パトラ、親の黒歴史大公開!
『初めましてこんにちは!私こそがこのダンジョンの管理者『大賢者』です。今回は皆さっまにご報告がございま~す!』
突然の大きな声に驚く透輝だったが原因はもちろん透輝が作動させた紋章によるものだった。妙に陽気そうな若い男の声に思わず顔をしかめる透輝だったが、それ以上にパトラが死んだ魚のような目をしていることが気になった。
「なあ、これって……。」
パトラは透輝の言葉に反応せずに虚ろな表情を浮かべて現実から逃避しているのが透輝にもわかった。自身の短慮でこのような事態を招いたことに罪悪感を感じるが無情にも大賢者のスピーチは続く。
『それはね、それはね……。なんとなんとォ、ダンジョンの閉鎖で~す。』
おちゃらけた声で大賢者の声が響き渡るが、パトラからの聞いていた大賢者の性格が余程悪いことを再確認する透輝だったが、その前に光が目から失われていくパトラをどうにかしなければと透輝はパトラに近づく。
『いやさ、もうこのダンジョンは必要性がなくなっちゃったんだよねえ、皆さんもこんな危ないものなんて必要ないでしょう?冒険者が必要とするって?知らんな……。』
「パトラ、大丈夫か~。生きてる~?」
『黒歴史……。』
カリスマガードの姿勢をとり『うう……。』とプルプル震えながらうずくまる姿のパトラに思わず萌えた透輝だったが、とりあえずパトラに覆いかぶさるように抱きしめた後に二人共動きを止めて顔を赤くしていた。透輝は意外と自分に行動力があることに驚いたが、悪い気はしなかった。
大賢者の放送は続く、終業時間前の店舗音楽みたいなのも放送で流されてきた。
『本日までのダンジョンのご利用いただきありがとうございます、実験道具としてとても有意義な時間でしたが本日をもちまして当ダンジョンは閉鎖となります。つきましては、現在ダンジョンにいる方々はダンジョンの閉鎖に伴い生き埋めになってもらいますぅ。嘘ポーン!驚いた!?ねえねえ!?』
放送が続くたびにパトラの精神はどうしようもない恥辱と怒りが増していく、血統上の『父親』でもあり、復讐をした相手でもある存在が今更ここで精神ダメージを与えてきているのだから、例えるならば、
たまたま行った遊園地で積年の復讐相手を見つめたものの、その相手がソフトクリームを落としてガチ泣きしているところを見せつけられたかのような気分だった。
『現在ダンジョンにいる奴は強制転移だお、ついでに今までの死体とかも転移するお。大賢者さんってやっさし~、超すごい!大賢者は偉い偉い……ゆうてみ?』
うざたらしい大賢者の放送と共にダンジョンの揺れはもはや、立ち上がることのできないレベルまで悪化し、ダンジョンの変化を伝えていた。
「な、なあパトラ?これって本当にダンジョンの閉鎖の紋章だったのか、だとすれば俺はとんでもないことをしたとゆうコトになってしまうんだが……。」
正直いって、こんなふざけた放送とともにダンジョンの閉鎖とか馬鹿らしいことこの上ないのだが、コントロールルームにいるわけだし崩壊とか自爆をするわけではないから自分とパトラは無事だろうと透輝は検討をつけていた。
『ふざけた感じだけど……ダンジョンの閉鎖にはなると思う。流石にこれはひどいけど__。』
「マジすかぁ~」
そうして、そのあとも十分ほど大賢者の話は続いたがとうとう終わりの時がきたようだ。
『では、閉鎖の準備も整ったようだし、それでは皆様御機嫌よう!』
その瞬間から一際、強くダンジョン全体が揺れだしストワール王国を悩ませた『大賢者のダンジョン』は姿を消した。ダンジョンの内の冒険者達、そしてかつてダンジョンの中で息絶えた者達の骸や遺留品なども全て転移によってダンジョンの外へと叩きだされることとなった。
これを作動させた透輝、並びにパトラはしばらくの間、放心状態に陥り呆けていた。
「…………ダンジョンからでていくとして現状抜け出すにはどうしたらいいんですかね?」
放心から回復し、パトラにダンジョンから地上への戻り方を申し訳なさそうに聞く透輝にパトラは頭を振りかぶって無駄な思考を振り払い平静を取り戻そうとする。この際、上のダンジョン部分のことには目をつむっておくことにしたようだ。
『少しは反省してよ?……ここには影響はないから大丈夫だと思うけど』
「悪かったとは思ってる。」
そこは素直に頭を下げる透輝、まあ間違いなく悪いので当然といえば当然なのだが……。パトラは透輝が少なくとも悪かったと罪悪感を抱いていることが分かったので大きく息を吐いて透輝のことを正面から見据える。そんなパトラに透輝はタジタジで怒っているのだろうかと不安な透輝は……。
「すいません。許してください何でもしますから……。」
『ん?今何でもするって言ったよね?』
今までの怒っていたかのような雰囲気は消え去り、ニッコリと微笑むパトラに思わず頬を少しヒクつかせた透輝にパトラは今度は抑えきれないといったように笑い出した。それにつられて透輝も笑い出すいつかの時の焼き直しのようなやりとりにおかしくなってしまったのだ。
『そんなに怒ってはないから気にしないで、そもそも透輝に神格を高めてほしいってお願いしたのは私』
パトラは笑いながら目尻に溜まった涙を指でぬぐい取りながらも今だ笑う。
「いやまあ、そうなんだけど謝ってしまうのは国民性みたいなものでして?」
『そーなの?』
「多分な……でどうやって出るんだ?」
パトラは部屋の真ん中に移動するとその中央にあった野獣の銅像を思いっきり蹴り飛ばした『ドガァ!』ともの凄い音が鳴って像が粉砕☆された後にパトラが野獣像(元)の台座をどかしてみるとそこに隠し扉の姿を見つけるのだった。
「そこは転移魔法陣じゃないんだ……。」
『この居住区自体がコンセプトが隠れ家的別荘だったから……。』
スタイリッシュに転移魔法陣で脱出とかしたかった透輝には拍子抜けだった。




