⑨
「ふぃー」
バイトの休憩時間に、俺は机に突っ伏した。
なんだか、いつも以上に疲れてしまった。
絶対に、これはアイのせいだ。
気疲れしている。
「あれー、中村? 今、休憩?」
同級生兼バイト仲間の武田だった。
「うん」
「つれないな~。こんな美人女子大生に声をかけてもらえたのにさ」
ちなみに、性別は女性だ。
「なーに、疲れてるの? もしかして、彼女と遅くまでお楽しみでしたか?」
武田は、にやついていた。
「近からず、遠からず」
「なに、見え張ってるんだよ。中村のくせに、生意気だぞ」
「どこの金持ちだよ」
ちなみに俺のポケットには、ネコ型ロボットならぬ高性能美少女AIが眠っているわけだが……。
「やっぱり、ひとりぐらしだと、大変?」
「まー、ボチボチ」
「ふーん」
「武田は実家暮らしだっけ?」
「うん、恥ずかしながら。だから、ひとりぐらしの友だちがうらやましいのですよ」
「そんなにいいもんでもないけどな」
「贅沢な発言だ。こっちは、箱入り娘(笑)で、バイトするのも大変なのにさ」
「大事にされてて、いーじゃん」
「過干渉は、めんどくさいよ」
「そうだ! 中村! 今度、遊びにいくね」
「えっ? どこに?」
「あんたの家」
「ホワイ?」
「だから、遊びにだよ。ゲームとかして、ご飯食べよう」
「……」
「じゃあ、あとで連絡するから。佐藤さんと交代してきます~」
そう言って、武田は休憩室から出ていってしまった。
俺はひとり部屋に残される。
こんな展開、人生ではじめてだ。
「おかしい。俺の人生から、ラブコメの波動を感じる」
俺は再び机に突っ伏した。