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五女 泣き黒子(ほくろ)×地味×自虐的 桜

 日曜日、朝……


「…………………………」


 南城桜は目を覚ますと、仰向けの姿勢のままピクリとも動かなかった。


「………………………………」


 焦点の合っていない目はただ黙って白い天井に向けられている。


「……………………………………」


 桜は一人、回想した。

 病院の前で起こった大事故。

 姉達は皆必死に救助活動をしていた。

 弟の歩人もそれは同じだった。

 その時自分は何をしていたか……

 否、何もしていない……

 そうだ、あの時、自分は震えていた。

 病院の中から窓越しに、あの惨状を、歩人達の行動を見ながら、ただ震えていただけだ。

 空しかった。

 辛かった。

 何度も悔いた。

 なのに責める家族は誰もいない。

 どうせなら思い切り責めてくれればよかった。


 なのに全てが終わった後、歩人は震える自分を抱きしめ「もう恐くないよ」と囁いた。


 続けて、自分のために蓮華と協力して不良と戦った。

 眞由美の元へと走った。

 麻香麻を自転車に乗せて走った。

 あずきを守るために鉄筋を支えたそれぞれの歩人の姿が思い起こされた。


「……………………………………………」


 ようやく首を横に倒して、反対側の壁に沿って置かれたベッドを見る。

 そこに歩人の姿は無く、ベッドはもぬけのからだった。




「イー――ヤッホッーー!!」


 冬東市(とうとうし)を激走する二つの影のうちの一つが叫んだ。

 一人は蓮華で、一人は歩人である。

 二人は足にインラインスケートを履き、だがヘルメットもヒザ当てもつけなければヒジ当てもつけてはいない。


 っで、ありながら民家の天井やら(へい)の上を滑り、跳ぶたびに縦や横に回転したり片足で着地したり、数秒だけバック走したりと、何かしらのトリックをキメている。


「あんまりハシャイで怪我すんなよ」


 と、姉とを(いさ)める歩人は片足バック走である。


「ハハハ、あたしにそんな心配がいると思うのか?」


 言って、民家の屋根から屋根へ移る間に、空中で三回転する。


 二人はそのまま、市のゲームセンターへ直行すると普通の靴に履き替えてとある機械へ向かった。


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