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短編大作選

今日のデ一トどうだった?

「今日のデート、どうだった?」

「普通だった」

 友達は、今日が初デ一卜だったのだが、どうやら順調にいったみたいだ。

 普通ということは、何も起きなかったということだ。


「でもさ、悪いことは起きなかったにしてもさなハッピ一くらいはあるでしょ?」

「普通は普通でしょ」

 友達は、よく普通という言葉を使う。でも、大体は少し劇的。劇的へと、つま先を踏み入れたくらいだ。

 普通の解釈は、人それぞれだ。私からすると、少しだけ非凡に見える。

 どうだったか聞いて、普通と答えた。そうなると、手も繋がず、友達感覚で時が過ぎていった、ということだろう。


「手も繋いでないってこと?」

「繋いでないよ。直前に、両手を突き指しちゃったから」

「そうなの? それは稀だよ稀」

「そうかな?」

「大丈夫なの?」

「うん。もう治ったから」

「何したの?」

「弟と公園でバスケしてて、突き指したんだよ」


「そっか。じゃあ他には? 抱き合ったりはした?」

「彼がね、肩やっちゃってるのよ」

「卓球部だよね?」

「うん。最近、スマッシュで、両肩グキッて」

「そうか。じゃあ、楽しめなかったか」

「だから、普通だって」

「ケガを含めて普通だってこと?」

「そうだって」


「体調面でマイナスなんだから、何か良いことがないと、普通にはならないでし

よ?」

「私、ずっと体調不良を生きてるから。体調不良が馴染んで、普通になったから、普通なの」

「全然、知らなかったんだけど」

「普段、体調不良だって言ったことないでしょ? それは、ずっと体調不良だからだよ」

「普通化した体調不良、だったんだね」

「うん」

「もうないよね? 普通じゃないこと」

「本当にないよ」


「ケガ的なものは?」

「見て分かるでしょ? 突き指は、もう慣れて、痛みに強いから大丈夫だし。特にないかな」

「そっか」

「ああ、ケガはしてないけど、車に轢かれたかな」

「轢かれてるじゃん」

「轢かれたと言っても、ガッツリと一瞬だけだから」

「ガッツリって何?」

「ドーンで、バーンして、飛ばされたの。でも地面直前で、衝撃吸収体勢に入ったからね。不幸直後が、とてつもなく強いんだ」


「ヤバイこと、かなり起こってんじゃん。よく今日のデートを、普通って言えたね」

「だから、何が普通で、何が普通じゃないか。感覚が麻痺してるんだよね」

「感覚がずれてるよ。私、週一で車に轢かれてるんだよね、って訳ではないだろうし」

「ごめん。期待に添えなくて」

「全然、期待してないから」

「ごめん。多いときは、週二でいっちゃうかな」

「焼き肉かっ!」

「違うけど」

「それでもさ、直接ぶつかったんだ

から、そうとう衝撃あったでしょ?」

「意外と胴体への衝突系は、強いからね」

「そうなんだね」


「あとは、川に落ちたかな」

「それは普通か?」

「濡れただけだよ。普段から、かなり頻繁に濡れるから」

「そっか」

「あとは、告白されて付き合ったよ」

「付き合ったんかい。今、パニックになってる。少し待って」

「その日中に、別れたけど」

「待ってって言ったのに。えっ?別れた?」

「そうだよ」

「とてつもない激動の一日じゃない? なんで普通なのよ?」

「付き合って、別れたから、相殺されるでしょ?」

「相殺? そうかそうか」

「だから普通なんだよ」

「はいはいはいはい。はい?」

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