ぬすっと物語5 ぐぅ〜
おいらは再び壁の近くまで行き、しばらくゴーレムアイを使って外の様子を確認した。
人の数は増える一方だ。そしてお金もどんどんと投げられている。
耳も壁にぴたっと当てて聞いてみる。
どうやら何かをお願い事をしている人が多いみたいだ。
なんだろう?
お金を投げるのは、お願い事を叶えるための対価なのか?
お金は大事。
その大事な物を投げるのだから、きっと何か特別な意味があるはずだ。
多分。
ぐぅ〜。
!!?
何の音だ!?
おいらはきょろきょろと周りを見る。
何もない。
辺りを警戒しつつ、おいらは壁からゆっくりと離れる。
何歩か離れたところで、バッと横に転がる。
うつぶせになった状態で、おいらは周囲を警戒した。
やはり、周りは特に変わった様子はない。
空耳か?
おいらは、ほふく前進で警戒しつつ部屋の中を確認する。
ぐぅ〜。
!!?
また聞こえた!
おいらはゴロゴロと転がり壁際に避難する。
おいらはきょろきょろと周りを見回してみたが何もない。
ぐぅ〜。
?
んん?
音はおいらのおなかから聞こえた。
おいらのおなかが鳴った?
おいらは床に座りお腹を見る。
おなかの袋の中に手を入れてみるもノートとペンしかない。
おなかの袋の中を覗き込んでも何も見えない。
なぜお腹が鳴る?
ぐぅ〜。
また鳴った。
なんだろう、何かを食べたい。
!!?
わかった!
おいらは何かを食べたい!
これがおなかが減ったということなんだ。
たまに流れ込んできていたおいしい物を食べたいという思いが、おいらにもようやくわかった!
おいらは部屋の中を見回したが、食べ物は何もない。
これはどうしたらいい?
食べ物はどこにあるのだろう。
食べ物は良い匂いがするらしいから、良い匂いがする方へ行けばいいと思う。
おいらは鼻をすんすんとならし、匂いを嗅ぐが匂いはしない。
おいらはドアをぐっと睨む。
あのドアを開けて外に出るしかないのではなかろうか。
しかし、外からはちゃりんちゃりんと音が聞こえる。
この周囲には人が多い。
……今出るのはまずい。人が多いのは危険だ。
人は卵を食べるらしい。
今晩のおかずがたまご焼きだと思っていた人もいた。
そして、人は卵から生まれた者を育てて食べる事もあるらしい。
おいらは聖なる獣らしいから、すぐに食べられることはないと思う。
けれど、食べられないという確信もない。
用心するにこしたことはない。
おいらはドアに近づいて、周りから人がいなくなるのをじっと待った。
ぐぅ〜というお腹の音を聞きながら、人がいなくなるのを待った。
ぐぅ〜。
お腹空いた。