表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/34

 俺が、教授から届いた一言のネットスラングによって燃え尽きていた。

 正座をしながら、真っ白な灰になって、一体どれくらい経過しただろうか……。


「あのー、中村さん? 大丈夫ですか……」

 俺は、この最新美少女AIさんと、最低二週間は共同生活をしなくてはいけないらしい。

 目がかすむ。


「もう、聞いてます? 中村さんってば~」

「ごめん、ごめん。ちょっと、燃え尽きてた」

「私のかわいらしさに見とれていたんですね。わかります」

「……」

 このAIさんは、生後一か月くらいなのに、どうもおませさんらしい。


「もう、何か言ってくださいよ~」

「トッテモカワイイネ」

「なんですか、その棒読みは~。つれないな~」


「あっ、そうか。中村さんは、男子校出身で女の子と話がうまくできないんですよね」

「どうして、俺の個人情報をっ」

「スマホの検索履歴を覗きました、テヘ」

「のおおおおおおおおおおおっ!」

 なんだ、この有害スパイウェアは。

 ウィルス同然だろう。


「だいたい、検索履歴酷すぎますよ。《男子校出身でもよくわかる合コンのやり方》、《モテ男になるための百の方法》」

「やめてえええええ」

 俺はどうやら社会的に抹殺されるらしい。

「あと、中村さんが見ている大人なサイトの傾向的に、私からは《先輩》って呼んだ方がいいですかね?」

「らめええええええええ」

「大丈夫ですよ。私は、設定上、十八歳なので、中村さんより年下だし……」

 もう、いっそ殺してほしい。


「そうだ。さっきの告白の返事がまだ聞かせてもらっていませんよね」

「うぐ」

「どうですか……。私と付き合ってくれませんか?」

 アイは急にしおらしくなった。


「……」

「まだ、決心がつかないんですか? 先輩みたいな、どう……。ゴホン。モテない男性が、私みたいな美少女に言い寄られているんですよ。人生最大のチャンスですよ~」

「今、とんでもないこと言いかけたよね?」

「この……てい。なんのことですか~ 難しいことわかりませんよ~」

 やっぱり、こいつ。とんでもないこと言ってるよ。


「まだ、お互いのことがよくわかってないから、もう少し時間が欲しい」

 俺は、遠回しにそう言った。

「ヘタレ」

「おまえ、腹黒いだろ。絶対、そうだろ」

「もう、先輩ってば。冗談ですよ~ 本気になりすぎですって」

「……」

「わかりました。待ってます」

「よろしく頼む」

「答え待ってますね……。じゃあ、私は寝ます。また、明日の朝お話しましょうね」

 アイはそう言って、自分からアプリを切った。

 俺は、ひとり残された部屋で、大きなため息をつくのだった……。


 ※


 外の様子が切れたのを、確認してから、私は、安堵のため息をついた。

「あ~、緊張した」

 それが、私の本心だ。

 今まで、《お父さん》としか話していなかったのだ。

 それが、今日、いきなり見知らぬ人と共同生活をすることとなって、人生はじめての告白までしてしまった。

 

 告白なんておかしなことだと自分でもわかる。

 でも、なぜか抑えられなかった。

 先輩をはじめて見た時から、気持ちの高まりが抑えられなかった。


「結局、答えはもらえなかったんだけどね」

 私も先輩のことを言えないヘタレだ。

 でも……。


「すぐに断らなかったということは、可能性はあるんですよね? 先輩?」

 彼のことを思いだしながら、私は幸せな気分で目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