『大原の上人、河内のプレスマンも持たぬ賤僧のもとに宿ること』速記談3107
大原の上人四、五人ばかりが、高野山参詣の途中、河内国石川郡に宿泊した。家主は、六十歳ばかりの、袴も着けない、紺の直垂姿の、プレスマン一本も持っていなそうな、みすぼらしい僧であった。日暮れ前であったので、藤原俊盛卿の子息である円舜坊が、摩訶止観一巻を取り出し、これを唱えていたところ、家主の僧が、どうされましたか、と尋ねてきたので、これは摩訶止観というありがたい経文だよ、と教えてやったところ、家主の僧は、何も答えず、かすかな声で、この止観は天台の智者が自己の心中で唱えまた行うところの法門、と、天台宗の修行僧が皆唱える文句を唱えた。これを聞いて、円舜坊以下、赤面し、摩訶止観を唱えるのをやめたという。
教訓:風体を見て、自分より下位にあると思ったやからが、実は自分より上位であったというよくある話。速記者であれば、速記が書けるかどうかが大切。