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エピローグ後半

『お母さん、お誕生日おめでとう!!』


 リビングで家族みんなに祝福されてから、なずなはわざわざ一六本しか立ててないケーキのロウソクを吹き消す。

 みんなに拍手され「ありがとう」と笑うなずな、すると、急に立ち上がり、


「はーい、ここで、みんなに重大発表があるよぉー」


 何事かと全員が注目すると、なずなは言った。


「実はね、あゆちゃんはみんなの本当の弟じゃないの」

『はぁッ!!?』


 トンデモない事を口走ったなずなは止まらず。


「えっとね、みんな代理出産って知ってるでしょ? 実はあゆちゃんはね、ママが従姉妹の女の子の子供を産んだ子なの、本当はその従姉妹に渡さなきゃ駄目なんだけど、なんかデキないと思ってたらママがあゆちゃんを妊娠している間に向こうにも子供がデキちゃって、それでママがもらえる事になったのね」


「あの、ちょ、母さん急に何を……」


 歩人を無視して、なずなは続ける。


「それでね、戸籍上はみんなの弟だし、実際今までそうやって暮らしてきたんだけど、遺伝子的にはみんなの又従兄弟(またいとこ)になるの、だからね……」


 なずなは最上級の笑みで娘達に教えてあげた。


「法律的にみんな、あゆちゃんと結婚して赤ちゃん作ってもいいんだよ」

「母さん!!!」


 歩人が立ち上がりなずなに掴みかかって眼を血走らせる。


「一体急に何言ってんだよ、ほらさ、今日は母さんの誕生日だし、そんな事は置いといてみんなで早く料理食べようぜ」


 だが、それには答えず、なずなの(とろ)けた視線は歩人の背後に向けられていた。


 背後から漂う邪悪なオーラに歩人の背筋が凍る。


 あずきが「血の繋がった弟……」

 麻香麻が「だけど結婚オーケー……」

 眞由美が「子作り承認……」

 蓮華が「法的にヤリたい放題……」


 歩人がギリギリという擬態の似合う動きで振り向くと、そこには血も涙も無いこの世の地獄が映っていた。


 今まで感じた全ての悪が掻き消えそうな邪悪を全身に(まと)いリビングを魔界に変え、四人の姉達は一度かがんでから、砲弾のように大きく跳び出した。


「あーちゃーん!」

「あゆ君!」

「あーくーん!」

「歩人ー!」


 気がつけば、なずなに羽交い絞めにされ、身動き一つ取れなかった。

接近する四人の姉の全てを歩人は受け止めてしまい、その刹那になずなはサイドステップで回避する。


 姉達の黄色い声と柔らかい体に揉みくちゃにされて歩人は両手両足をそれぞれの姉に引っ張られ、激痛が総身を襲う。


「ボクのー、ボクのー、あーちゃんボクのー!」

「違いますー! あゆ君のわたしのです! あゆ君はわたしのドキドキなんですー!」

「あーくんじゃなきゃやだー! 他の男の人なんて嫌! あーくんがいいのー!」

「歩人以外の男なんてキモいんだよ! あたしは歩人の子供が産みたいんだッー!」


 そこに、涙目でオロオロする桜が近づいてきて、歩人は助けを求める。


「さく姉助けてくれ! このままじゃ俺千切れちまうよ……」


 なのに桜は歩人の言葉の一切を無視し、涙交じりに、


「あ、あたしよりもお姉ちゃん達のほうが歩人くんを幸せにできるだろうし、他のモノならなんでも譲るけど、けど……」


 言いながら桜が歩人の頭に抱きついて力の限り引き寄せようとする。


「歩人くんだけは譲れないよーー!!!」

「ぎゃああああああああああああ!!!」

「あらあら、若いっていいね、燃える展開だねシンちゃん」

「おのれ歩人! 自分だけ娘達にチヤホヤされて調子に乗るなよ!」


 もう両親の声すら遠く聞こえる。

 激痛と、肉感と、悲鳴に似た主張に攻撃されながら五体の間接がはずれ、歩人は断末魔の叫び声を上げた。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 人気があったら本格投稿したいです。


 本作を気に入ってくれた人には、学園ラブコメで姉ヒロインも出るMF文庫J発売の【俺たちは空気が読めない】もオススメです。


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