小凶神はスキルを把握したい
大賢者のダンジョンの攻略を決めた透輝とパトラだったが、急がば回れというし、あまり急いで攻略する必要もないとパトラから伝えられた透輝もそれには賛成だった。
そもそも透輝は自身の急激に上昇したステータスを扱えていないどころか新たに増えたスキルを把握さえできていない。とりあえず透輝は力の把握にひとまずは時間を割くことにするのだった。
パトラはいくつかのスキルは把握しているらしく透輝はパトラにサポートしてくれるスキルについては比較的容易に使えこなせそうなのはせめてもの僥倖だ。
ちなみに現在の透輝のスキルは
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<スキル>
不浄魔法・凶神魔法・特殊神聖魔法・粘魔生成・魔蟲創造・粘性体・凶神覇気
蟲毒法・凶神化・不浄簒奪・新生・感知・三重之穢・自動再生・自爆・異種交配・言語理解
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「さて、どのスキルから試すべきかねえ」
『勿論、じばk「言わせねえよ!!」……。』
パトラも冗談だったのだろうクスクスと笑い『じゃあ、異種交配とか?』と透輝に問いかけてきた。
「勘弁してくれ、この場所にいるのは人外ばっかだろ、俺の性癖は人外を相手にできるほど歪んじゃいないんだ……。」
二人共真面目にやるつもりはなのだろうかと思うかもしれない、実のところそれで正解だ透輝にパトラは真面目にやっていない今のやり取りは単なるおふざけなのだ。そのおふざけを終わりにするという意味もこめて透輝は表情を引き締める、するとパトラにもにそれは伝心し、二人の空気は張りつめたものへと変わった。
「さて、おふざけも終了っと」
『そうだね、じゃあ何から試してみるの?』
「そもそも、パトラが把握してるスキルはいくつなんだ?わかっているものから試そうと思うんだが」
『えーと、5つかな?粘魔生成、粘性体、新生、感知、自動再生だね。ああ、自爆もいれていいなら6つかも……。』
「なんで、自爆なんてあるのかねえ、どっからきたんだよ『自爆』のスキルは……。」
そもそも、なぜ大量のスキルを獲得できたのかすら不思議なところだが……。
『多分、自爆は私からの継承……。透輝が不思議がってるスキルは今のところ4種に分類することができるんだけど……。』
パトラの話によると、現在透輝のスキルで分類は<元々の透輝のスキル・パトラからの継承スキル・蟲毒蟲達からの継承スキル・凶神化の影響で解放されたスキル>に分類されるようだ。その中でパトラの完全に把握できているのは元々パトラの持っていたスキルだけだが、なんとか把握できるものを含めて5種となるとのことだった。
「なるほど、つまり俺はトイレに頭を突っ込んでた蟲達を吸収して得たスキルとパトラのスキルに神格を得た影響で獲得したスキルを持っていて、パトラが把握しているスキルそれが粘魔生成、粘性体、新生、感知、自動再生、自爆ってわけか自爆はともかくとして他のはよくわからんから説明を頼む。」
ステータスカードで確認してもスキルはどんなものかはわかるが詳細まではわからないのでパトラが理解しているものがあるならその方が安全性が確保されるゆえに透輝はパトラにスキルについての詳細を聞く。
そうして、透輝は自爆を除いてパトラに教授されたスキルを理解することに数十時間を費やしてなんとか扱えるようになった透輝だったが問題はここからだ……。パトラもわからずステータスカードの説明文だけが頼りとなる。
「とりあえず、危険そうじゃないやつからだな……。となると『魔蟲創造』かな?」
透輝はステータスカードを額にあて、『魔蟲創造』についての解説を探る。
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魔蟲創造:
自身の血肉と魔力を媒体とし魔蟲を創りだすことが可能となる
また、一般に存在する蟲を魔蟲と化すことも可能となっている、その場合には<三重之穢>から魔力と有機物を消費する
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「不安しかねえー……。まあ試してみっか『魔蟲創造』!!」
透輝が思い浮かべたのは天道虫だ、理由は特になんにもない…。天道虫をイメージしてみること数十秒……透輝に異変が起こる。
透輝の腕の一部が3cmほど天道虫の形に浮き上がると腕の肉を食い破って天道虫が現れた。
「ッ!痛って!!」
抉れた透輝の右腕部分は数十秒もすると塞がり元の姿に戻ったがスキル自動再生のおかげだった。天道虫は地面に落ちて『キチキチキチ』と鳴いていたが、痛みをこらえていた透輝にはそれが憎らしく見えた透輝は血走った目を向けて天道虫に怒りをつのらせる。
「この、くそったれがア!!ふざけたことしやがってェッ____!!!」
ふざけたもなにも自分の能力のことなので自業自得なのだが痛みと怒りで我を忘れている透輝に自業自得などということは頭になかった。そして、透輝の怒りがピークになったとき透輝の体から血霧が吹き出し辺り覆っていく……。
『ト、トウキ、落ち着いて!?』
「うるせえェェエ!!」
透輝の黒髪が徐々に銀髪に変わり、赤と青のオッドアイが紫紺へと色を変えた。『凶神化』だ……禍々しい血色のオーラを纏わせて透輝から暴力的な威圧感が発せられる。どうやら痛みとそれによる感情の揺れによって『凶神化』したらしい。透輝はその凶神の力をもって天道虫に怒りをぶつけようと目を向けると……。
天道虫は天に足を向けて既にこと切れていた。血霧……つまりは瘴気に触れ耐え切れなかったのだ。
「…………。」
急速に俺はなにをやっていたんだろう…………と賢者タイムに移行する透輝だったが、そこにノイズの混じったパトラの思念が届く……。
『ちょっと……トウ……早く凶……を……解除……。』
透輝はその思念に『ハッ』っとする『凶神化』しているとパトラとの思念での対話が上手くいかないのを失念していた……。透輝はその『凶神化』を慌てて解除すると辺りを覆っていた瘴気は消え透輝はその姿を黒髪に赤と青のオッドアイに戻すとパトラの思念が届く。
『まったく、もう脅かさないでよね?ビックリした……。』
「ああ~、悪い……。」
流石の透輝もこれにはバツが悪い……。まさかここまで簡単に『凶神化』をできるとは思わなかったのだが『魔蟲創造』の活用がこのままでは危ぶまれてしまう、どうしたものかと透輝は頭を悩ませるとパトラがある提案してきた。
『ねえ、トウキ『粘魔生成』を使ってみてよ』
「ん?『粘魔生成』かいいけどな」
『粘魔生成』を使用してスライムを生み出していく透輝だったが、いざそれを透輝本人から分離しようとしたところでパトラから『ストップ!!』と分離を止められた。
「……ッとと、どうしたんだよパトラ、ストップって。」
『トウキ、『粘魔生成』の説明覚えてないの?』
「どうゆことだ?」
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粘魔生成
魔力と必要分の栄養素を使い粘魔系魔物を生成でき体の一部としての活用も可能、個体の特徴なども自由に設定可能だがその分コストがかかる。
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『つまり、今の分離してない状態ならトウキは『粘魔生成』からノーリスクで『魔蟲創造』ができるんじゃないかな?』
「なるほどな、試してみる価値はあるな……。よしでは『魔蟲創造』!!」
すると透輝と繋がっているスライムの中から黒い点が生じるとそれがウゾウゾとうごめき最終的には無数の蟲となるのだった。




