また会えるさ再放送でな
気分転換したい
透輝が待っているハズの場所には誰もいなかった。最初は透輝の悪ふざけだと思う者もいた、実はトイレの個室にでも隠れていて「ビックリしたか!いきてますゥ~」なんて出てきてくれるんじゃないかと……。
だが、誰もいない透輝はいない。状況から見るに何者かに襲われてたという線が濃厚だった、恐らく透輝が転げまわった跡も残っており『トイレ設置』のセーフティエリアの力を無視できるだけの強力な魔物の犯行ではないかということになった。そして、血や引きずられた跡などもないことからクレバスに落ちたのではないかというのが結論だった。
そんな中で内部犯を疑う者がいた三月麗菜だ。彼女は王城出立前夜のことを鑑みて、霹靂神が怪しいとは思っていた。だが、どうしてそんなことが声高く言えようか霹靂神は現状では人柄も良く非難できるところなどありはしない、麗菜に自分の女になれとは言ったそして自分が透輝の方がいいとも言ったそれが原因かと思うと彼女は胸が締め付けられるように痛んだ。
「三月、大丈夫?また顔色が悪いよ?」
「涼香……。」
麗菜は迷った涼香にこの胸の内を霹靂神への疑念を話していいものか、そして信じてくれるだろうか。
「ねえ、涼香あのさ峯島君をこ……。襲ったのが霹靂神だったりすると思う?」
涼香はキョトンとした表情を浮かべ、麗菜の顔を見たその顔はこわばり固まっている。
「貴女、霹靂神が怪しいと思ってるの?」
「……。ええ」
「なるほどね、どうしてそう思ったかは知らないし聞かないけど無理だと思う。」
「……どうして?」
涼香は「フウ」と息を吸ってから話始める。
「麗菜は酔ってるような状態だったから周りを見てなかったかもしれない、でもね霹靂神はずっと誰かと一緒にいたしこの場所からさっきの場所までの移動時間とか考えても無理だと思う、それこそ第三者の協力とかもう一人霹靂神がいるとか……。」
涼香も自分で言っていて有り得ないと考えたのだろう口を噤んでしまった。
「いくら、異世界っていっても分身とか無理だよね……。じゃあ峯島君を何処かにやったのは誰なんだろうね……。」
「麗菜……。」
泣きそうになるのを必死にこらえて、どうしてこうなったのだろう。どうにかこの事態を引き起こさないようにできなかったのだろうかと頭で考えてしまうがそれは『たられば』の話だとわかっていた、しかし考えずにはいられなかった……。
「きっと大丈夫、アイツは死んだりしないよむしろ死んでもきっと戻ってくるようなヤツでしょ?」
さんざんな透輝の言われようだったが、意外にもその言葉は麗菜にとってはしっくりときた確かに彼ならそれくらいのことはしでかしそうだと。(透輝の扱いがプラナリアと同等)
「あ!?」
「どうかしたの?」
「ブレスレット!峯島君が付けてたブレスレットが魔道具で生存確認できるって言ってた……!」
麗菜にとって、いや透輝の生存を信じる者にとってそのブレスレットが透輝の生存を知れる一筋の光明だった。
ビュウメスと勝俣の意見は分かれていた、いや敢えて分けていたといった方が正しいかビュウメスは透輝のことは一旦諦め地上に戻ることを提案し、勝俣はダンジョンに残り透輝のことを捜索することをだしていた。
勝俣もここで透輝のことを捜すべきではないと考えていた、正直言って透輝のステータスでダンジョン内で生き残ることはまずないといっていいだろう。ならば、今必然的に優先すべきは他の生徒達安全でありダンジョンから脱出すべきなのだ、しかしクラスメイトであり守ると約束した相手を居なくなったから約束は無効だ……と言えるほど冷淡でもなかった。
一方でビュウメスは生徒達の安全の確保が最優先であり、生徒が一人いなくなったのであれば一旦全員でダンジョンからの脱出で安全を確保し不確定要素を排除すべきだと考えていた。というのが建前、実際は幼馴染のヨヨムンド王女に張り付く害虫が消えたぜウェーイ!放置した方が死亡率上がるよね♪というのが本音だったりする。
そんな中で麗菜によってもたらされる、透輝のブレスレットの情報そして、もしもの時を予見していて透輝が二次災害を懸念していたことが伝えられビュウメス、勝俣共にダンジョンでの透輝の捜索は取りやめ、ダンジョンからの脱出をすることになった。
ビュウメスとしてはいくら低級といえども王族専用の魔道具が透輝に渡されていたことに驚愕を受けたがトルク国王から貰ったと透輝が言っていたと麗菜に聞いて一応の納得がした。これがもしヨヨムンド王女に貰ったと伝えられれば透輝が生きて帰ってきても八つ裂きにされていたであろう。
……それはそれで展開的には美味しいか?
ともあれ、多少の反論はあってもビュウメスの説明(ブレスレットの生存確認は王城でしかできない)などの説明により一応の納得を生徒達から得てダンジョン脱出後は王城へ帰城をすることになったが、ダンジョンからの脱出はすぐできても王城に帰還するとなれば準備がいる。
そんな中で保梨奈憂は何度も透輝の捜索をビュウメスと勝俣に願いでていたが、涼香、そして麗菜らの説得により不承不承ながらもダンジョンからの脱出となった。
そして、ダンジョンからの脱出だったが明らかに精彩を欠き不安感から多くの生徒がストレス抱えていた。異能を手にして忘れていた死の恐怖を思い出したのだ無論透輝がまだ死んだとは限らないだが、生徒達の心に影を落とすのには充分だった。
ダンジョン都市フノールに戻り、急いで支度をするのにも二日はかかった、さらにそこから王城にまでは更に数日をかけて戻った。
麗菜や憂がはやる気持ちを押し込めてようやく王城に到着した時、ヨヨムンド王女に出迎えをしてもらったのだが、彼女は誰かを探すように生徒を見回して『誰』かを探していた。その様子は悲しげで悲愴に溢れていて王女が段々と泣き顔になっていく様を見て、麗菜は自分の内の何かが崩れた音がした。
透輝「ちょっとーギャグたんないよー」
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