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不浄者は凶神になり斜めな成長する  作者: ジャック・レイ・パール
凶神発生
59/112

『パトラ』という少女Ⅱ

遅れてすいませんでした~!!

「えいえい!エタッた?」

「エタってないよ?」

エタないよ!

 ある時から『父親』が少女の元にくることがまばらになった。別に『父親』についてはそこまで思い入れがあるわけではないが、それでも刺激のない退屈な日が増えた。今までは不満がなかったのにどうして知識があるというだけでこんなにも違いが出たのだろうと少女は不思議に思う。




「Yahoo!元気してるぅ!?って目つき悪うぅ!?ほらぁ、どこはスマイルッスマイルッでしょ?あ、やっぱいいやそれはそれでなんか怖いし?ってなんてな」


 久しぶりのいつにも増してうざったい『父親』に少女は実験槽のなかであっても視界が濁ったように感じた。正直言ってこれしか外的刺激がないことに泣きそうにすらなった。泣いたところで何かあるわけでもないし泣くわけはないにだが……。



 『父親』は最初こそ、いつものように軽薄な雰囲気で少女に接していたのだが、一周ガラスの実験槽を苦悩の表情で回ると軽薄な雰囲気は消え去り緩んだ空気は霧散した。『父親』は怜悧な視線で少女を見つめて右手の人差し指で実験槽を『コンッ』と軽く叩く。


「さて、最近はお前のとこ来なくて悪かったなあ……。ほんのちょっぴり愛着ができちまったみたいでな、殺すのが躊躇われて……。少し距離を置きたかったんだ、お陰で覚悟は決まったよ一応は妻と私に血のつながりがあるお前を今日『屠殺(とさつ)』する。」


 感情を含ませない冷淡な声音で淡々と語る『父親』に少女は何も感じることは無かった。いつものうざったい『父親』が今はモノとして少女(自分)を見ている、どう反応すればいいのかわからないだけなのかも知れないがその時点では少女はその『父親』に対して発生してから初めて無関心ということを学んだ。


 『父親』のことがまるで今日は他人事のように感じられた。



 『父親』は惰性で動いているかのような緩慢な動きではあったが、少女をガラスの実験槽から取り出すべく実験槽近くのコントロールパネルを操作して少女のいる実験槽から培養液を排出していく。


 培養液が排出されれば、必然的に実験槽を空気が侵入してくると同時に少女を支えていた浮遊感も喪失することとなった。


「……あ、……ああ?」


 初めて触れる外気を肺の中の培養液を吐き出すために咳き込みながらも空気を取り込み少女はその声帯で赤子にすら劣る声量で産声をあげた。『父親』はそんな少女を見ながら眉をひそめるがコントロールパネルを操作して今度はガラスの実験槽が下へと格納された。うずくまり、動かぬままの自分の『娘』を見下ろして大きく息を吐くと少女に近づいて無造作に少女も長い髪を掴み引きずっていく。


「ッ_____!!」


 少女は痛みから声を発するが『父親』の顔は能面をつけたかのように変化することはなく無表情に少女の髪を掴みながら引きずっていく。『父親』はわざと『娘』である少女をモノ扱いすることでこれから自らが執行することに対しての罪悪感を紛らわせようとしていたのかもしれない。


 少女は『父親』に引きずられながらも身動(みじろ)ぎすることはなかった。正確にはそれすらできないのだ、少女が発生したのはガラスの実験槽の中、それからずっとその中に囚われていた少女は体を動かすということを知らないと同時に体を動かすだけ発達していなかった。その為『父親』に引きずられながらも動くことすらなく、何処かに体をぶつけるたびに息が漏れるような声をあげることしかできなかった。


 そんな、少女の心中は諦観というのがもっとも相応しかった。自意識が目覚めた時には既に一人で他に知っている者といえば一応の血のつながりがある『父親』しか知らない。その、『父親』が自分のことをどうしようと反抗することもできやしないのだからと少女が諦めてしまうことも仕方がないことだったろう。


 『父親』はそのまま少女を引きずって移動して到着したのは、巨大な実験道具が立ち並ぶ場所だった。髪を引っ張られたせいで頭皮がジンジンと疼き痛みを訴えていたが全身が重く腕すら持ち上げることのできない少女にはどうすることもできはしない……。


「……。ここまで来れば、お別れはもうすぐそこだ。お前のは名前のひとつでもつけときゃよかったかと今更だけどな……。そう思うんだよ。」


 カツカツと巨大な器具の粗末な階段を登りながら話す『父親』に少女は何も反応をすることはない。そのことに『父親』は悲しげに肩をすくめると少女の引きずっていた髪から手を離して肩に担ぐように少女のことを持ち上げた。どうやら、器具の頂点にたどり着いたらしい。


 その巨大な器具の頂点は口が開いており、中には刃が数えるのも馬鹿らしい程に並びそこに投げ込まれればまず助からないことは容易に判断できた。分かり易くするならシュレッダーといった感じだろうか違うのはその刃が縦横無尽に敷き詰められていることだ。


「助かりたいって思うか?まあ、そう思ったところでどうしようもないんだがな……。」


 『父親』は少女にそう語りかけてきたが、「助かりたい」などとは考えてもいなかった。

 別のことを考えていたわけでもなかった。ただ、その少女の思考は何も感じても考えてもいなかった。


 少女のことを殺すために器具の千刃が動きだす。


「…………こう言うのも変だが、お前の死体は有効活用するから安心して死ね。」



 そう言って『父親』は肩に担いでいた少女を投げ込んだ。



 グシャッと湿っぽい音が聞こえた後はニチャニチャとした音が空間に響いていた。



『父親』はそれを無言で見つめていた。


透輝「ギャグどこじゃーい!」

パトラ「次回もないかもね」

透輝「!?、しっかり構図しろよジャック!!」

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