二話
前回のあらすじ 異世界召喚系ファンタジーが確定しました。
「信じられないのも無理はないでしょう。ですが、これは本当のことなのです。どうか貴方がたのお力をお借りしたいのです」
ここで出来る限りの情報を聴いておきたいため、バカとアイコンタクトで確認を取り合って命令します。
付き合いが長いだけあって言いたいことは通じた様で、相手が話し安いように絶妙に相づちを打ち、的確な質問をして情報を引き出していきます。
さり気なく辺りを見回して確認しますが、周りを取り囲んでいる武装集団は警戒こそしているみたいですが、こちらが変な事をしない限りは手を出す事はないみたいで全員直立不動のままです。
美少女さん改めナントカの巫女さんが言っていたことをまとめると、ここは私達が元々いた世界ではなく、複数の国が乱立しているが多くが同盟を組み大きな火種のない中世ぐらいの世界で普通とは違う異形、つまりは魔物などがいるRPG臭のする異世界で定番通りに平和を謳歌していたら突如、古の時代に封印された筈の魔王が復活し、それに呼応して配下の魔族が魔物などを使役しつつ人間の生活圏を蹂躙してきたと。
完全にテンプレな異世界トリップです。
最強モノか否かで結構変わるから最強であって欲しいトコロです、ホント。
出来れば某作品の赤い服着た万能な請負人ぐらいの性能は欲しいところですが、この際贅沢は言いません。
せめて某同人STG自機の紅白貧乏腋巫女か泥棒兼魔法使いぐらいでもいいんですが……。
「一度陛下にお会いして頂きたいのですが、ケンスケ様もアオイ様も急な事でお疲れでしょう。今日はゆっくりとお休み下さい」
巫女さんが気を使う様に言うと、武装集団改め騎士の一人が部屋に案内してくれることになりました。
あ、言い忘れてましたというか誰に言ってるかはさて置いて、私の名前が『神代葵』、バカの方が『凪原賢介』です。
やはりここは地下だったようで結構長い階段を上りきると、さっきまでの無骨な石造りが嘘のように一目でお金が掛かってるなとわかる絢爛豪華な大部屋に着きました。
聞いてみると、ここはさっきまで居た儀式の間に入れない人たちが待機して待つ為のお部屋らしいです。
にしてはだれも待っていませんが、案内の騎士さんがこちらへとか急かすので大人しく付いて行きます。
部屋から出た通路も先程の部屋程ではありませんが、十分に豪華でまさしく王城って感じがします。
きっと平和な時代に造られたお城なんでしょうね。
歩きながら通路の窓から外を見ると、辺りは暗く窓のガラスが光量差でちょっとした鏡状態です。
この世界では薄いガラスを作る技術があるみたいですね。
それにこの通路の光源は蝋燭やランプではなく、何か良く分からない光の玉が一定間隔に天井に浮かんでいますが、魔法でしょうか?
そんなこんなで案内された部屋は一人で使うには大きすぎる、まるで高級ホテルの一室みたいな豪勢な部屋でした。
お金をかけているのは分かりますが、決して成金趣味のようなのではなく部屋を使う人が落ち着けるように配慮されています。
まぁ、庶民である私にとっては戦々恐々であることには違いありませんが。
案内してくれた騎士の人が、食事は後で運ばせますと言い残し賢介を連れいい離れていきました。
一人になって改めて部屋の中を眺めてみると、この部屋で特に眼を奪われるのは豪華な天蓋付きベッドです。
二、三人まとめて寝れそうな大きさのこのベッドに思いっきりダイブしてみたところ、ベッドは優しく私を抱き止めモフモフした感触を私に与えてくれます。
そのままベッドでモフモフして癒されていると、ひと今日あった事を思い返してしまい気が重くなります。
こんな私もまだ高校生で、意味の分からない事に巻き込まれて心から平然としていられる程強くはありません。
側に見栄を張る相手が居なければ心配やら不安が湧きもします。
ごろりと寝転がり、使い易いという理由で使い続けている今では結構な型落ち品となったケータイを確認しても、予想通り圏外でした。
生活必需品からガラクタに成り下がったケータイを鞄に放り込み、そのままベッドに突っ伏し、目を閉じます。
明日は巫女さんが言っていた様にこの国の王様と謁見して、押し付けられた勇者の使命とやらを果たす様に言われるのでしょう。
拒否するにしても、元の世界に帰る方法も分からず、この世界を生きてくにしともこの世界の知識や常識が圧倒的に欠けている私達ではまともに生きていけるとは思えませんし、そもそも一番の権力者に逆らった時点でアウトでしょう。
ホントに、面倒です…