不浄の世界
光無き場所にいた、上も下も右も左もわからない。自分というものが希薄なのに自分がここに存在することは何となくわかる奇妙な世界だ。光はないはずなのに、周りのことは把握できる。
ここは無数の澱みの世界だ、ゴゥン!ゴゥン!とまるでなにかの工場があるかのような重低音がしている。
20mほどは視界があるのだが、そこを境に遮光されたかのようにそこから先はまったくうかがうことができない。地面はコンクリート製なのだろうか?バシャバシャと水を攪拌するような音も聞こえてきた。
辺りを見渡すと光のない世界の中で鈍く薄暗く澱んだ穢らわしい光が暗海の中で灯台のように一筋のように存在していた。この暗い世界の唯一の光明だ。
自分はその光明へと進む、この暗い世界が怖いのだ心細いのだ。僅かでもいいその不安を消すために澱みをもった光を目指した。目的地はわかれど、そも道筋は分からず何度も自分はコンクリートと鉄板の通路を彷徨った。
澱みをもった光に着いた。光の正体は円筒状の巨大なガラスのタンクと言えば一番近いと思う。そのタンクは3つ10mほど間隔をとり離れて鎮座していた、光を放っていたのは真ん中のタンク、そして左のタンクにはただ中に何かが溜まっている。左のタンクは何もない空っぽだった。
だが、そんなことは自分にはどうでもいいことだ、この暗い世界の不安を拭いたいのだ。そのための光は目の前にいる。それがいくら穢らわしい光を放っていてもこの世界の光はこれだけしかないのだ、この自分の内にある不安のためにも光に近づく。
光は自分を待っていた、自分を認めてくれた。そのことに自分はうれしくなる。
タンクに触れると澱みは強く輝きを増しそしてこの自分に力が漲る______ことはなかった。
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物凄く脱力感を味わう羽目になった臨死体験だった。しかも、最後のオチはなんだ?つまらないぞもっと奇を狙ってくれたほうが良かった。どうせなら、某兄貴が神からパンツをむしり取るとか。それがあんな…。
「……夢オチとか、恥ずかしくないのかよ」
「透輝良かった、目が覚めたみたいだね」
憂の可愛らしい顔が安堵で緩むんだけど、こっち来てから俺が、何度も死に掛けてたせいか、憂の態度が素っ気ないものになってきました。寂しい、前まで死に掛けたら両目に涙たたえて死なないでって言ってくれたんだけどなあ。
「フン、貴様は憂に苦労をかけすぎだ。どれだけ貴様は死に掛けて憂に要らない苦労をかけたんだ、反省でもして引きこもりでもしていればいいんだ。」
「俺だって好きで死にかけたワケじゃない、ドMじゃないんだ。」
鈴風サンの言葉が胸に突き刺さるけど、確かに10回以上俺は死に掛けていたので文句は言えないがそのうちの半分以上のはお前らのせいなんだが…。しかも、悪気がないからタチが余計にわるいんだよなあ…力の制御ができてなくてってのが一番多いんですがねえ。せめてもの救いは毎回、苦しむ間もなく気絶することくらいかもしれないな。
「峯島君が無事でよかったよ、君がいなくなって悲しむ人が出なくて済むからね。でも保梨奈君の治癒魔法も凄いな。内臓破裂をものの数分で完治させるなんてね。」
霹靂神は憂の治癒魔法の回復速度に驚いているみたいだ。まあ、憂が凄いのは当然だろうかわいいから。イケメン滅びろ。
「アハハ…。透輝くんで何回も治したからねコツも掴めてきたみたいなんだ。嬉しくはないけど誰かを助けられたら『聖女』で良かったって思うんだよね。」
「まったく、少しは身体を鍛えたらどうかな?峯島君が貧弱一般人なのが悪いんだよ、涼香は憂との時間が大事なんだからその時間がもったいない。」
三月さんが辛辣です、そりゃあ俺は貧弱一般人だけどね勇者でしょう貴方。そんなのと比べられてもなあ、でも憂に負担を強いているのは間違いがない事実で申し訳なく感じてない。だって俺悪くないもん殆ど原因フレンドリーファイアだし。まず、お前らが俺に優しくすべき、そうすべき。
「で、今回の俺の死にかけた原因の護衛さんはどこよ?」
「王女に連れられて説教中?なのかな。今回の教会での王女の話の幼馴染ってあの人だったみたいでね、結婚の話が出て動転して疑わしかった透輝に…。」
なるほどね~いい迷惑だわ、大体極めて一般庶民な人間が王族に婿入りなんてできんだろうに。そういったのは『聖女』、『勇者』、『賢者』クラスの奴らじゃないとねえ『不浄者』とかいうわけのわからない俺みたいのは無理、無理。
「っつーことはだ、俺が襲撃されたのはステキなイケメン野郎のせいな訳だ。よくも、いらん考察を垂れ流してくれたなオイ」
霹靂神を睨み付け文句を垂れると、ステキなスマイルを返してくれたよ、ちょっとドキッ!とした霹靂神も憂とは違う方向だが女顔ではあるからな。だが、俺はホモじゃない、ネタにされてたけど。
「峯島君も、顔の造形は悪くないと思うんだけどね。フフ、いやごめんそんな怖い顔しないでくれ。でもしょうがないだろう?王女が急に結婚の話なんてしたからね相手が誰だろうって真面目に考えてみたら条件が当てはまるのが君だっただけさ。」
イケメンに顔の造形は悪くないって言われて本気にするやつどれ位いるのかな?キレそう。日本に戻ったら従姉に霹靂神のBL本描いてもらおう、そうすれば気が晴れるだろうな。クク、そう考えながら霹靂神を後ろからニタッとみると彼はブルリと体を震わせた、チッ勘のいい奴め。
「ねえ、峯島君。今BLのこと考えてなかった?」
腐女子の嗅覚すげえ、三月さんのだからなのか?最早考えを読まれてるレベルなんですけど、このレベルならもう、むしろ結婚した方がいいかもしれない俺の生活権的な意味で。
「いいよ?」
「!?」
「アレ、なにかわからないケド返事をしてしまった。なんだろう?」
マジで震えてきやがった怖いです。三月さんの勇者的な力なのか、勝てる気がしない(そもそもステータス的に勝てない)。あれ、でも考えが読まれるとエロ本とかもバレるのか、じゃあ、なしだな。
「峯島君、なぜか分からないが無性に君を殴りたい。」
「やめてください、パンツ事件の二の舞はごめんです。どうしても殴りたいなら先にパンツでも見せから(ry」
ドゴォッ!!
「峯島君何か言うことはあるかね?」
「すいません、本当はパンツには興奮しないので見たくないです。」
「すいません、皆さん。お待たせしました。……どうしてトウキ様は血塗れなのでしょうか?」
ヨヨムンドの前にはボロ雑巾の透輝の姿があった。
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友人に小説投稿がバレた、俺の羞恥心がマッハ




