ぬすっと物語1 暗闇の中で
おいらは、ずっとずっとまどろんでいた。
暗い闇の中でまどろんでいた。
時折、暗闇の中に光がきらめく。
あったかい光。人々を思う心。
よどんだ光。お金を欲する記憶。
弱々しい光。病を厭う思い。
強烈な光。出世への執着。
おいらの身体の中に光と一緒に、なにかの思いや記憶も入ってくる。
光が消えた。
おいらは、また、まどろみの中に沈んでいく。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
突然、暗闇が消えた。
おいらは光に包まれた。
光がどんどんおいらの身体の中に入ってくる。
けれど、今までと違って周りの光は消えない。
それどころか、どんどんと光が強くなる。
おいらが光を吸収する。
すると光と一緒に強い思いも入ってくる。
パンダ?
ぱんだ?
くま、くまと鳴いているけど、パンダ?
おいらが疑問に思うよりも早くどんどんと光があふれてくる。
ゴーレムアイ?
全てを見通す目?
価値を見抜く目?
遠くまでばっちり見える?
レーザー?
レーザー? を出す目。
光がどんどんと身体の中に吸収されていく。
姿を見られると驚かれる?
姿隠しがあれば大丈夫?
お金は大事?
ブラシか布が欲しい?
ピカピカに磨きたい?
ポーチになんでも入る?
うぬぬぅー。
おいらの身体がぴかぴかしてきた。
銀色? 銀色に変わっている。
光が、銀色に?
ん? 周りも全部銀色になってきている。
おいらの周りには、今まで何もなかったのに。
突然、銀色の低いテーブル? ちゃぶ台も出来ている。
なんだ、なんかどんどんと物が出来ていくぞ。
ちょ、物が一杯で狭くなってくる。
ストップ、ストップ。
おいらは焦って光を止める。
おっ、光が来ない。終わった。
ちょ、また来た。ストップ! ストップ!
おいらが必死にあふれる光に抵抗していると、ようやく光が止まった。
ふぅ、なんだ。いったい何があったんだ。
外の様子を見てみたいが、どうやって外に出ればいいのだろう。おや、いつのまにかドアが出来ている。
おいらはおそるおそるドアを開けてみた。
きぃと音が鳴った。
!!? やばい。
今度は、音が鳴らないようにゆっくりと開いていく。
ふぅ、何もいない。
なんだったのだろう。
おいらが気を抜いていたら、いきなり目の前に銀色の塊が現れた!
人じゃない。動物でもない。なんだ、こいつ!
目が合った! やばい。
おいらは、ゆっくりとドアを閉めていく。
ふぅ。危ない。
危なかった。ちょっとベッドで丸くなろう。
……。
…………。
周りが銀色にピカピカしてて眠れない。