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ドーベルマンと雑務

作者: 泰貴


 恋愛など雑務に等しい。僕は本気でそう思っている。全く違う人生を歩んできた相手と毎週待ち合わせをし、相手のことが気になってやきもきし、しまいには一人で快眠するために用意された気持ちの良いベッドまで共有するようになってしまう。大体、初めは心を躍らせて待ち合わせの15分前には駅に着いて近くの本屋で時間を潰しあたかも時間ぴったりに着いたような顔をして嘯いていたのに、次第に待ち合わせ自体が億劫になり待ち合わせ時間のちょうど10分後に着くように支度をするようになるなんてくだらない。ドーパミンによって生み出されるドキドキやワクワクで踊らされるのは、肉を見て、あるいは肉の匂いを嗅ぎつけて涎を垂らす近所のドーベルマンと同じだ。

 もちろん僕だって恋愛をしたことはある。タバコを吸っていたことがある人がタバコはやめた方が良い、と忠告する方が説得力があるように、僕は僕の経験を踏まえ恋愛なんてやめた方が良い、と言っている。そんなことを言っても人を好きになってしまうのは仕方がないじゃないか、と主張する人がいるがそれは間違っている。人を深く知らなければ人を好きになるだけの材料は揃わない。美人な女優を見ても恋に落ちないように、人は見た目だけでは滅多に恋に落ちないからだ。一目惚れ、というのは幻想だと思っているが、もし現実にあるとすればそれは愚かな行為だ。見た目から足りない情報を想像で埋め、この人は完璧に違いないと自分で自分を説得し始める。

 また、恋愛をしたい人というのは、悲劇のヒーロー、ヒロインになりたがっている人だ。恋愛をする以上ハッピーエンドはないからだ。これにも結婚すれば恋愛が終わるとは限らないではないかと主張する人も出てくるが、統計からするとこれは低い。また想像力に乏しい。昔から恋愛の物語というのは、「2人は結婚し、いつまでも幸せに暮らしました。」で終わりとなる。結婚してからの方が難しいことや離婚率の高さを無視したエンディングで乱暴だ。ハッピーエンドに近づけたいのであれば、「2人は結婚の段取りで大喧嘩をしましたがなんとか仲直りをし、なんとか結婚をしました。数えきれない喧嘩を乗り越え子供ができましたが子育ての方針の違いについて大喧嘩をし、離婚の危機が訪れましたが。。。諸々あってどちらかが病気にかかり死にました。どちらかは生きているのが辛くなるほど悲しみました。数年後2人は同じお墓に入りました。」ここまで想像すべきだ。読後感は悪いがこれが現実だ。それも”まし”な方の現実である。


 

 以上は僕が人を好きになる面倒くささから逃れるために自分を説得させようとした過程である。それでも僕はある人のことがたまらなく好きだ。まさに、やきもきしている。映画や本さえあれば1人で暮らしていくのも悪くないものなので問題ないのだが、せめてずっとあなたの味方でありたいと、願ってしまっている。こんな頼りない味方がいても意味はないかもしれないが。どうも人間というのは素直になれない生き物らしい。あのドーベルマンに教えを乞いたい。

 

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