寝てたとか馬鹿じゃねえの(嘲笑)
タイトル詐欺
「……知らない天井ってか天蓋ってやつか。」
透輝が目を覚ますと豪奢なベットで自身が横になっているのを確認した。時刻的には昼だろうか、窓からの採光が暖かで思わず苦笑いする。パンツ一つ見た程度で自分はどれだけ眠っていたのか、パンツの代償は重かったなあ、なんてポヤンとしながら考える。たかがパンツされどパンツ、身につけられたパンツを拝むというのは代償を払うものなのだ。
「お目覚めになりましたか?」
——気づくと透輝の隣に誰かいる。声の方に顔を向けると金髪碧眼美少女がいた。美人系というか、かわいい系と言うべきだろう。憂に近い可愛さだった。服装は豪奢とは言えないデザインのドレスだったが、ドレスに使用されたのは一級のモノなのだろう、素材の良さがにじみ出ているようだ。そして、そのドレスの効果だろうか彼女が高貴な生まれだとわかる容姿をしているというのに親しみやすい雰囲気をつくってくれていた。
はい、問題ですよ~。自分が急に知らない所で眠らされて、起きたら超絶美人の金髪碧眼少女が隣にいて自分のことをジッと見つめています。あなたならどうしますか?
もし主人公タイプなら「え、あ、うん、え~っとここはどこかな君の名前は?」なんてキメ顔で尋ねることでしょう。もしくは純情タイプなら顔を紅くして彼女の顔をポ~と熱にうなされているのかというくらい見つめたことでしょう。
透輝はどうしたかというと、彼女に向けて澄んだ笑みを見せたのち一言。
「お目覚めになられていません。」
そう彼女に告げると自らの瞳を閉じて夢の世界へと飛び込むことにしました——。
「いやいやいやいや、起きてましたよね!?寝ないでください!」
「( ˘ω˘)スヤァ…。」
「やっぱり起きてるじゃないですか!声に出してそんなこと言っても駄目です!!起きてくださ~い!」
このやりとりは、彼女がいじけて涙声になり、透輝が白々しい演技をやめるまで続いた。時間にして五分ほどのことである。
「グスッ、三日も看病した相手にこんな対応されるとはおもわなかったです…。」
「よかったなあ、世の中にはこんな変人がいるって知ることができたじゃないか。ん……三日?」
聞き捨てならない部分があった透輝が思わず固まる。状況から推察するに、自分がここで目の前にいる少女に看病されていたらしい。その前の記憶といえば黒パンツ…もとい三月麗菜のパンツを不可抗力で(ここ重要)覗いてしまい踏まれた記憶しかない。つまり、あの踏みつけにそれだけの威力がありそれ故に三日も寝ていたということか。
「大変だったんですよ?脊椎損傷に内臓破裂が数ヶ所、呼吸は今にもとまりそうで。もし命が助かったとしても下半身不随は確実だったでしょうに。」
「……。」
黙り込んでしまう透輝、自分がどれだけ危険な状態だったのか。それがわかっただけでもゾッとする、原因が原因なのがなんともいえないが。
「私も呼び出されたのも、本来ならば有り得ないことなんです。私以上の治癒魔法が使える者がいないために。」
そう言って透輝の方をジトッと睨んでくる彼女だが、可愛らしい容姿が邪魔をして余り怖くはない。どこか背伸びをして無理をしているような彼女に思わず苦笑いしか返せない。まさか、異世界召喚されて一日と持たずに死にかけたあげく三日も寝ているとは、思ってもみなかった。
そこで、彼女が尽力してくれたおかげで命が助かっているのだとしたら感謝の意を示すべきだろう、そうすべきだ。
が、先程の寝たふりのせいでどーにもそんな態度をとっても信用されないんじゃないだろうか、それに今更ながら謝るのもはずかしくもある。そこで透輝が考えたことなのだが透輝の悪い癖がでた。
謝るのと感謝するのが恥ずかしい?結構!ならばもういっそのことハジけてしまえばいい、そうすれば恥ずかしくない!!オーバーなくらいでいこう!!
