レッドコングに捧ぐ静寂な世界
エタらないよ!安心して!
それから、透輝とパトラはスキルの応用などを探り、幾つかのバグのようなものを発見したあと『大賢者のダンジョン』を攻略し、パトラを顕現させるために拠点より出立をするのだった。
「クキックキャックヒャヒャヒャッ!!いやあ、ダンジョンの攻略か楽しみだねえ……。まさか自分がこんなバグキャラになるなんて思いもしなかった。そしてそれを使う機会に恵まれるなんてね、運命に感謝ってやつかな?」
拠点より出立して数十分ほど、特段の変化もなくかつてのベヒモスと出会った場所に到着する、前回の数分の一ほど時間と疲労だ。ステータス様様といったところだろう。
『トウキーご機嫌なのはいいケド油断はしないでね?』
「わかってらァね、心配性だなあ。大体どうすれば負ける要素があるのかが知りたいくらいだよ?」
『いや、そうじゃなくてね……。』
透輝はご機嫌だったが、パトラの心配そうな思念が届く、そもそも彼女が心配しているのは透輝が激情に身を任せてしまうことだ。透輝本人は気にしていないが感情次第で透輝は簡単に『凶神化』する、そうなると透輝との連絡が難しくなるし手間も増えるので透輝にはあまり感情を揺らしてほしくないのだ。
現に透輝は出立までに三度ほど『凶神化』しているその内の一回は故意のものだがあとは激情によるものだった。自らの意思以外で『凶神化』すると数十秒ほどだが透輝は感情のまま暴走するのだ、といっても瘴気のオーラをまき散らすとかそのくらいだが腐っても神格を得た存在のそれも系統としては邪神の暴走だパトラとしては地上でそれが起こると面倒くさいからやめて欲しかった。
そうして、更に数時間ほど移動すると様相が変化していた。蒸し暑くなり、辺りは鬱蒼としたジャングルっぽくなった。あくまでっぽいのは有り得ない形の植物があったり、そもそも、透輝がジャングルを知らないというのもある。
「随分と俺達といたところと違うな、向こうは蟲だらけで変なデッカイ魔物しかいなかったってエのに……。」
そうなのだ、今迄いた場所は岩肌剝き出しの蟲の死体カーペットだったが、ここは地面には土があり緑がある場所だった。こんな場所があると知っていたら、あのしみったれた場所からすぐにここに移ったというのに……。
『あの場所が殺風景(?)だったのは、仕方ないと思うよ……。あそこは実験場だから<蟲毒>について調べるためのね。結局、永い間放置されてベヒモスとかの例外がいたに過ぎないよ……。』
「……。どうした急に語りだして?ここは素直にどうしてそんなことを知っていると聞いてやるのが大人の醍醐味。お前全力で喋っていいぞ。」
『たまーに透輝がそーゆう喋り方するケドなんなのかな?』
パトラが不思議がっていたが、そこの部分を透輝は徹底的に無視して話を進めさせる。パトラも説明する気がないとわかると大仰にため息をするとあの蟲だらけの場所が……このダンジョンが何なのかを説明する。
『このダンジョンは実験場なんだよ。『大賢者』と呼ばれた男のね……もっともその男の最期はあっけないものだったけど実験場はダンジョンとして稼働し続けてる。あの蟲だらけの場所は『蟲毒』による強制進化を調べるための場所、ここは魔物の実験用の飼育場かな……。』
「なるほどな、いろいろと聞きたいが話はあとだな『感知』に反応がある。本格的な戦闘の始まりだな。」
そう言って透輝は笑う、なんだかんだでゴブリン以下の自分が今や『凶神』などというものになり初戦闘を迎えることになろうとは……。
「ホキョォォ____!!!」
戦闘態勢をとっていた透輝の前に現れたのは保護色って知ってる?と聞きたくなるような全身の毛が真っ赤なゴリラだった。隠れる気ゼロのむしろ見つけてみろやあ!と言わんばかりの巨大ゴリラが透輝に襲い掛かる!
が透輝は既に戦闘態勢だ『感知』では知りえなかったゴリラということに驚きはしたが、それだけだ。
「『粘魔生成』、『蟲毒法;硬化』____フッ!!!」
ドカドカと大地を揺らしながら透輝のことを排除しようとレッドコングは透輝に向かってくるが、透輝は慌てずスキルを併用し、その標的を定める__。
「ホキョッ!?」
右腕に纏わせるかのようにスライムを生み出し、そしてそれを刃状に変化させると硬化させ、その刃で一線!レッドコングを切り伏せた……。
ドスン__!とレッドコングの肢体は大地になげだされ、その命を終えた。
「なんだ、意外と大したことないんだな正直言って拍子抜けだぜこりゃ……。」
仰向けに倒れたレッドコングからどくどくと血が溢れるが、透輝はそれに対しての嫌悪感もない、やはり精神面でも変質が起こっているのか、それとも元からなのかはわからない。が、ただ言えるのは透輝は他者の命を奪うことに躊躇いがないということだけだ。
「それは、それで問題だよなあ……。」
『悪いことじゃないと思うけど、その躊躇いの一瞬が命取りになったりするものでしょ?それより、まだ感知に反応がいっぱいあるけど、どうする?』
そうなのだ、どうやら巨大赤ゴリラのせいで付近の注目を集めてしまったらしい。透輝はそんなに注目とかされたくないないタイプだったのでいい迷惑だ。
「決まってる__!皆殺しだァァァッ_____!!」
『粘魔生成』+『自爆』
注目を浴びたくないとはなんだったのか……。
透輝はスライムを15センチほどの球体で生成すると、それを思いっきり投げた
スライム弾は着弾すると地面を大きくえぐる爆発を起こしその爆発に巻き込まれた存在は等しく死んだ。
「ふは、ふはははははは!!!見ろ圧倒的ではないか!!これこそ『え、これ異世界ファンタジーだよね?ドラ〇ンボールの戦闘にしか見えないんですが……。』と本人ですら思ったが便利だから使っちゃう究極の暴虐の力だァ!!!」
『待ってトウキ!!落ち着いて!!『凶神化』しかかってるからぁ!!』
数十分後、透輝の波状攻撃によって爆発した辺りは平坦にならされ、生き物の音のしない静寂な世界が完成したのだった。
透輝「見ろ、なんて素晴らしい世界だ……。」
パトラ「ハイハイ、ソウデスネー」
透輝はドラ〇ンボールに片足を突っ込んだ!!
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