情けないでしょう、流石は『凶神』だみっともなさが違いますよ!
無計画なんで思ったように進もうとしません
その後も、パトラは自身の体の感触を確かめていたが透輝がそろそろ悟りの極地に至りそうな目で見ていることに気づきほんのりと頬を紅くした。
「紅くならんでいいから、ちょっと服着てくださいませんかねエ……こちとら男ですのよ?」
『……トウキが魅力を感じてくれてるのが嬉しくて。』
抱きしめたくなるような可愛いことを言ってくれるが、全裸だ。そろそろ妙な罪悪感から解放して欲しい透輝はジト目でパトラをみているとパトラから血霧が吹きだしそれが衣服に変化する。
「ファッ!?」
『どうかな?』
パトラは透輝の感触を確かめるように念話で聞いてきた。
パトラの衣装は控えめながらも可愛らしさとエルフっぽさが目立つデザインだったが、それはまあ置いておく、透輝を驚かせたのはパトラが透輝と同じように瘴気から衣服を創り出していたことだ。
「お前も『凶神化』できるってことなのかパトラ……?」
透輝がパトラに問いかけるもののパトラの表情は無粋だなあとでも言いたげに歪む。
『せっかく頑張って考えた衣装を披露してるのに感想がそれなの……?』
「……いや、ごめん。うん可愛いよパトラ可愛い可愛い。」
ムッとした表情のパトラにうつぶせの情けない格好で透輝が慌てたように褒め称える。とってつけたかのような陳腐な褒め方だったがパトラは透輝の感情を読み取ることができるため言葉以上に透輝がパトラの容姿そして服装に好感を持っていることが伝わっていた。
『……いや、その……うん、わかってくれればいい……うん。』
透輝のセリフは陳腐なものでもパトラは透輝の好意が伝わっているため透輝の顔を見ているのが恥かしくなり顔を背けた。一方で透輝は自身のセリフが陳腐なものだったのは自覚していたのだがパトラが予想以上に好意的になってくれていたので安堵と褒められ耐性低すぎじゃあないか……と感じていたが思い違いのことには気づいていない。透輝の感情がパトラに伝わっているからこそパトラは照れてしまうのだ。
「あ~、それでもういいかなパトラ?」
『なにか用かな?』
パトラは今だに頬を少し紅くしつつも、透輝の問いかけに応える意思を見せた。
「動けないので助けてくだしゃあ」
うつ伏せ姿勢で情けない声で少女に助けを求める透輝、これが『凶神』という邪神の類だといっても誰も信じはしないだろうといっても過言ではないほどみっともない姿を晒していた。
本来であれば透輝とてパトラについてのことを本人に質問をしたいところだが、みっともなく地面にうつ伏せの状態でそんなことを優先しようとは思わない……せめてちゃんとした場を設けたかった。
『ごめん……私のせいだね。この先は『大賢者』の居住エリアだから、ゆっくり休んでいけると思う。そこまで運ぶね?』
そう言うとパトラは透輝に歩み寄り透輝のことを抱きかかえる……お姫様抱っこで____。
「え、ちょっ____!?。」
同じ歳かそれ以下に見えるエルフ少女にお姫様抱っこされるという気恥ずかしさにパトラの香りにドキリと高鳴る胸が恨めしい……。暴れようにも動けずにいたが、ふと見ればパトラの横顔をみることができる、秀麗な顔立ちながらも可愛らしいパトラに抱きかかえられているという事実に胸が高鳴ってしまう透輝……。ヤダ、胸がファイナルエクスプロージョン(野菜王子自爆)しそうなくらいだった。
現状としてはパトラと触れ合うことができてうれしいのか男として情けないと感じるような感じだったがパトラと一緒にいることができて人肌を感じることができることは透輝にとって嬉しく感じることだったのは間違いはない。
そして、それは透輝の感情を読み取ることができるパトラに筒抜けになっていた___。
「あれ、パトラ?耳赤くなってないか?」
そういった変化を目ざとく察知するのが透輝である。今までにいくつの地雷原を歩いてきたのか……そして今回も漏れなく地雷であった。
『トウキがね……動けないのは魔力の急激消費が原因でね?私が顕現するにはトウキから莫大な魔力が必要でねそれが原因なの、それでね魔力が足りなくなりそうだからね魔力徴収するね?』
矢継ぎ早に話しながらもどことなく怒気を漂わせるパトラに「あ、やべった?」と透輝は今更ながらも気づくが手遅れのようだった。
「そ、それってどうなるんだ?」
恐る恐るといった感じで何故かニコニコと笑顔のパトラに問いかける。
『ちょっと多めに貰うから気絶しちゃうね?』
可愛らしく微笑むパトラだが、言ってる内容は彼女の腕の中で……お姫様抱っこされた中でみっともなく気絶しろということだ、ただでさえ恥ずかしいのにその上で気絶しろというのかと透輝は不満には思わずとも折角パトラとこうして出会うことができたのにも関わらず彼女と過ごす時間が減るのが嫌だった、今まで一人だった所にようやく人肌というものに触れ合うことができたのだ。
元々小物の透輝は強がっていてもパトラの声だけで孤独感から耐えてきたというのに……最初はパトラは自分の孤独感にさいなまれない為の防衛のための別人格だとさえ思っていた。強くない自分のことを慰めるための別人格のように、しかし、そのパトラと出会えたことに心見せずとも心震えさせていたというのに気絶別れしろというのかと透輝は思う。感謝したかった、君のお陰で少なくとも暗い気持ちになることはなかったと孤独感に陥ることなく救われたとこうしてちゃんと出会うことができる前より好きになったと彼女の腕の中でもいいから伝えておきたかった。
実のところそれらが筒抜けになっていて、恥ずかしくて顔を真っ赤する前に透輝に気絶して欲しいのがパトラの心情だったりするのだが、透輝もそれを知ればお互いに顔を赤くしたことだろう……。
『それじゃあ、魔力もらうね?』
「ちょっ!?せめて一言だけ……」
透輝は慌てる、パトラにはせめて一言でいいから伝えたかった。
『なに?』
パトラも一応情けとして聞いてくれるようだ。
「ありがとう……」
それを伝えた瞬間、パトラは透輝から顔を背け透輝は急速に自身の意識が沈んでいくのを感じたのだった。
透輝の意識がなくなったことを確認して、パトラはすぐに顔を真っ赤にした。なにしろパトラには透輝の感情は直接伝わってくるのだ、顔が真っ赤になりそうなそんな中で必死に顔色を隠し透輝にバレぬようにしていたのだ。パトラは透輝を一旦地面に降ろすとパトラ自身もうずくまる。
「~~~~~~~ッ」
声に出さずうずくまりながらも歓喜に身を震わせるパトラ……彼女には透輝の感情が伝わっているのだから透輝には悪いと思っているが全部わかっているのだ透輝の思いがそれが気恥ずかしさゆえに透輝から魔力を奪い気絶させた理由だった。パトラにとっても透輝は救いを与えてくれていた感謝してもしきれないしそのことで好意を抱いてさえいた、そこでさらに透輝の好意まで伝わってくるのだからまともな対応などできず透輝には気絶してもらったのだ。
それから数十分ほどパトラは歓喜にうずくまっていたが、立ち上がりブラックウーズの残りカスから出てきていた人骨の方に移動すると蔑むような視線を向けていた。コレにも彼女は一言言っておきたかったのだ。
「さようなら、オトウサマあなたの最期から先は苦しみに満ちたものだったでしょう……?」
そう言うとパトラは透輝を抱えて、ダンジョンの更に奥へと進んだのだった。
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