7.フレンチトーストとココア
あれこれ考えていた気がするが、気付いたら眠っていた。
何か夢を見ていた気がするけど・・・・・
覚えていない。
時間は午前10時をまわっていた。
あっ、みうは・・・・・?
「!!」
昨日は小鳥のように白い羽にくるまっていたが、羽がなくなっている。
白いワンピースのまま、床にうずくまっているが、微動だにしない。
「お、おい、みう?
大丈夫か・・・・?」
おそるおそる声をかける。
「んにゃ・・・・・
主様・・・・・」
良かった、生きてる。
「お前・・・・羽が・・・・」
「あーっ!」
「ど、どうした・・・・・」
「しまえましたよ!羽!」
はぁ・・・・・
そういうことね。
でも、これで外を歩いても大丈夫なようにはなったな。
昨日のコスプレイヤーのような姿では、ちょっと目立ちすぎる。
「腹減ってないか?
何か食べるか?」
みうがぱぁっと明るい顔になる。
「主様のごはん・・・・
食べたいです!」
「ん、わかった」
昨日から考えていた、フレンチトーストにしよ。
ホントは一晩卵液につけておこうと思ってたんだけど・・・・
それどころじゃなかったからな。
卵、牛乳、砂糖をボールに入れて泡立てる。
卵液がしみ込みやすいように、食パンに穴をあけて、卵液に浸す。
バターを落としたフライパンで、弱火にしてじっくり焼く。
こんがり焼き色がついたら完成。
同じように4枚焼いて、間にハムとレタス、チーズを挟んだものも作った。
プレーンの方はメープルシロップをかけて。
「できたぞー」
ちょこんと座っているみうの前に、フレンチトーストを出す。
「キラキラのごはん!」
ふはっ、昨日もそれ言ってたな。
思わず吹き出しそうになるのをこらえた。
みうが不思議そうな目で俺を見ている。
「何でもないよ、食べよう」
「いただたきます!」
「はい、召し上がれ」
みうは食パン1/4のサイズのフレンチトーストを、小さい口に一気に運んだ。
小動物みたいに頬がパンパンになる。
もっもっ、と擬音が聞こえてきそうだ。
「そんなに急いで食べなくても大丈夫だよ」
「わひゃりはひた」
「うん、口にものを入れてお話するのはいけません」
ごっくん。
「はい!主様」
ここは保育園か何かかな・・・・・?
食べ終わって食器を片付ける俺の姿を、みうがじっと見ていた。
「おかたづけは、わたしがやります!」
「そお?じゃあお願いしよっかな」
フレンチトーストの乗った大きめの皿が2枚に、お茶の入っていたコップが2つ。
あとはフォーク。
それらを手渡すと・・・・・
「ひゃああっ」
変な声を上げて皿とともに体が沈んだ。
「お、おい・・・・・」
「すみません・・・・・
思っていたより重くってビックリしました・・・・
だ、だいじょぶです!」
「皿が割れなくてよかったよ。
俺が運ぶから、洗うのをやってもらおうかな」
「はい・・・・・」
狭いシンクには、スポンジと洗剤があるだけだから、みうでもなんとかなるだろう。
・・・・・・多分。
そっと後ろから覗くと・・・・
スポンジと洗剤を手にとった。
お、いいぞいいぞ。
そしてそのまま・・・・
固まっている。
「やり方はわかる?」
「すみません・・・・
よくわかりません・・・・」
とシュンとした。
「いいよ、じゃあ一緒にやろう」
「はいっ」
みうは俺が皿を洗う様子をじっと見ていた。
「泡をしっかり流したら、カゴに入れて、フキンで皿を拭いて」
俺の手元をじっと見ながら、コップを手に取りぎこちない手つきで拭く。
「ここにしまって終わり、と」
「なるほどです!
わかりました!
次はみう1人でやってみますね!」
「そっか、お願いするよ」
さて、コーヒーでも入れるか。
インスタントだけど。
あーでも・・・・みうがコーヒーを飲めるかわからないから、甘さ控えめのココアにしよう。
あ、そうだ。
以前に買ってなかなか使う機会のなかったミルクフォーマーを引っ張りだす。
小鍋に水、純ココア、砂糖を入れ温める。
カップに入れて少しレンジで温めた牛乳を、ミルクフォーマーで泡立てる。
「主様っ、ミルクがふわもこになりましたよ!」
興味津々で見ていたみうが言う。
鍋で温まったココアをマグカップに注いで、泡立てた牛乳をうえにのせて出来上がり。
「ほい、ココア。
熱いから気を付けてな」
リビングに運びながら声をかける。
「わぁ~雲みたいですね!」
みうがスプーンで泡をすくって口に入れる。
「!ふわもこなのに、しゅわしゅわします!」
「はは、確かにそうだな。
ココアと一緒に飲んだ方がうまいよ」
下のココアと泡を一緒にすくって飲んでみな」
スプーンで一口ずつすくって口に入れた。
「おいしいです!
しゅわしゅわと、あまあまです!
みう、これ大好き!」
マグカップをかかえて飲むみうは、ホントに子供みたいだった。