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エアロシティへの道

「…横村!」



「…おい!横村!」



ゴトン、ゴトン。ゴトン、ゴトン。


横村は揺れる汽車の中で目を覚ました。

窓から差し込む光が、寝起きで腫れぼったい目を刺激する。


「ん…ここは?ああ、なんてことだ。外が明るいじゃないか。

早く馬房にいってブリブリレジェンドの調教をつけないといけない…」


立ち上がろうとするが、背中や尻が痛いことに気付いた。ズキズキとした痛みに襲われる。

それに頭も痛い。脳の中を蟲が這い回っているような感覚。思わず呻きながらうずくまる。


「ハッハ。無理もないよ。このガタガタ揺れる車内でお前ずっと座って寝てたんだから、そりゃ体も痛くなる」


声のした方向に顔を向けると…自分と同じくらいの年代だろうか。背の高い男が立っていた。

こいつは誰だ?中田調教師ではない、曽根崎も違う…。


「車内?…汽車?ここはどこなんだ?オレは…」

「オイ横村ねぼけるのもいい加減にしろよ。ロイドさんに聞かれたらぶっ殺されるぞ」


そう言って男はコツコツと音を立てながら別の車両へと歩き出した。彼を追って車両を移動する。

それにしても自分の着ている服の汚さはどうしたことだろう。

まるで数日間着替えてないかのように茶色い染みができており、生乾きのような変な臭いがする。

…いや、臭いを放っているのは服ではなく自分自身かもしれない。


前を向きなおすと男が訝しげな目でこちらを見ている。

「…お前ホントに変だぞ。頭でも打ったのか?」


汚い格好は自分だけではないらしい。改めて見直すとこの男もそうだ。

染みだらけで薄汚れくたびれたネズミ色のパーカーと、ところどころ破けているチノパンを着ていた。

そしてカジュアルな格好には似つかわしくない、獣狩りにでも使いそうな大型のナイフを腰に装着している。


「なんだよ服装のチェックか?バカだな、あの人が格好なんか気にするかよ。それより」


ちら、と彼は目線を下げた。何を見ている。

…どうやら俺の左手に男の視線は向いているらしい。何も持っていないのだが。

もしかすると先ほど体中が痛くて呻いていたから、手を痛めていないか心配してくれているのだろうか。


大丈夫、とアピールするように手を開いて閉じる動きを繰り返す。


「うん、問題ないみたいだな。左手はお前の武器だからな。何かあったら大変だ」


…?


彼はわけのわからないことを言うと話を打ち切って前に向き直り、また次の車両に歩を進めていった。

俺は頭の中でクエスチョンマークを浮かばせながら彼についていった。


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