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蓮華との夜


 いくら歩人と蓮華が慰めたとはいえ、さすがに汚れを知らない桜から今夜の恐怖は消え切らず、桜は母のなずなと一緒に寝る事になった。


 そのため、現在歩人は一人だけの部屋で横になっていた。


 部屋のドアが開いたのは、歩人が蓮華の巻いてくれた腕の包帯を額に当てながら眠りに落ちようとする直前だった。


 廊下からの逆光で形作られる、歩人よりもずっと背の高いシルエットは南城蓮華のモノである。


 蓮華がドアを閉めて歩人のベッドに近づくとしゃがみ込み、顔を近づけた。


「痛かったろ……ごめんな、歩人…………」


 不良を倒した時の強さも、桜を慰めた時の明るさも、今の蓮華は持ってはいなかった。

 おもいつめた顔で哀しげに視線を落とし、慈しむように歩人の頬に触れる。


「あたしが遅れたから……あたしは姉さん失格だよ……」


 その言葉を置き土産に蓮華は立ち上がり、歩人に背を向けた。


「待てよ」


 再び振り向いた蓮華の眼は僅かに潤んでいた。

 上体を起こして自分を見つめる歩人に、蓮華は申し訳なさそうに視線をそらすが、


「今日は一緒に寝ないのか?」


 歩人の問いかけに蓮華はハッとして視線を正してからまた背ける。


「あたしは……」


 だが歩人はわざとらしい声で、


「あーあ、今日はさく姉がいないから一人で寝るの寂しいなあ」



 と言って掛け布団をめくった。


「蓮姉、蓮姉は俺の姉さんだろ、弟が寂しがってたらどうするんだ?」

 歩人の言葉が蓮華の体のすみずみまで行き渡り、心が元気になる。

 そして元気になり過ぎた蓮華が弾ける様な笑顔と動きでベッドに飛び込むと布団の中に潜り込んで歩人を抱きしめた。


「歩人ー」

「ちょっ、蓮姉……んむっ……」


 蓮華の口が歩人の口を塞ぎ、口腔(なか)で舌を絡めてくる。

 歩人は頭が熱くなり、思わず抵抗するのを忘れてしまった。

 やがて二人の口が離れ、透明な糸が自重でプツッと切れる。


「ふふ、ふふふ、歩人、歩人、歩人」


 子供のような笑顔で嬉しそうに身を震わせ、蓮華は歩人の顔を自慢の谷間に収める。

「大好き!」


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