凶神VS触手のブラックウーズ
男の触手プレイとか重要ねーから!!でも屑勇者の触手ざまあはみてみたいかも
黒く輝く凶神の刃『禍刃』でブラックウーズから繰り出される触手プレイ用途の触手を輪切りにしつつ、透輝はこの状況をどうすれば打破することができるか考えを巡らせる。今は透輝が活動できるだけのスペースがあるがブラックウーズは巨大だ……その気になれば透輝の動くことのできる場所をなくし捉えることも可能だろう、それをしてこないのは単におつむが足りていないだけだろう。
「なははは、ピンチってか?異世界に来て従姉の描いたBL本みたいなシチュエーションになるとはなぁ、だが触腕になんて絶対に屈しないッ!」
それはフラグだ___。
透輝がいくら『禍刃』でブラックウーズから繰り出される触腕を切り伏せていこうとも、その端から再生してくる。『凶神化』している透輝の体力はほぼ無尽蔵に等しいがこのままでは……。
「く、ジリープアー……?」
こんなことになるなら、事前にパトラから前知識でも、もらっておくんだった、と後悔するがどうしようもなかった。しかし、『凶神化』するとパトラと連絡はとれないし、現状『凶神化』を解除すると触手プレイに移行しかねない。
「なめんじゃねーぞ、不定形野郎ッ!」
透輝は苛立ち、『禍刃』に瘴気の力を纏わせる。いつの間にか身につけ、そして扱えるようになった謎のものだが生物に限りなく有害なことは今までのことで分かり切っている。透輝から溢れ出る血霧の瘴気を浴びた生き物は皆苦しみを味わい右往左往することになっていたのだから。……多くの場合、意図せず瘴気を漏らしてしまい苦しんでいる存在にまるでお漏らしで周囲の人々が死に絶えていくようで透輝は常に申し訳なさそうにしていたのだが、今回は別だ。
「必ず殺すッ!!」 『禍刃』+『瘴気纏』
紫紺の目を爛々と輝かせ、透輝は禍刃に瘴気を込めてそれを振り下ろすッ__!!
振り下ろされた直線に血霧が真っ直ぐに通り、ブラックウーズに接触した触手や胴体の血霧接触部分から血色に爛れ腐り落ちるかのようにブラックウーズがボロボロと崩れていく……。
「やったか!……あ、やべ」
おもわず、自分でフラグを乱立させる透輝。ツッコミ役がいないので寂しくもあるが、少なくとも今回のフラグは……
『_____ッ!ッ!ッ!!!!』
成立したようだった__。
ブラックウーズの声にならない悲鳴なのか怒号なのか、ブラックウーズがその粘魔の体を大きく震わせ激情に身を委ねる。暗闇のように黒い体を大きくジュクジュクと流動させる動きに透輝は生理的嫌悪感を感じるが、それは透輝によって傷つけられた部分に新たな構築をするためだった。そして損傷した部分をどうにか再構築するとジュクジュクとした流動が更に激しさを増して、一時的に透輝に押し寄せるのを止めていた触手がブラックウーズからブツブツと盛り上がり更に倍近い数に増えて透輝に襲い掛かる。
「!?、この数はッ!」
透輝は『禍刃』に瘴気を込めるのに時間が必要だったにもかかわらず、増大したブラックウーズからの触手に対応するだけで手一杯になる、押し寄せる触手を前にうんざりしながらも切り伏せて切り伏せて切り伏せまくる。
いっそのこと瘴気をたれ流せばいいのだろうが、透輝はその術を知らない。任意で一部分に瘴気を集めることはできるがそれを垂れ流すようにするのは気分的な問題であり、もしも垂れ流すことができたとしてもその行為は例えるなら夢の中での放尿行為に近かった。気分がいいのだが、それと同時にやっちまったという後悔を齎すのだ。好き好んではやりたくなかったので任意で瘴気をまき散らすことができなかったのだ。実のところおねしょに近い。
数多のブラックウーズの触手相手に善戦していた透輝だったが、徐々にブラックウーズは透輝が活動できるエリアを狭めつつあり、その結果として触手の密度は上昇していた。本来ならば粘魔種には魔法こそが有効だったのだが、そんな攻撃魔法なぞ透輝はもっていない<不浄魔法>で『ブッチッパ』したり『オッパゲドン』なんて使用したところでなにも意味なぞもたないのは明白だ。そもそも、『オッパゲドン』はスライムに胸があるのかすらわからないため効力不明だ。
