第1話 獄炎鳥
この星に存在する生物の中で、最も優れているのが人類だと、ほとんどの人間は確信していた。
だが、まだ人間に確認されていないだけで、この世界には、『邪王』と言う人類よりも、はるかに強く、賢い魔物が存在するのである。
そんな恐ろしい存在を知らずに、家畜の世話をするフェイと言う少年がいる。
今日も家畜にエサをやり終えると、少女が手を振りながら僕の近くに歩いて来た。
「おーいフェイー今日もみんなのお世話してたんだ〜」
「うん、ミルは何してたの?」
「わたし〜?私はね、またお父さんとお母さんにお金持ちの家に連れて行かれて結婚しないかって話をしてた」
ミルは器量が良くて可愛いからいろんな家から婚約の話をされるらしい。
「で、そ、その子はどんな子だった?良い人だった?」
「うん、良い子だったよ〜優しいしあっちも私に気があるみたいで、結婚しても良いかなーって」
「け、結婚?!そ、そんな、」
「ウッソー結婚しても良いとは思わなかったよ、優しい子だったけど」
「な、なんだよからかわないでくれよ」
「え〜どうしたの〜もしかして私が取られちゃうと思った〜?」
「う、うるさい、別にミルが誰と結婚したって幸せならそれで良い」
「え〜本当は自分が幸せにしたいとか思ってんでしょ〜」
「あーもううるさいな〜」
「素直じゃないな〜、それより顔の傷どうしたの?」
「これ、これは、その〜、こ、転んだんだ。」
「へ〜ドジだな〜フェイは〜」
実は、この傷は転んで出来た傷ではない、
これは二日前の話、その日も今日と同じように家畜にエサをやり終え、家に戻った時だった。
「ただいま〜」
「おめえエサエサをやるのに何分かっかてんだ!」
「いや、今日はいつもより多かったから、、、」
「うるせー言い訳なんて聞きく気はねー」
そう言うと、親父はぼくの顔を殴った。
「拾ってやって今まで食わせてやって来たんだから俺の言う事はしっかり従え!」
「、、はい」
そう、この人は実の父親ではない。
話によると、昔この村の近くで大きな山火事があったらしい。その原因は獄炎鳥の仕業だと聞いた。獄炎鳥とは炎に包まれた約5メートルの巨大な鳥の事らしい。獄炎鳥は1000年に1度現れるか現れないくらいの伝説だったので、現れた時は皆腰を抜かしていたらしい。さらに、獄炎鳥が現れると必ず20年以内に災いが降りかかる、とも伝説されていた。その山火事が起きた日に、森で唯一生き残ったのが15年前の僕だったらしい。
その山火事の直後、国の王がこの村にやってきてある事を皆に言った。
「この山火事で生き残った幼な子を、この村で育ててやってほしい、これは、この国からのお願いだ」
その言葉を聞き、村人は猛反対。なすりつけ合いの末に、僕は今の男に預かってもらってる。
「なんで国の王直々にこんなガキを育てろなんていったのかね〜」
親父のよく言う口癖だ。
正直僕も気になる。なんでわざわざ国の王が頼みに来たのか。
コンコン、
「ハーイどちら様ですか?」
外に出ると鎧姿の兵士が3人いた。
「こちらにフェイという少年はいるか、」
「はい、僕ですが」
「一緒に城まで同行を願う」
1人の兵士が腕を掴んだ
「ちょっと待てよ兵士さんよ、そいつはウチで働いてもらってる子なんだよ、勝手に連れていかれちゃ困るな〜」
親父が僕と兵士の間に割って入った
「いや、国王からの命令だ従ってもらう」
「ふざけんな国の犬が、そいつにはまだやる事があ、、」
兵士が親父の腹を剣で突き刺した。
「すまないが時間がないのでな」
「ぐあ、おまえ、な、なんて事を、、」
「さあ、行くぞ」
そして、僕は馬車に乗せられた。
すでに馬車の周りは村人がいた、その中にいたミルと目があった。
「フェイー」
「ミルー」
兵士の手を振り払いミルに近付こうとしたが、もう1人の兵士に捕まった。
「フェイ様、落ち着いてください、もう会えなくなるわけではありませんので」
「わかりました、でも一言だけ言わせてください」
そういうと兵士は「どうぞ」と言い手を放した。
「フェイどうしたの?なんで兵士の人達がいるの?」
「わからない、だけどまたすぐに戻るから心配しないで待ってて」
「本当?絶対また戻って来る?」
涙目のミルの手を握って言った。
「ああ、絶対戻る。俺が嘘言った事あったか?」
「うん、そうだね待ってる」
「じゃあ行って来る」
ミルの手を放し馬車に乗った。
♢♦︎♢♦︎
馬車の中で兵士の一人に聞いた。
「あのー、これから僕どうなるんですか?」
「まあ、着いたらわりますよ」
国王からの命令とさっき言ってたがなんなんだろう?
「それはそうと、さっき急いでいると言ってましたが、そんな理由であの人を殺してよかったんですか?」
兵士の目が変わった。まさかそんな質問をされるとは思ってなかったらしい。
そして兵士は言った。
「そうですね、確かにそんな理由では殺していい理由にはならない。ですが、聞く所によれば、あの男は度々フェイ様に暴力を振るっていたとか」
「はい、そうですがそれでも殺していい理由には、、」
「いえ、なるんですよそれが、あなたはどこかの貴族なんかよりもずっと身分が高いのです」
「ぼ、僕の身分がそんなに高いんですか?」
「はい、あ、もうこの話は直接陛下のお口から聞いた方が良いです。城に着くまでまだかかりますので楽にしていてください」
ちょうど眠気を感じたとこだったので横になって寝た