勇者パーティーのおかあさん
思いつきで書きました。
だって、ブクマしてる作品が更新されるのを待ってる間。すごくヒマだったんだもんっ(/ω\)
冒険者ギルドに併設された酒場の一席に、くたびれたオッサンの様な雰囲気を漂わせる少年——の様な姿をした。御歳38歳の立派なオッサンが、それぞれタイプの違う三人の美少女と共にテーブルを囲って座っていた。
彼の名は岡浅 広臣——独身。
勇者パーティーと呼び声の高い、新進気鋭の冒険者パーティー『【祝】魔王討つべし【討伐!】』の荷物持ちのオッサンだ。
ちなみに、パーティー名が示すとおり。魔王はすでに討伐済みである。
そんな勇者パーティーの荷物持ちである広臣が、どっかの司令の様なポーズをとりながら三人に話しかける。
「すまんが、俺がお前達と一緒にダンジョンに潜るのは今日で最後だ。俺は——このパーティーから抜ける」
「はぁ⁉︎何でだよっ⁉︎」
「何故そんな事を言うんですか?意味がわかりません」
「ん、絶対に認めない。我らは断固拒否する」
バンっ!と、テーブルに両手を叩きつけ。三人の美少女たちは立ち上がると、パーティーを脱退すると言う広臣に抗議しはじめた。
「実力差を考えろよ。一緒に行ってもすぐ死ぬわ」
「大丈夫です、死んでもすぐに蘇生します」
実力差を理由にパーティーから脱退すると言う広臣。
そんな広臣に、おっぱいのとても大きなお嬢様然とした少女。勇者パーティーの回復役で、職業【大神官】の聖女 音音が、にっこりと天使のように微笑んで、悪魔よりも悪魔のような事を告げる。
死ねば退職はできた日本のブラックな企業よりもブラックな仲間に、広臣は泣きたくなった。
「それに、俺ももう38歳の立派なオッサンだ。お前らのような若者みたいな元気はもうねぇんだよ」
「問題ない、肉体なら若返らせた」
老いを理由にパーティーから脱退すると言う広臣。
そんな広臣に、闇っけの強いゴスロリ眼帯少女。パーティーの後衛で、職業【大魔導師】の黒間 法子が、ドヤ顔で親指を立て、問題ならすでに取り除いていると告げる。
今朝起きたら少年になっていたのは、やはりコイツの仕業だったか…と、広臣は頭を抱えた。
どうやら昨日の夕食に、一服盛られていたようだ。
ちなみに、広臣の肉体は法子によって定期的に魔改造されている。朝起きたら、左腕にサ○コガンが仕込まれていた事もあった。ズギューンッ‼︎という音で目が覚めた。
「はぁ…。別に俺がいなくても、お前らが困ることなんてねぇだろ」
「困らないわけないだろっ‼︎」
そう言って、広臣をキッ!と睨みつける。アホの子系オレっ娘ロリ少女。勇者パーティーの前衛で職業【聖騎士】の伊勢貝 勇菜。
勇菜の言葉に、広臣は後ろめたい気持ちになった。
これ以上は無理‼︎という気持ちは変わらないが、さすがにいい歳したオッサンが、いきなり辞めるなど無責任すぎたかと——
「誰がオレたちのメシ作るんだよ‼︎オレたち三人、料理なんてまったく出来ないんだぞっ‼︎」
優菜の言葉に、音音と法子がウンウンと頷く。
広臣の後ろめたい気持はふっ飛んだ。
「わかった…。なら、メシは作って持たせてやる。お前らのマジックバックにしまっておけば出来立ての状態で持ち運べるだろ。それなら俺が抜けても困らねぇよな?」
正直面倒ではあるが、それでパーティーを脱退出来るなら安いもんだと、広臣は思った。
これを機に荷物持ちも引退して、弁当屋を始めるのもアリかもしれない、とボンヤリと考え。意外に悪くないのでは?と思いはじめる広臣。
だがしかし、未来に思いを馳せるそんな広臣に、NOと言う者達がいた。
「はぁ?困るに決まってんだろ」
「えぇ、絶対に困ります」
「ん、必ず困ると書いて〝必困〟。我らが困った事になるのは逃れられない運命」
勇菜、音音、法子の三人である。
「何でだよ…?」
「絶対、途中で足らなくなるし」
無理無理と、首を振る勇菜。
なるほど、食糧の量に心配があるようだ。
「いや、もちろん余裕を持ってわたすつもりだぞ?」
「無理です、絶対に足りなくなります」
無理です無理ですと、首を振る音音。
3日分ほど余裕を持たせるぞ。と伝えるが、それでも無理ですと首を振る音音。
「いや、なんねぇだろっ‼︎」
「無理、絶対足らなくなる。我らは暴食の罪を背負いし罪人——有れば有るだけ食べちゃうから。絶対、途中で食糧が尽きて餓えるから」
故に無理っ‼︎
キメ顔で断言する法子。
ウンウンと頷く勇菜と音音。
「「「だから一緒に来てご飯作って——〝おかあさん〟」」」
「誰がおかあさんだっ‼︎」
お前らは実家暮らしの娘さんかっ‼︎
結局、三人が料理を覚える迄と、パーティーを脱退する事が出来なかった広臣。
何度も死んで、何度も蘇生された。
朝起きたら魔改造されていて、足が無限軌道に変形出来るようにもなっていた。
そんな、魔王討伐の旅路よりも過酷な日々を乗り越え。やっと一品、広臣が三人に仕込むことができた料理。
その名は——〝スクランブルエッグ〟