リスク分散型ミッション
橋の向こう側の世界は、心なしか、空気がひんやりとしているようだった。
ゆっくりとホバリングするテプイの足もとの地面には、水と食料、そして二つの皮袋が横たわっている。
飴色の皮を細く裂いて、丹念に編み上げられた背負い袋だ。中玉のスイカほどの大きさだろうか。
その横の砂地には、おぼろ気な地図のようなものが描かれていた。
『狭き谷──スカイフォール──花の荒れ野──祈りの石──赤き大地──そして、ひかりの洞窟』
「‥‥これが、トコハルの国への道?」
クワィアが、少し心もとなそうに指を指す。
「‥‥トコハルの国‥‥スーパーマウンテンの山懐‥‥」
クエストの言葉は、どこか、懐かしさと寂しさがない混ぜになったような響きだった。
──常春の国‥‥‥‥。
『スーパーマウンテン???』
カラハンの大声が、余韻を完全に打ち砕く。
「‥‥ん、ところで、どうして荷物は二つあるんだ?」
ハテナだらけのカラハンを尻目に、
『スペア、スペア。ネンノタメ、スペア!』
テプイは、高く舞い上がった。
『コワレモノニツキ、トリアツカイチュウイ!!』
一陣の風と共にテプイは去り、砂の地図は跡形もなく消え失せた。
だがしかし、みそぎの橋を渡ったのち、そこにペシミストは誰もいなかった。
「──要するに、さっさと荷物を運べばいいんでしょ?」
クワィアの言葉につられて私も、
「そうさ。スペアもあるんだから、命をもってまで償う事態にはならないだろうよ、まさか‥‥」
クエストは、やはり冷静に、
「トコハルの国への洞門は、初雪からまる二日で閉ざされると聞いたことがある。早く出立した方がいい」
ここまでのやり取りを神妙に聞いていたカラハンは、
「よぉし! スペアまであるからには、よほど重要な荷物に違いない。
野盗の襲撃や、天変地異の危険を避けるために、二人一組で、時間をずらして行こうじゃないか。いわゆる、ほら、‥‥あれだ、‥‥『リスク分散型ミッション!』ってやつだ!!」
一瞬だけ、三人の視線がカラハンに集中したが、クワィアが、すかさず後を続ける。
「それじゃあ、当然、男女一人ずつでいいわよね?」
言うが早いか、クワィアは、クエストの隣ににじり寄った。