうビュウメスに反発したのは勝俣だった。勝俣は最初の日本に戻りたいという動機は不純だったが透輝を亡くしたことで自分が戻りたいという強い願いの結果透輝を亡くしたのではないかと悔いて他の仲間がいなくなるということに神経質になっていた。
「君たちの言いたいことは分かるが我々とて万能なわけではないのです。ここで更に犠牲がでれば貴方達の帰還への道のりが遠のくどころかここでの選択によって無駄な哀しみを背負うことになりますよ……」
「それは……」
ビュウメスの冷たく突き放すような言葉に勝俣だけでなくノブキのことを心配していた者達も俯き黙り込む。ノブキのことを心配はしていてもやはり自分の命を危険には晒したくはない、そんな身勝手さを感じて自己嫌悪に陥っていた。
「納得できないのはわかります……恨んでくれても構いません、ですが貴方達を守ることが引率者である我々の使命。大人しく撤退してもらいます、本来であればこうしている時間さえ惜しいのですから」
ビュウメスによってクラスメイトを見捨てることになるという判断をせざるを得ないことになった生徒達は後ろ髪を引かれるようにノブキの声が聞こえた方角に視線を向けた。そして、大多数の生徒達が撤退するという決断を決めた時だった。
「本当に……こうするしかないの?」
麻枝玖甜……彼女の呟きは通常であれば感じ取れないほどの声量であったが、その言葉は他の生徒達の心を酷く抉った。
ブックマークをそのままにしてくれてた方々には感謝しかないです、本当にありがとうございました。今後とも執筆を頑張っていきますので……




