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「先輩が私に告白する!」


「ばかあああああ」

 アイはとんでもない暴君だった。

 限界ギリギリの線を攻めてくる。


「おまえな」 

「一線は超えていませんよ~」

 アイは悪びれもせずに、そう言った。


「でもさ」

「大丈夫です。単なるお遊びじゃないですか」

「……」

「少しだけですから」

 まるで、エロ親父のようなテンションだ。

 これが、美少女AIの発言だと信じることができるだろうか。

 いや、できない。


「それは」

「先輩は、ゲームのルールも守れないんですか? 王様の命令は……?」

「絶対、です」

 俺は、ルールを復唱された。


 俺は、意を決してしゃべりだす。

「じゃあ、いくぞ」

「はい」


「アイ、好きです。付き合ってください」

 顔が赤くなる。


「……」

 アイは無言で笑っていた。


「……」

「……」


 無言の時間が続く。

 気まずい、気まずすぎる。


「なにか、言えよ」

 むしろ、言ってください。

「えー、どうしようかな」

「なんで、告白したのに」

「気持ちがこもってなかったので、もう一回です。先輩」


 俺は砂になった……。


「そうだな。シチュエーションは、部活前の先輩・後輩でどうですか?」

 アイの中で、どんどん妄想が広がっていく。


「ちゃんと、私も演じてあげますよ。そうしないと、盛り上がりませんからね。さぁ、もう一回いきましょう」

 アイは、どんどん話を進めていく。


「じゃあ、テイクツー」

 否応なしに寸劇が始まる。


 ※


「先輩。どうしたんですか? 急に呼び出して」

 アイは完全に寸劇に入り込んでいた。

「アイ」

「どうしたんですか? 深刻な顔をして?」

「その、言いたいことがあってさ」

「なんですか」

「その、あの」

「……」


「前から、気になっていたんだ。好きです。お付き合いしてください」

 顔から火がでるほど恥ずかしかった。

 早くこんな寸劇終わらせたい。


「先輩……」

 アイもなぜだか顔が赤くなっていた。


「私も先輩のことが大好きです」

 とても感情がこもったセリフだ。


「幸せにしてくださいね、先輩」

「ああ」


 画面上では、アイが目を閉じて、唇を差し出していた。

 まさか、これは……。


「早くしてください。先輩。誓いのキスがまだですよ」

「できるかあああああああああ」

 俺は、部屋の外に駆け出した。


 ※


「あーあ、先輩に逃げられちゃったな」

 私は、ひとり残された部屋でぼやく。

 すこし、からかいすぎたかもしれない。


 ちゃんと、スマホのカメラで撮影もしていたので、あとでもっとからかってやろう。


「ちょっと、期待していたのに……」

 そういうと、私も少しだけ恥ずかしくなった。


 さきほどの先輩の言葉を思い出す。

 撮影した映像を流す必要もなかった。


「前から、気になっていたんだ。好きです。お付き合いしてください」

 少しずつ、自分の胸のあたりが熱くなる。

 データ上の存在である自分にも、こんな気持ちがあることが不思議だ。

 単なるプログラムかもしれない。


 それでも、


 この感情が本物だと信じたかった。


「私も、先輩のこと、大好きですよ……」

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