巨大ムカデVSトイレ そして……
いつもよりは長いです、次回には最凶になります
バラバラになった魔物____。
本来であれば動くはずもない蟲の遺骸が動き出しベヒモスを肉塊以下の肉片に変えた。当の蟲の遺骸達はベヒモスを引き裂いた時点で糸が切れたかのように動きを止めた……。
「…………ッ!!」
透輝の心中は複雑だ、助かったという安堵になぜ蟲の遺骸が動いたのかという疑問そして、自分も襲われるかもしれないという恐怖だ。これらは透輝の脳内をグルグルと回っていたが体の激痛がそれを阻害した。
「なぜ、コイツらは動いた、なぜ俺は襲われない?今は……拠点に帰るべきか。」
透輝の身体はボロボロだ服もベヒモスにやられてボロボロになってしまっている。それに、何度も死に直面するような事態に遭ったのだ心の休息もほしい、それには拠点に戻るのが一番だ。
透輝は痛みをこらえながらも、拠点を目指して移動を開始した。
「あ、ん、が、ッあーもう痛い痛い痛い新しい扉が開いちゃう!!」(ビクン☆ビクン☆)
アホみたいだが、このくらいやっておかないと痛みに耐えきれないのと恐怖で発狂しないためだ。もややすでに透輝の許容は過ぎていた何がどうなっているのかわかりもしない、答えに辿り着くこともできやしないだろうとならば、少しでも自分らしくあろう。
要するに自暴自棄である。
そうして、~巨大赤ムカデ・トイレに頭を突っ込んで~ の姿が見えてきた。巨大ムカデはその巨体を変わらず便器の中に頭を突っ込んでいるが、今の透輝には恐怖でしかないこの巨大ムカデでもし息を吹き返すことがあったら……生存は難しいだろう。
じゃあ、どうするか……ちょうど頭突っ込んでるしトイレに流しちゃえ☆
「濁流に呑まれよ!『激流葬』!!」
なおセリフについてはカッコつけたかっただけ。
ジャバ―!!グゴゴゴ!!『ガン!ガン!ガン!』(ムカデが打ち付ける音)
「なかなか、流れんなーデカいもんなー細長いし、う〇こみたいにいかないのかなー。」
『ガン!ガン!ガン!』(巨大ムカデ)VS『ゴポゴポポポポォ!!』(最新型巨大トイレ)
「いけェトイレ!お前ならできるはずだ!NA・GA・SE☆」
『ゴポッ!?ゴポポポポポオ!!!』
タンクフリーの最新のトイレは自身に嵌っているムカデに激流を流し続ける、己の本分はなんだ!流すことだろう!ここで流さずに何を流すというのか!
『ゴポポポポォォォォォオ!!』
「いけェえェェェェェ!!」
ズリ…!ズルズル……ズルルルル!!『ゴポン☆』
「よっしゃー!」
遂に、ムカデはトイレに呑まれた、勝ったのだ、トイレは勝利した己の限界を超えて……。透輝は満足げにこれでやるべきことをやりきった感を出した。
その時……
『キチキチキチ』『キチキチキチキチキチキチ』『キチキチキチ』『キチキチキチキチキチキチ』『キチキチキチ』『キチキチキチキチキチキチ』『キチキチキチ』『キチキチキチキチキチキチ』『キチキチキチ』『キチキチキチキチキチキチ』『キチキチキチ』『キチキチキチキチキチキチ』
「え?」
再び息を吹き返す蟲達、その乾いた遺骸の体を動かす度に体は擦れて『キチキチキチ』と音を立てる。手のひらサイズのもの10m近い大型のモノそれが一斉に動き出し、ベヒモスの時でさえ動き出したのは一部のみだったにも関わらず今回は視界全ての蟲だ。
「うひッ!!」
キモい果てしなくキモい、視界にある全ての蟲(遺骸)が一斉に動き出しているのだ、透輝は自分の怪我のことも忘れて棒立ちに状態になる。
蟲達が向かったのはトイレだ、ムカデを流した横倒れになって何かのゲートみたいになってるトイレに殺到する。
「ヒイィ~!!キモきキモイ!!でも、ちょうどいいからそのまま流されろ!!」
ジャバー!!ズゴゴゴゴ!!
