勇者が来た、たまげたなぁ
遅れてごめんね
憂は浮かび上がったステータスに表情を固めた。
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保梨奈 憂 17歳 ランク:36
適正職:聖女
筋力:36
体力:70
敏捷:36
最大保持魔力:810
精神力:100
防御力:36
防魔力:100
<スキル>
聖魔法・支援魔法・魔力回復速度上昇・全属性耐性・言語理解
<称号>
男の娘
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広間にいた者たちは水晶の上部から出ているステータス画面とも呼ぶべきものを見て静まり返った。透輝としては友人である憂が『聖女』という明らかに格上そうなジョブについたことは喜ばしかったがまさか『聖女』だとは思いもしなかった。しかし憂に関しては適正職だとは感じた(女装すれば)。一つあげるとするなら憂が異世界召喚の中心になるだろうことか、透輝としては自分はアニメで言えば真っ先に死ぬだろう!なんて広言しているので残念などではなかったが。
ステータス画面を出していた水晶がステータス画面の表情を止め『ヴヴヴィーンッガッガッガッヴィーン!!』とまるで写真印刷のような音をあげると水晶からポトリと一枚のカードが落とされた。
「せ、聖女様…その『ステータスカード』をお取りください。貴方様の身分証となります。」
魔術師団長の男は水晶から吐き出されたカードを指していった。まさか彼も一人目から聖女が見つかるとは思ってもいなかったし、自らが召喚した存在とあって誇らしくもなった。
「ホハッ?聖女?僕がァ聖女ナンデ!聖女ナンデ!」
憂は物凄く混乱していた。自身が勇者などの高名な適正職につけるとは思っていなかった。憂としては恋人である鈴風涼香のことを守れるような力強いものでありたいと願ったのだが結果は『聖女』、しかも憂は男だというのにである。
実はこれには称号<男の娘>が関わっていたりするのだが。混乱している憂にはそんなことは頭に入らなかった。首をブオンブオン揺らし、さながらのブレイクダンスのような有様の憂に見かねたのだろう。憂の恋人である鈴風涼香が憂を抱きしめてついでにステータスカードを持ち去った。
「ほら、憂こっちおいで。私は…嬉しかったよ?憂が私のことを大切にしてくれてるって。」
「涼香ちゃん~。」
涼香は憂を抱きしめながら透輝と麗菜の方に帰ってきた。そしてまた空間に沈黙が支配することとなった。周りからすればまるで告白に破れた女子同士の慰め合いの様に見えていた。
「…他の皆さんもステータスカードを作成してください。こちらの世界での身分を証明するものとなりますので。」
魔術師団長はそう言うが先程の憂を見てステータスカードを作成したいと思う者は少ないんじゃないのか、透輝はそう思っていたのだがすぐに次の挑戦者は現れた。
「では、私からお願いします。」
霹靂神 時雨だった。憂の『聖女』の適正職が出たことで大した適正職に就けない可能性が高いにもかかわらず水晶台座に向かい水晶に触れた。
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霹靂神 時雨 17歳 ランク:42
適正職:勇者
筋力:100
体力:100
敏捷:100
最大保持魔力:300
精神力:100
防御力:100
防魔力:100
<スキル>
聖魔法・全属性適正・剣術・魔力回復速度上昇・全属性耐性・複合魔法・状態異常耐性・気配察知
複合魔法・言語理解
<称号>
異世界の勇者
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チート二人目だった。「おおおッ!!」と広間が浮足立つ。クラスメイト達からするとやはりかといったところであった。なにせ転校初日からあれだけの存在感を出してきた相手なのだ。
しかし、本来であれば一人であるはずと言っていたのだがどうゆう事だろうと疑問が生じた。
「い、いや有り得ない。私のじ…力じゃ…そんなことは…。」
魔術師団長の方を見るとどうやら混乱している様だったが、他の広間にいる者たちからは概ね歓迎ムードであった。しかし、王であるトルクと宰相のチャルドは困惑顔だった。
「きた!きた!メイン勇者きた!これで勝つる!!」
「も、もしかして俺でもチート職就けるンじゃねーか?」
チートになれる可能性があるということが分かったせいか沸き立つ思いを抑えきれなくなったクラスメイト達特にクラスでのカーストが高めだった者にはその傾向が強く出ていた。
彼らからすれば異世界召喚されたからには異世界を無双し、成功者としての将来の姿でもみえているのだろう。先程の「力あるものは一人だけの可能性」とやらも二人目がでたからには信憑性が薄くなり、ならば自分がチートを持っていないのはおかしいという結論にでもなったのだろう。
そんな中で現状に冷めているのは透輝だった。透輝は自身にチートの可能性なんか信じていなかったし異世界でのハーレムなどは作りたくもないと考えていたのは彼くらいのものだったろう。もちろん透輝にハーレム願望がないわけではないのだが、複数の女性に囲まれたら尻に敷かれて肩身の狭い思いをするかどこぞの某誠さんみたく刺されるのがオチだと考えていた。
そんなことをボーっと考えていた透輝だった。