第19話「ライバル」
杉並は珍しく俺に話しかけた。
「いいよ。」
「笑は努力を惜しまない天才なの。恵だっけ?あの子も多分笑と同類よね。」
「まぁ、そうだろうな。不意打ちとは言え、初見で七海先生を倒してるわけだし。」
「予想だけど、初めてライバルが現れたんだと思う。今まで笑と同格っていなかったから。」
杉並の言っていることは実際そうだと思う。
自分が頂点にいる場所に、才能も人気も比例する存在が突然現れたんだから。
笑にとっては初めてライバルと呼べる存在だ。
「だからまだ使いこなせていない技を使おうとしたのか。」
それ自体は間違っているけど、気持ちは痛いほど分かる。俺も少しでもみんなに追いつきたいから。
「要は何が言いたいかって言うと、さっきも言ったように今回の勝負はあんたらに譲るってこと。だから二人とも来なさい、私たちと同じところにね。」
「ん・・?同じところ・・・?」
「分かるでしょ、私達に勝ったあんたらはAクラスに来る権利を手に入れたの。二人にとっても悪い話じゃないと思うけど。」
まさか・・俺がAクラスに?
こんな嬉しいことはない。
憧れても手が届かなかった場所・・でも・・・。
「杉並の誘いはすごい嬉しい。でも、俺はDクラスのリーダーなんだ。抜けることは出来ない。」
俺がそう言うと杉並はため息を吐いた。
「正直あんたはどっちでもいいわよ。責任取りたいなら自分のクラスに一生残ればいい。でもボム女はどうする気?少し見ただけでも、あんたいないとAクラスに来ないって分かる。判断は委ねるけど、きちんとフォローしてやりなさいよ。」
杉並の言うことはもっともだ。
あいつは俺と同じ場所で終わっていい人間じゃない。
「あと、もっとクラスを信用したら?あんた一人いないくらいどうってことないわよ。みんな目標は一緒なんだから。」
そうだよな・・俺なんかいなくてもあいつらは強い。勝手に責任感じて格好悪いな、俺。
「分かったよ、恵と一緒にAクラスに行く。」