2.俺とエンジェル・マッチ(2)
家に帰って風呂に入り、スマホを開く。
明日は仕事が休みだが、友達は皆それぞれに予定があるらしい。
予定がないのは俺だけ・・・・・か。
はぁ、とため息をついてスマホを見る。
待ち受け画面に、タクに入れられたアプリのアイコンが見えた。
「マッチングアプリかぁ・・・・・」
時間はたっぷりある。
とりあえずアイコンを押してみた。
【 ようこそ! エンジェル・マッチへ! 】
【 まずは、あなたの情報を教えて下さい 】
何なに、ニックネーム、年齢、性別、身長、居住地、職業、休みの日、喫煙しているか、年収・・・・
はぁ、なるほどねぇ・・・・
【 ニックネーム : ヨージ
年 齢 : 29歳
性 別 : 男
身 長 : 172㎝(実は3㎝盛っている)
居住地 : 東京
職 業 : 居酒屋店員
休みの日 : 映画鑑賞、ネットサーフィン、読書
喫 煙 : してない
年 収 : ○○○万円 】
なんか・・・・我ながら、まったく魅力のないプロフィールだ。
すでに挫折感満載だ。
写真を載せるところもあるけど・・・・それはやめておいた。
それらを入力して更に進むと・・・・・
【 好きなものカード 】
なる項目が出てきた。
自分の好みのものを選んで入力すると、それを選んでいる子とマッチングするらしい。
へー、何々・・・・・
【野球】【サッカー】【格闘技】【バスケ】【スポーツ観戦】など
・・・・ここら辺には用がなさそうだ。
【アウトドア】【旅行】【カメラ】【登山】【料理】など
・・・・・ここも違うな。
けど俺、料理だけは割と好きなんだよな。
【漫画】【映画】【小説】【音楽】など
・・・・・ここら辺かな。
あとは
【犬】【猫】【鳥類】【うさぎ等の哺乳類】【爬虫類】など
俺は好きなものカードから
【料理】【漫画】【映画】【小説】【音楽】【鳥類】
を選んで登録する。
インドア感満載だけど、下手なことを書いてボロが出るよりましだ。
スマホをスワイプして、好きなものカードを最後まで眺めていくと・・・・
【天使】
という項目がある。
【天使】?なんだそりゃ。
あれかな、ラノベとかそういうの?
ファンタジー系とか?
そういや、俺の好きなラノベのヒロインは、実は天使でした!っていう設定だったな。
あと小さい頃飼っていた影響もあってか、小鳥など羽のある生き物も可愛いと思う。
・・・・・なんかよくわからないけど、いいや。
【天使】を好きなものカードに登録する。
天使みたいな女の子と出会えたらいいのにな、という邪な考えが一瞬浮かんだがすぐにかき消えた。
そんなこと、あるわけないし。
あとは一言か・・・・・
えーと
「ヨージといいます。
料理と小説が好きなので、同じ趣味の人いたらお話しましょう」
こんなありきたりな言葉で、女の子なんか見つかるわけないよな、と内心思う。
登録を終えると、マッチングした相手のプロフィールが見られて、アプリ上でメッセージのやりとりが可能になるらしい。
どうせすぐにマッチングなんかしないだろ。
単なる暇つぶし・・・・だし!!!
もし本当にご縁があったなら、俺も誰かいい子に出会えるのかな。
1人もマッチングしないとか、ないよな?
顔出ししてないし、プロフもパッとしないけど・・・・・
つかこの歳まで童○だし・・・・・
やっぱ俺ってヤバい!?
「あー・・・・やっぱ彼女ほしーわ・・・・」
自分の耳にしか届かない虚しい呟きが、部屋の静寂にかき消されていった。
「寝よ」
スマホを充電器につないで、そのまま寝た。