腹をくくった透輝は顔だけは穏やかな、それこそ人生八十年生きてきた好々爺が夕日を眺めるかのように穏やかな表情を浮かべながら彼女の方を見た。
名もまだ聞いていない金髪碧眼美少女がこちらのことを不思議そうに見ている。
——タイミングは今だッ!!!——
「貴方が私を治療してくださったことを知らず無礼をはたらいたことをお許しください!!!!」
金髪碧眼美少女は突然の謝罪にポカンとしている、よろしい、ならば追撃だ!!——
「私のような異世界人に対して!!高貴な貴方様にこの身を治療して頂き!!感謝の気持ちを言葉では言い尽くせません!!!!」
「あ、あの……。」
おっとお、彼女はタジタジしてきたがまだまだイケるな。恥ずかしがるな俺!!まだいけるはずだ!!
「此度のこと本来であれば我々!!!!異世界人の内輪もめでおきたこと!!それを貴方様のお時間をいただき!!!「あー!もう、わかりましたから!!」」
耐え切れなくなった彼女は早々に白旗をあげた。
「わかりましたから、感謝の言葉は受け取ります!!」
その言葉を聞いた瞬間、透輝の彼女をおちょくる第二弾が発動した。さっきまでの感謝の雰囲気、表情を消し無表情になると再度彼女を見つめる。そして、どこか憐れむような表情をすると。
「そう(無関心)」
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ブチッと音が聞こえてきそうなくらい、王女たる自分の琴線に触れたらしい。感謝をささげてきた相手の言葉を受けたとたん、無表情になってこちらを憐れむような視線を受けておちょくられたのだと気付けば誰だってキレるものだろうが。
「フ、フフフこのストワール王国の第一王女たる私をよくもコケにしましたね。」
そう言うやいなや、今だベットの上の彼の手首を上から押さえつけコ〇ンビアのポーズとらせ魔法でポーズを固定すると彼の腹に座りマウンティングをとった。
「私が使うことができる魔法の中には身体に激痛を与えるものがあります。本来の用途は拷問用で手慰みに覚えたものですが、フフフ、あなたの身体に私という存在を刻みこんであげます。感謝してください。」
よそ見をされているのが気に食わないので彼の視線を自分に向けさせるともう一度宣言した。
「いいですか、あなたの身体に私という存在を刻みつけます。私を片時も忘れられないようにしますからね?」
彼に私は艶やかな笑みを浮かべると手で彼の頬をなでた。ところが、また彼は視線を私から外した、私はすぐに自分の方を向くように今度は魔法をかけて自分の方に向かせた。
「まったく、今の貴方は私だけを見れば良いのです。その視線の先に何が…ある…と?」
彼が見ていた方に私が視線を向けると、見ちゃいけないものを見てしまった!!というのを顔で表現するメイドが立っていた。
「あの、もうすぐ三月様方がいらしゃいますが…。」
「……何時からそこに?」
「最初に俺の視線を戻したときからだね。」
つまりは「いいですか、あなたの身体に私という存在を刻みつけます。私を片時も忘れられないようにしますからね?」という場面からはずっといたということだ。
私はの顔はサーッと青くなり、次いでボンッと紅に染まった。今の自分はなんだ、王女たる自分が一時の感情に我を忘れ殿方の上に馬乗りになって、もう少しで口づけができるほどに顔を近づけているではないか!
「わ、私は急用を思い出したので、ここで失礼します。あなたはは三月様たちをここへ案内してさしあげなさい。」
今は急いでこの部屋から立ち去りたかった。そして、ドアノブに手をかけたところで後ろから声がかかる。
「え~っと王女様!!」
「なんですか!!」
ハッキリ言って今は声も聞きたくない男の声だが返事を無視することはできず。次にその男からの言葉は予想だにしていないものだった。
「三日も寝てる俺にありがと。」
わけがわからなかった、なぜ、今更そんな笑顔を見せながら感謝の言葉を言えるのか。どうして今、自分はこんなにも心揺さぶられているのか。
「……。」
返事をすることなくドアを閉めた。早くこの場から離れよう…―。
今は何故か無性にたった一人の幼馴染に会いたかった。
ストーリーが進まねえ




