王女の悲嘆
初期タイトル:「一番気に入ってるのは」「なんです?」「値段だ☆」
「フフフ♪」
ヨヨムンド王女は手にしている水晶をニコニコと見ている、水晶はブレスレットをつけている彼の人が身につけており彼のことが水晶を通じてわかるので今、彼の心情が伝わってくるようで堪らなく愉悦だった。そんなヨヨムンドに後ろから声がかかる。
「ご機嫌ですね姉上?」
「そう見えるかしら、ハイル?」
彼女に声をかけたのはストワール王国の王子であり将来の王たるハイルだ。ストワール王国では女性の社会地位が低いわけではないので女性当主なども少なくはない例でいえば王国宰相のチャルドなどがそうだろう。しかし、王家は継承権は男性優位である別に王女を蔑ろにしているわけではないのだが理由があるストワール王国と同盟を結ぶ淫夢族は王族が女性しかいないので、婚姻などの関係もあり男性の方が政治的にいいのだ。
そういったわけで、将来の王太子はハイルなので将来の為のことを学び終えるとふと上機嫌な姉を見つけたので声をかけてみたのだった。
「ええ、姉上はとてもご機嫌そうに見えますね。」
ヨヨムンドとハイルの仲は今は良好だ、別に以前は険悪だったわけではないが良いわけでもなかった。そんな二人の仲を取り持ったのは異世界召喚された中で最弱で少し頭のおかしい男だ、珍妙な『トイレ』なる魔道具を出し王族を懐柔した奇人『峯島透輝』、姉は今はその男のことを考えているのだろう昔の姉と比べて彼女は物腰が柔らかくなったし自分と姉との仲も取り持ってくれたもっとも透輝にはそんな自覚はないだろが……。
「やはり、わかりますか?実はトウキ様にあのブレスレットをお渡ししたのです。」
ヨヨムンド王女はハイルに「父様達には内緒ですよ?」と微笑む。
「あのブレスレットですか、それではその水晶は……。」
「ええ、トウキ様に渡したブレスレットにリンクしています。」
実は透輝にヨヨムンド王女は渡したブレスレットには隠された機能というか裏技がある。
王族専用迷子捜索ブレスレットというのは間違いないのだが、その機能が問題でブレスレットを身につけた者の現在位置の把握(別途、魔道具必須)に心拍などを察知しての生存確認とバイタルの把握さらに身につけた本人には外せずブレスレットに魔力を込めた王族の助けが必要だ。
これらは本来であれば迷子捜索の為のものだが、別の使い方もある。異性のことを口説くことだ、ブレスレットをつけていれば場所がわかるし、水晶によって表面的だが感情は筒抜けになる。それらのことさえわかれば何世代にもサキュバスの血を取り入れた王族が意中の者をとり逃すなど有り得ないことだ様々な手練手管で篭絡されることだろう。
もっとも、ハイルは姉のその行動を咎めたりはしない透輝はハイルにとっては今まで出会ったどの人よりも面白おかしい人だった。彼が義理の兄となったなら退屈はしないだろうと考えてしまう。
「トウキ殿には早く戻って来てほしいですね、彼の『婚約者を面白おかしくからかう10の方法』はとても有益でしたから……。」
「え、ハイルなんですかそれは?私はまったく知らないのですが……。」
ハイルはやっちまったと表情変えると姉から走って逃げた、ちなみに他にも『後宮を持った時の25の対策』も教えてもらう予定だったことは秘密である。
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ヨヨムンドは夜着に着替えて、ベットに横になりながら水晶を見つめる。この水晶の先に透輝がいるのだと思えば不思議といくらでも眺めていられた。
「まったく、貴方という人はハイルに何を教えていたんですか、ちゃんと問い詰めますからね?」
当然のことながら、水晶は何を返さない。この行為にだって何か意味のあるわけではない、でもこうすることで少しは寂しさは埋められる。
「貴方っていつも斜めな行動なので疲れます、わかっているんですか?ハイルにだって変なこと教え込んで……。」
『…………』
水晶は何も言わないただ、魔力の渦が揺蕩うだけだ。それでも、それを見ているだけでも彼が無事だと生きているのだと分かると安心できた。
だが、___。
「え___?」
水晶は突然その色を赤く紅く変える、それはブレスレットを身につける者の危機を表す。
「え?え?なんですか、どうしたんですか!何が起こって___?」
そして水晶はひときわ紅く光るとその色を透明に変えた。
「待って……。待ってください、噓…噓でしょう?」
水晶がその輝きをを失うのは装着者から外された時か……。死んだ時だけだ。
「________ッ!!!」
その夜、王女の声にならない悲鳴があがった。
それから、暫く茫然自失としたヨヨムンドだったが、ダンジョン都市からの生徒達の帰還に、その中から透輝の姿を探した、その中には彼はいなかった。
彼女の望みは断たれたのだ___。
書き溜めた方がいいのか、投稿すべきかそれが問題だ。
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