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ちょこっとファンタジー ─フラジャイル─  作者: 絵南玲子


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スカイフォール

 『狭き谷』を越えて合流した四人は、相棒を組み替えて、山を下り始めた。

 私は、クエストと組むことになった。


 大きな荷物を背負って前を行く彼は、風になびく髪も、しなやかな身のこなしも、後ろ姿までが美しい。

 カラハンの背中を熊の縫いぐるみに例えるとすれば‥‥クエストはいったい、何だろう?

 若いカモシカのようにたおやかだが、なぜか、孤独な豹にも似た鋭さを感じさせる。

 とてもじゃないが、「みそぎの橋で初めて見たあの青い瞳を、じっくりと間近で拝ませて!」──なんて言う勇気は、出てこない。

 そんなことをしたら、クワィアに思いっきりつねられるに違くいない。 

 それよりも、クエストの体を包む静かなオーラには、柔かく、そしてきっぱりと、外界を拒絶しているような気配があった。

 


 もうだいぶ長いこと、黙って歩き続けている。

 霧の中の沈黙に耐えかねて無謀にも熱く語り始めた、あの時のカラハンの気持ちが、少し分かるような気がする。

「‥ふぅ、いい風だ。‥‥アラドナにも、こんな風が吹いてるのかなぁ?」

 風を見計らう振りをして、私はおそるおそる言葉をかけてみた。

「‥‥アラドナ?」

 静かな声が返ってきた。

「東方にある、私の故郷の港町さ! 毎年、季節風に乗って、たくさんの船がやって来る。賑やかな街だよ。‥‥もう、だいぶ長いこと、帰っちゃいないけどね‥‥」

「‥‥そう」

と、また静かに若者は言った。

「‥‥クエストは、どこの生まれなんだい?」

 聞いちゃいけないのかなと思いながら、私は好奇心に負けてしまった。こんなに美しい若者を前にして、煩悩に蓋をするっていうのは難しい!

「僕にはふるさとなんてないよ。物心ついた頃から、いくつもの国を転々としてきた‥‥」

「ごめん!!」

「いいんだ。隠すつもりもないし‥‥」

 

 また、完璧な沈黙が舞い戻った。

 ‥‥クエストが辿ってきたこれまでの人生には、いったい、どんな重りがぶら下がっていたというんだろう。

 背中の皮袋といっしよに、ずぶずぶと沈み込んでいきそうな気がしてきた。

 ──ここはひとつ、へたな歌でも歌って、この場を盛り上げてみるか。いくらなんでも、テプイのあの声よりはましだろうよ。ぬ

 そんな暴挙に出る寸前のことだった。

 轟音とともに視界が開け、千丈の谷に落ちる大瀑布が現れた。

「スカイフォールだ!」

「これが!?」

 

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