透輝に余裕があれば面白がってためしたことだろうが、残念ながらそんな精神的な余裕を透輝はもっていなかった。いくら『凶神』となったところでその力をふるうのは透輝だ、ただの高校生が異世界にきて精神をすり減らすことになれていようはずがなかった。たび重なる精神的な負担に次第に透輝の動きも精彩を欠いていく、その結果は……。
「な!?」
透輝がブラックウーズの触手に捕まるという結果をもたらした。
「何すんだおまっ・・・流行らせコレ!(はなせコレ)」(ステマ)
左腕に絡まるブラックウーズの触手に嫌悪を抱き、なんとか振り払おうとするもののそれを外せそうにはなくむしろ、他の触手に捉えられないようにするのに必死だ。
「ウザってぇ・・・!」(激怒)
そうしている間にも、透輝に絡まるブラックウーズのスライム触手は増える。
「流行らせ(はなせ)コラ・・・流行らせ(はなせ)コラ!」
そして、ついには透輝に絡まる触手が左腕、右足、左脚の三本となり透輝の動きはかなり制限される……。一体誰が異世界に転移した男が触手に捕まるようなことを想像しただろうか、需要は限りなく低いだろうと言わざるをえないが、少なくとも透輝はブラックウーズの触手に行動を阻害されるほどに触手が絡まっていた。
ブラックウーズは透輝に対しての勝利宣言だろうか、今まで苛烈に触手を繰り出したというのに、現在は透輝に見せびらかすようにユラユラと触手を遊ばせていた。
そんなのは捕まえたのが美少女の時の対応だろうが……と思いつつも透輝は絡みついている触手を『禍刃』で切り離そうとするがせん断することがかなわなかった。
『ッ_____!!」』
透輝の驚愕したことを察したのか益々とその動きを増して嘲るかのように触手を遊ばせるブラックウーズ……。
「馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!!」(天下無双)
その姿に透輝は苛立つが、それよりもなぜ先程までブラックウーズの触手を切ることができた『禍刃』が今は触手を断つことができなかったのかが気になった。とはいえ考えている時間はそうはなかった、はやくしなければブラックウーズによるノクターン行きに直行行為が始まることだろう__!
「なぜ、『禍刃』が効かないんだ……。それさえわかれば……。まさか!」
『禍刃』は透輝の<粘魔生成>と<蟲毒法:硬化>を合わせて作り上げる凶神の刃だ。その構成は透輝の魔力で生成したスライムを魔力を使って<蟲毒法:硬化>を発動させ固めたものだ。単純な構造だが、透輝は<不浄魔法>のトイレ設置によりこの異世界に住む住人達の排泄物中の魔力を集めさらに<三重之穢>で純度をあげた魔力を引き出すことでほぼ無限の莫大な魔力扱うことができる。つまり『禍刃』には非効率なまでな尋常ではない魔力が使用されているのだ。
その切れ味が落ちているということは、その構成密度が低下していること以外有り得ない。
「この真っ黒くろ〇け野郎!魔力を吸っていたのか!?」
透輝はその可能性に行き当たり、驚愕するが、次第に下を俯き嗤いはじめる。
「クハ、くははははははは!!!!なんだ簡単なことじゃないか!なんて間抜けだったんだ俺は!」
そう、透輝は忘れていたのだスライムの生体を……。本来のスライムとは核に粘性の体をもつ魔物だ、その種類、生態は様々なものだが数ある共通点の中の一つに魔力を求めるというものがあった。無論、多くの小型種は空気中の魔力が多い場所にいるなどその程度だが大型の物は自ら魔力を保有する生物に襲い掛かることもある。
なぜ、スライムは魔力を求めるのか。それは自身の生態活動、身体全てが魔力に大きく依存しているからに他ならない。体を構成するものも動くことにも食物を消化するにも分裂し数を増やすこと全てにおいて魔力に依存し存在を維持しているのだ。
ブラックウーズはその中でも魔力吸収に優れた種なのだろう、広大なダンジョンボスの一室をその巨体で覆いつくしているのだから……。だが、そのことに気づきさえすれば透輝は__。
「くそスライム、お前に滑稽で哀れな最期をくれてやろう……。」
透輝は対処することが可能なのだ_____。
<粘魔生成>+<魔蟲創造:外骨格>選択『吸魔蟲』
