6.見習い天使 みう(2)
「はい!」
満面の笑みの、みう。
何か・・・・・現実感がなさすぎて、フワフワする。
でも目の前のみうは、間違いなく天使なんだろう。
二の句が継げない俺をみて、みうが言葉を続ける。
「みうはずっと探してました・・・・・
みうの呼びかけに応えてくれる主様を・・・・・」
「呼びかけって・・・・
あのメッセージのこと?」
「はい・・・・」
・・・・・・
あんなイタズラみたいなメッセージじゃなぁ・・・・・
そりゃ、誰も応えないだろ・・・・・
3日間何も食べていない理由はそれか。
「えーと、俺がみうちゃんと出会った理由は何となくわかったとして・・・・
神様は何で天使の主を探しているんだ?」
「天使は16歳になったら、人間界で自分の主様を探して、その方と一緒に人を幸せにするお手伝いをしなくちゃいけないんです。
それが一人前の天使になる条件なんです!」
16歳・・・・・どうりで20歳には見えないと思った。
年齢はアプリのための偽りか。
そして今は見習いだ、と。
「えーと、そうなると・・・・・
みうちゃんは、これから俺と一緒に、人を幸せにするお手伝いをしなきゃいけない、と」
「はいっ!
よろしくお願いします!主様!
みう、と呼んでください」
先程まで泣いて真っ赤だった目や頬は、すっかり落ち着いて。
妙にキラキラした表情で俺を見ている。
この状況で「嫌だ」と言えるやつなんかいないと思う。
「う、うん・・・・」
俺のあいまいな返事にも、ぱあっ顔が明るくなる。
「良かったです・・・・・
みう、このまま主様に出会えなかったら、天使になれないところでした・・・・」
「え?天使になれない?
なれなかったら、どうなるの・・・・・?」
「天使には大事なお役目があるんです。
主を見つけられない見習い天使は、羽をもがれて、天使の資格をはく奪されると聞いています・・・・・」
ぽろぽろ、とまたみうの目から涙がこぼれる。
「らから・・・・主しゃまがお返事くらさって・・・・・みうは・・・・・」
「あー・・・・あー・・・・
わかった、わかったよ!
うん、俺は主だから、大丈夫だから!」
子供みたいなみうに、こう何度も泣かれちゃ困る。
心が痛むのだ。
今はこの子を落ち着かせるための言葉を言うしかない。
「さ、今日はもう遅いし、寝ようか。
と言っても・・・・・
その羽じゃ寝られないか・・・・」
「大丈夫です!
天界ではいつもこうして寝てますので!」
そういって、まるで小鳥のように羽に身をうずめて小さくなった。
「おやすみなさい・・・・主様・・・・・」
そう、言ったか言わずかのうちに、すーすーという小さな寝息が聞こえてきた。
「はぁ・・・・・俺も寝るか」
なんか・・・・つかれた。
明日からどうしよう。
人を幸せにする、ってそんなぼんやりしたこと、どうやればいいんだよ?
でも・・・・・
俺が断ってしまったら、みうがどうなるかわからない。
また、この子を泣かせるわけにはいかない。
それだけは・・・・・強く思った。
みうを、あの子みたいにだけは、絶対にしたくないから。