④
「私とお付き合いしてください」
アイの衝撃告白で、俺はフリーズした。
【朗報:俺氏、告白される。しかも、AIに……】
このスレは、燃える。色んな意味で……。
そうか、まだ起動したばかりで、日本語が不自由なんだな。
きっとそうだ。
たぶん、「不束者ですが、よろしくお願い致します」的な意味だな。
挨拶なんだ、そうに違いない。
「えっと、お付き合いって?」
俺は、聞きなおしてあげた。
「男女交際ですけど?」
AIさんは、シレっとそう言った。
「のおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」
AI半端ないって。
この人、日本語ペラペラだよ。
《男女交際》なんて、そんなんAIが言えへんやん、普通。
言えるなら、言っといてやー。
俺は、ひとりで脳内コントを繰り広げた。
「あの、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です」
「本当に?」
「はい、あれはペンです」
「完全にダメじゃないですか」
おわかりいただけただろうか?
このAIさんは、俺の淡い期待を簡単に打ち崩した。
「あの、どうして、俺なんですか?」
「一目惚れです」
あー、一目ぼれね。
知ってるよ、たしかギリシャ神話とかの世界の概念だよね。
さすが、最新AIさんは賢いな。
「俺に一目ぼれ!?」
そんな神話世界だけの概念のはずが……。
「はい、ゾッコンラブです」
彼女は自信満々にそう言った。
俺は眩暈をおぼえるのだった。
そして、この仕掛け人は……。
「教授めえええええええええええええ」
俺は、怒りの悲鳴をあげた。
教授の連絡先に電話をかけようとするも……。
「《お父さん》なら、夕方からアメリカに行ってますよ。たしか、国際学会で二週間は向こうです」
AIさんは、無情な言葉でその事実を俺に伝える。
「はかったな。あのマッドサイエンティストおおおおおおお」
これで、俺は完全に逃げ場を失った。
「というか、今、《お父さん》って言わなかったか?」
「はい、教授は私をつくった人なので、《お父さん》って言いなさいと言われました」
あの変態おやじは……。
「なので、中村さん。不束者ですが、末永くお世話になりますね。どうぞ、私のことは気軽に、アイって呼んでください!」
教授からメッセージが届いていた。
なんだ、ちゃんと気にしてくれてるのじゃないか。
あんまり、心配させないで欲しいものだ。
アプリを開くと、そこには一言だけ書かれていた。
「止まるんじゃねえぞ」
もう嫌だ、この親子……。