異世界だよ、やべえよやべえよ
「放せェ!放せェ!…って」
光に呑まれた後も叫び逃げようとしたがとっくに手遅れだったようだと透輝は悟った。光は収まり今自分達はテンプレ感溢れるお城の中の場所に立っていたからだ。ただ違うとすれば。怒号飛び交う現場だったということだろうか。
「どうゆうことだ!人数がおかしい!」「これだから異世界召喚など反対を…。」
「堕ちた勇者の二の舞を起こすつもりか!」「やはり、こんなことはすべきでは…あ。」
「何者かに干渉された可能性が!」
盛大に荒れた空間にどこかわからない(ぜってー異世界だよと8割は思ってる)場所に連れてこられたクラスメイト達は百面相だった。
「落ち着きなさい!!あなた方は今この国の命運をかけた方々の前にいるのですよ、この国を支える者たちが揃って狼狽えることに恥を感じないのか!」
その言葉に怒号をあげていた者たちが口を紡ぐ、ついでにクラスメイト達も驚いて口をつぐんだ。
「申し訳ありません、異世界よりこの世界へと来訪しなさったあなた方にみっともない姿を晒してしまいましたね。私はストワール王国の宰相を勤めているチャルドだ。」
そう言って名乗りをあげたのは二十代ほどの女性だった。とはいっても異世界転移をしたクラスメイト達にチャルドの役職のことなどわかるはずもない、ただ漠然と偉い人なんだろうなくらいにしか思えなかった。
「あーあ、カッコイイセリフ考えてたのに使えないよね。こんな状況じゃあねえ。」
そう言ってクラスメイト達を見据えたのは十代後半程に見える物憂げな青年だった。どこか気怠げにしながらもその美麗さを損なうことがないいでたちだった。そしてその男と目のあった女子数人が頬を染める。現金だった。
「初めまして、異世界より来訪した者たちよ、ストワール王国の国王がトルスだ。君たちをこの世界に招いた者だ。よろしく。」
国のトップが出てきた。いくら馬鹿でも国王と聞けば国のトップだとわかる。
「って異世界!?やっぱり異世界なのか!?」
クラスメイトの誰かが叫ぶ、やはり異世界だと思ってはいたものの実際にそう説明されるのはやはり驚くことなのだろう。何人かのクラスメイトはこれから始まることに思いを馳せて目を輝かせている者もいた。
なにせ、異世界転移などという馬鹿らしい空想が実際に我が身に降りかかったのだ。今、自分達の目の前に広がっているのはそんな空想じみた世界、地球の高校生という立場から英雄やハーレム王などといった立場を築くことも不可能ではないのではないか、そんなことを考え今の自分達がすべきは異世界を生き抜く術であると思いいたった者から周囲の情報を集めていた。もし、この世界へと自分達を呼んだ者たちが自分達のことを奴隷のように扱うことも考えられるからだ。
そんな考えを何人もの者たちが考え沈黙をしていたのだがそこで沈黙を破られた。
「なんか、感じ的には俺の貞操は無事そうかな、や〇い穴はなしそうだ!フゥー!!」
透輝だった、転移の直前のことを思えば当然だったかもしれない。なにせ己の性別が不明瞭になりかねないことだったのだから。