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やればできる子

小屋で剣と斧と袋を持って出ると、なにかにぶつかった。


「ん?」


「いてて…」


「大丈夫か?」


倒れた子の頭にはピョコンとしたうさ耳があった。


「あぅ、だいじょぶれす」


「そうか、私はここの村長だ。よろしくな、ラビ」


「あぃ、よろしくれす」


ラビの頭を撫でて脇に手をいれて持ち上げ、足が地面につくと下ろした。


「ラビも一緒にくるか?」


「どこいくれす?」


「まだ会ってない忠臣がいるからね」


「あっちにアルさんがいったれす」


ラビが指差した方は来た道とは反対側に位置する場所だ。恐らく海があるのだろう。


「そうか、じゃあ一緒にいこう」


ラビには小さなスコップと袋を持たせた。気になるものを拾うように指示しておいた。


海にいくには森を通る必要があるのだが、果たして安全なのだろうか。ラビは楽しそうに地面に転がる石を拾っていた。恐らく使い道はないだろうが、奇跡的に使えるかもしれない。


「あんらぁ?村長さんじゃない?」


森に入ると木を伐っている蜥蜴人族がいた。


「そうだが、お前は?」


「私は誇り高き蜥蜴人族のフリードよぉ~。よろしくねん」


「あぁ、よろしくな」


男ばかりかと思っていたが、オネェもいたのか。こいつにとっては楽園かもな。


「あら?ラビちゃんじゃない?」


「ふりどー」


ラビはフリードにひしっと抱きついた


「あらあら」


「ラビのこと任せたぞ。私はアルベルトのところに行ってくる」


「任されたわ」


ラビをフリードに預けて森を剣でかき分けながら進んでいくと潮風がふいてきた。冷たい風を感じながら進んでいくと砂浜に出た。


ぽつぽつと足跡が残されていたので、それを辿っていくと岩礁にたどり着いた。岩場を手を地面につきながら登っていくと一人の魚人が立っていた。


「ぬ?お主はもしや村長殿か?」


「あぁ、そうだ」


「これからよろしく頼むぞ。わしはアルベルトと申す」


アルベルトは私の手を引いて岩場の頂上まで連れてきてくれた。


「あそこの島に見えるのがわしの相棒のアリスじゃ」


どうやら鯨もメスだったらしい。


「アリスはなにしに行ってるんだ?」


「ちょっと漁にいってもらっておる」


「漁?」


「食料が未だ不安じゃからな。ライゼル殿とセラフィム殿に手伝ってもらってな」


確かに食料については不安だ。たくさんあっても困らない。


「そうか、一先ずは三人に魚をとってもらおう」


「ふむ、任された。村長殿には村をどのように発展させるか頼む」


アルベルトと別れ、村に戻った。村には全員出払ったため、誰もいなかった。


村の現状は武器小屋、井戸、10人が住める屋敷、倉庫だ。


武器小屋はすでに物色されたため、種類別に分けられ、なんなら名前すら書かれて私物化されていた。


井戸には小屋から物色されて置かれたであろうバケツと縄が置いてあった。


「仕事がはやいな」


村長の仕事としてまず区画整備を始める。欲しいのは海に向かう道と井戸に向かう道、それから畑を作る場所の確保だ。


農作物をつくるなら潮風をある程度防がないと育ちが悪くなる。塩害は恐ろしいからな。


ざっとスコップで道を作る場所に目印をつくり、簡易的な柵を作る位置を選定する。


少しだけ森から離れた位置の方が好ましい。木の近くだと敵が姿を現してからすぐに柵を飛び越えられてしまう。


線引きを終えると掲示板を見てみる。掲示板は屋敷の入り口すぐにあり、プレイヤーと忠臣では使い方が変わってくる。


忠臣はここに欲しいものを書いたり、他の住民に依頼を載せたり、情報を仕入れたりする。


掲示板に触れると幾つかのスレッドがあった。タイトルには『無職の扱いが思ったより辛い』『村人のキャラが濃すぎる』『駆け出し商人がスラムのガキと同じ扱いなんだが』『武器を体力が尽きるまで振り続けたらスキルが生えた』があった。


村人のキャラが濃いのはどこも同じか。有用な情報だったのはスキルの件だな。今のところ忠臣達のスキルはとっていない。


勝手に仕事をし始めてるところを見るといつの間にかスキルをとってそうな気がする。


ギィィーと扉が開く音がすると後ろからラビの声がした。


「そんちょー」


ぱふっ


「ん?ラビか。おかえり」


ラビは腰に抱きつくとにぱっと笑った。


「たらいま」


ラビの後ろから着いてきたのは大量のなにかが詰まった袋を持ったフリードだった。


「私も抱きついてもいいかしら?」


「だめだ。私が突き飛ばされる」


「そうよねぇ」


フリードは少しだけ残念そうにしながら頬に手を当てた。


「収穫はあったか?」


「ええ、収穫時のベリーがあったわ。それとこれはラビちゃんが一生懸命集めた石よ。私が見る限りなかなかいいものもあったわよ」


「それはどれだ?」


「これよ」


フリードが取り出した石は石というより結晶だった。


「これは…綺麗だな」


「ええ、これは装飾にも使われるほどのものだわ。天然でこのサイズはなかなかお目にかかれないわ」


「ほぅ。フリードは好物に詳しいのか?」


「えぇ、これでも鍛冶士をやっていたもの。鉱物には詳しい方よ」


「そうか。今の道具でなにか装飾品は作れるか?」


「今の状況では無理ね。せめて鉄級の素材がないと無理だわ」


「そうか。これは飾っておくか」


「それがいいわね。ラビちゃんも誇らしげよ」


「すごいな、ラビ」


「えっへん」


ラビは耳をピクピクさせながらどや顔をしていた。


「昼も近いしそろそろ昼飯といきたいが、今村に何人いるかわかるか?」


「そうねぇ、さっきバルトとサイスは見たわね。1つの種を眺めてにやにやしてたわ」


「アルさんはそろそろ帰ってくるれす」


「そうか、ありがとな」


ラビの成果を食堂の机に並べながら待っていると一匹の犬が入ってきた。


「そんちょー、ヘルプなのです」


四足歩行だったから「わんわん」鳴くのかと思ったら普通に話してきた。


「ん?どうした?」


「アルさんとアリスでぐわーってとったらぶわーってなったのです」


「うん?」


「ぶわってしてるです」


「うん?まぁ、とりあえず行ってみよう」


この犬はどうやら擬音で説明してくる系わんこだった。

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