そうして、透輝を覆うように生成されたスライムは<蟲毒法:魔蟲外殻>の効果によって透輝に纏われながらもその姿を変えていく……。そして、数十秒もすると透輝は深緑の甲殻を全身に纏う。
透輝を捕まえていた触手は透輝の創り纏った外殻に触れた時に溶けるようにして消え去ってしまった。
『ッ____!???』
ブラックウーズは混乱する、捉えていた獲物の拘束が急に消えたのだ。たいした知能はなくとも狼狽えることはできたらしい。
「さてさて、次はどうするんだ?」
透輝が纏ったのは<粘魔生成>」で生成したスライムを自身の体を覆って<魔蟲創造:外骨格>で変質させたものだ。本来の<魔蟲創造>では透輝の血肉そのものから魔蟲を創り出しそれを使役するのだが、スライムで血肉の代用ができる、なので応用として透輝自信をスライムで覆いそれを<魔蟲創造>で外骨格だけを創造することで魔蟲の能力をもった外殻を創り出すことができたのだ。
そして、透輝が創り出した今の外殻は吸魔蟲と呼ばれる魔蟲の外殻で、その名の通り魔力を糧として生きている魔蟲だ。もっとも吸魔蟲の本来のサイズは大きくて20mmほどでたいして大きくもないが、その魔力吸収力は侮れるものではなく野ざらしにされた魔道具などに押し寄せて一晩でガラクタに変えることすらあると言う。そのくせ死後は使い道も何もない厄介者の魔蟲だ。
本来であれば透輝がいくら吸魔蟲の外殻を纏ったところで魔力を飽和状態にするのがオチなのだが、透輝には外付けの魔力タンク<三重之穢>を持つことで無限に魔力を吸収できる。
「貴様の勝利は限りなくゼロだぜ……。」
透輝はブラックウーズに挑発的に嗤う。
『_______ッ!!!!!!』
ブラックウーズは透輝を捉えんと、触手を伸ばす。莫大な魔力をもつご馳走が目の前にあるのだ。それを喰らわんと触手を伸ばす!
……が、その触手は透輝に触れた部分から吸魔蟲の外殻により体の構成が高純度の魔力で構成されるブラックウーズは逆に魔力を抜き取られていく。しかし、ブラックウーズはその進行を緩めることはない逆に魔力を奪われれば奪われる程に透輝の魔力を求めて触手を伸ばして吸収されていく。ブラックウーズには魔力を失ったなら奪うという単純な思考回路しかなく哀れに滑稽な程に透輝に自らの身を晒し続ける。
「クク、はははははははは!!ゲホッゲホッ!(むせた)」
現在では自ら透輝に吸収され続け、次第にその巨体は縮みあがり初見のころの面影は消え去り枯渇寸前となった。ジュクジュクと弱々しくその後も透輝に触手を伸ばし続け。
ブラックウーズの最後に残ったのはねばつく黒いタールのようなものだった……。
「あっけないもんだったが……なんだこれ、<三重之穢>が反応している?瘴気に関係あるのか不浄のものなのか?」
透輝は疑問に思ったが、とりあえずブラックウーズの残骸はなんかばっちいと感じていたので手早く綺麗にできるかもしれないと<不浄簒奪>を発動させてみるとタールのようなものが血霧に変化し透輝に取り込まれた。
「ッ_____!?」
透輝が吸収した瘴気には莫大な思念をもっており思わず苦笑いしながら額に手を添えた。どうやら死に際に凄まじい感情をもっていたのか、それとも透輝が過剰反応したのかもしれない。
<不浄簒奪>でタールのようなものが取り除かれると後に残ったのは骨だ、恐らく人種のもの、ブラックウーズの体内にあったということは消化されずに意識だけ残ってたりして生かされていたとかだろうか。
「……まあ、怨念は取り除いたから達者でやってくれるんじゃないかな?」
結局、知らない赤の他人のことだし、どうでもよいことなのだ。さっさと立ち去ろうと透輝はその場から踵を返す。
が、そこで透輝は急に脱力感に襲われ地面に膝をついてしまう。『凶神化』は解除され更には魔蟲の外殻すら元のスライムに戻ってしまいうつ伏せに倒れてしまう。
「い…たい……なに……が?」
そこから更に脱力感に襲われ、透輝が発動した覚えもないにもかかわらず透輝の体表からスライムが生成されていき最終的には透輝の見覚えのあるスライムが形作られた。
「おま……えは……」
青色の体色のスライム……透輝の左腕を切り飛ばしたスライムだった。
一体正体は何なんだ!!