蟲達がムカデを後追い自殺するかのようにトイレに流されていく、その様子はまさしく地獄絵図で気色悪いことこの上ない。
「もうやだーーお家かえるのお、蟲やあだー!」
透輝は遠隔でトイレが自動的に流れるようにしてから拠点目指して逃走するのだった……。
その後なんとか拠点まで戻ることはできたが、透輝の精神、身体ともにズタズタだ。なにせ蟲は透輝を襲いはしないもののトイレを目指す蟲が何百と透輝の体をまさぐりながらトイレに向かっていったのだ。正直言って何度か意識が途切れそうになったが、そんなことになったら透輝の体を意識しないうちに蟲がくるだろうと考えるとおぞましいくて気絶出来なかった。
そうして、ようやく拠点に戻ったがベヒモスにやられた傷は打撲程度で済んでいるが、ベヒモスが殺される場面に蟲の遺骸の謎を目にしての精神ダメージのが大きい、しかも今だに一枚壁を隔てた向こう側では『キチキチキチ』『キチキチキチキチキチキチ』と音がしているので蟲が動いているのだろうと考えると安心して落ち着くこともできやしない。
「あ~、ゾンビとかが徘徊してる世界観ってこんな感じなのかな、いやー人が恋しくなるのがわかるわ。」
透輝はそう呟くと、そんなにも自分は心が弱かったのかと自嘲する、まだダンジョンのこの場所にきて一日目くらいなのにこのざまとは……生きているとはいえこのままでは時間の問題じゃあないだろうか。
「ハッ、簡単に死んでたまるかよ、もし死ぬとしても半径10キロの生物は道ずれにしてやりたい……。」
最低である……。その後、透輝は寝室に這いつくばりながらも到着し暫くブツブツと呟きながら睡眠をとるのだった。
「…………。」
ドア君に耳をあてて、透輝は外の様子を伺う正直言って『キチキチキチ』『キチキチキチキチキチキチ』と音がするようならもう寝ようかななんて弱気になっていたりしたが、どうやらダンジョン側からはその音は聞こえてこない。
透輝は安心しながらも警戒をこめてドアを開き勢いよく飛び出す____!!!
「蟲なんか怖かネェェェ!ヤローブッコロシテヤラァアアアアア!」
叫びながら透輝は出撃するが、そこにはまるで蟲達の姿をなく赤黒い血霧があるだけだった___。
「…………。なにこれスベッた感じなの?ha?ふざけんなよこっちがどれだけ緊張してたと思ってんオ!ヤメテ!ちゃんと脚本どうりに動いテ!!」
独り大声で叫ぶ姿は滑稽である。
その後、血霧を避けながらも探索を始め、巨大トイレまできたがやはり蟲達の遺骸は全く存在せず、トイレに頭を突っ込んで流されたようだ。
「…………ここまでのことが意味不明状態、これがもし小説ならあとで解説者が出てきて説明パートが始まることになる。俺は小説家になろうに詳しいんだ。」
そんなメタいことをブツブツと話ながら歩きやはり、蟲達は消え去っていることを確認する。そして、ベヒモスが殺された場所に辿り着くとベヒモスの肉片が少なくなっていることに気づく。
「もっとバシャバシャってカンジに飛び散ってたと思うんだけどアレ?なんでだ?」
そうして、辺りを見渡すと比較的大きな肉片に何かがこびりついているのを見つけた、肉の色に対して青色だったので非常に目立つ、そっと近づいてみると不定形粘魔生命体……。俗に言う『スライム』だった。
この異世界でも下級の魔物に分類され地上でもわりと見かけることができる種族であり種類もバラエティにとんでいる。たとえば、『ソルトスライム』体色は飴色で身体の液体が濃い塩分になっているスライムでどこにでもいる。コイツを倒して煮込めば塩が手に入るのでこの世界の塩の供給は儲けがない原因となるモンスターなどがいる。
スライム種は総じて手を出さなければ無害なので、透輝は物珍しさからスライムに近寄っていくRPGお馴染みの雑魚魔物なのだ興奮もしようものだが……透輝は忘れていた自分がいる場所がどこなのか、世界最大級のダンジョン『大賢者のダンジョン』の深層……そこにいるスライムが普通なわけがないのだ。
透輝がスライムに近づきあと2mとなったところでスライムは動きをとめ、身体の一部を変形させると……。
透輝の左腕を切り飛ばした____。
第一話につながります




